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この記事は、2023年1月19日時点の情報です。
あなたは「ナッツ」についてどういった印象をもっていますか? ヘルシー、美容に効果的、腹持ちがいいなど、その捉え方は人それぞれです。昨今では美容や健康への高い関心を背景に、おつまみだけでなく料理の食材としても身近になったナッツ。コンビニやスーパーでも手軽に手に入るようになりましたが、やはり専門店で取り扱うナッツは香りや美味しさが格段に違うのです。
中目黒に拠をかまえる「Groovy Nuts(グルーヴィナッツ)」は、産地を厳選して本格的なナッツだけを集めた日本初のナッツ専門店。2014年のオープン以来、素材の旨みを感じとれる美味しさと多彩なラインナップで、巷のナッツマニアを惹きつけてやみません。今回はそんなナッツ界のメインストリームを走り続け、様々な角度からナッツを楽しませてくれるお店を大解剖していきます。
Groovy Nuts(グルーヴィナッツ)のコンセプト
栄養バランスをサポートする「毎日一握りのナッツを」提案する Groovy Nuts(グルーヴィナッツ)。「とにかく木の実が面白い!」とナッツについて熱く語ってくださったのは、運営元である株式会社SIXTEENの代表・佐川一郎氏です。人間の体はナッツの栄養を程よく吸収できるそうで、その理由を「エビデンスは無いですが」と注釈を入れたうえで話してくれました。
佐川さん
遥か昔のご先祖様の時代からナッツは食べられていて、私たち現代人のカラダの環境がアジャストし終わっていることから、ナッツの栄養をいい塩梅に吸収できるようセットアップされているのかなと思うのです。
日本でも、1万年前の地層から炭化した栗や橋場実(ヘーゼルナッツ)が出土したり、肉とナッツをすりつぶして焼いた料理の跡が発見されていると言います。高カロリーであるが故にナッツの食べ過ぎは肥満の原因にもなるものの、適量(1日一握り程度)であれば身体に良い影響を与えるという研究結果もあります。
オープン当初は美容に気を配る女性が大多数を占めていた来店客も、現在では男性客が半数に迫る勢いでグルーヴィナッツに訪れていると言います。自宅用はもちろんのこと、人に贈っても見劣りしない逸品ギフトとして購入される方々も多いそうです。ちなみに、店舗スタッフは管理栄養士の資格保有者や健康マニアなど、健康に対して高い関心をもつ人が自然と集まるのだとか。
ブランド名に込められた “Groovy” な想い
グルーヴィナッツの店名には、思わず体が動きだすような音楽のノリやウネリを指し、音楽を生命あるもののように感じる「心地よさ」を表現する “Groovy” が使われています。ナッツに秘められた力強いパワー、そして、子供の頃から誰かに決められたことよりも思いついたことを優先して行動していたという、佐川氏のアグレッシブなスタンスが店名にも反映されているように感じます。
グルーヴィナッツが誕生したきっかけ
ナッツの成分や効能を事細かに説明してくれた佐川氏は、以前より生物学や植物学に通じていたのかと思いきや、開業前は映像プロデューサーとして活動していたそうです。まったくの畑違いから異例の転身を遂げた背景には、どういった経緯があったのでしょうか。
2013年に東京オリンピック招致の映像制作に携わっていたという佐川氏。一心不乱に突き進んだ結果として東京でのオリンピック開催が決まったものの、その瞬間に映像への情熱がバーンアウトしたと言います。オリンピック招致以上に胸を熱くする「祭り」のような仕事を模索するうちに、自分自身が舵を取りながらコンシューマーと直接顔を合わせる仕事に意識が向かいました。
オリンピックに携わったこともあって、将来的にスポーツやボランティア、ひいては日本人の食習慣までもが変化していくと感じていた佐川氏は、サプリメントやプロテインだけでなく、海藻やナッツのようなプリミティブ(根源的な)フードにもスポットライトが当たると風を読みました。
ナッツに対して強い思い入れがあったという訳ではなく、ナッツに対する将来的なニーズの高まりを感じ取り、仕入れのハードルさえ超えてしまえば新規参入できるはず、と成り行きまかせで始めたのが2014年だったと言います。「ナッツのことをほとんど知らない男でした。今思えばよく仕入れられたと感じますね」と佐川氏は笑顔で振り返ります。
ナッツ専門店の開業で特に苦労したこと
オーストラリア・レンマークの広大なアーモンド農園ナッツ専門店のオープンに邁進した佐川氏ですが、その道のりは決して平坦ではありませんでした。まず、ナッツの仕入れは想像以上にどこも取り入ってくれず困難を極めました。すべり出しから早くも最大のピンチにぶつかったものの、熱意をもって行動し続け、最終的には手を差し伸べてくれる会社との出逢いに恵まれました。「その方は大恩人。毎年美味しいものを見つけたらすぐ贈ります(佐川氏)」。
そうしてようやく開店に漕ぎつけたものの、旗揚げとなったオープン初日にお客様から「ブラジルナッツはないの?」と聞かれるも答えることができず、「ナッツ専門店をやるならブラジルナッツくらい知っておとかないとまずい」と指摘される苦い経験を味わいました。今でもその経験が糧となり、国内外のナッツ生産地に足しげく通いながらナッツに対するリテラシーを高めているそうです。
2017年に訪問したインド「カシューの森」の様子中東で初めて訪れた生産地は、クルミやピスタチオの発祥地として知られるイラン。近隣が紛争地帯となっていた危険な時期でありながら、人がなかなか行けないところに赴くことで自身のアイデンティティ確立したかった、と佐川氏は当時を回顧します。生産地に訪問した貴重な体験は、グルーヴィナッツの店内やホームページに掲載された写真から垣間見ることができます。
グルーヴィナッツ中目黒店の温もりある雰囲気
今となっては、再開発により以前にも増して若者が押し寄せるようになった中目黒エリア。当時からすでに発展性を感じていたという佐川氏は、直感的にピンときた現・中目黒店の物件を勢いのままに契約したと言います。
中目黒店をデザインする際にイメージしたのは、佐川氏が幼少期に住んでいたニューヨークのインダストリアルな雰囲気。ナッツと木の親和性の高さが際立つウッドテイストの店内は、どこか無骨でユーズド感のあるカッコ良さを感じ、男性でも入りやすい雰囲気です。
開店から10年弱が経った現在でも改良を続けているという店舗内装。店内を彩るブラックウォルナットのテーブルは、佐川氏自身が自宅のベランダで作業し、はめ変えたもの。店内奥にはカシューの森や天日干しの情景が写されたスケール感あるパネルが飾られ、眺めていると情景の世界に入り込んでいくような魅力を感じます。
商品を選びやすくする「魅せる展示」にこだわる
「商品をフラットに並べ、お客様の興味を無関係に店側からおすすめを伝える手法はとりたくなかった」と言い切る佐川氏。グルーヴィナッツでは、お客様自身でナッツを選びやすくするための見せ方にも強いこだわりをもっています。
人が感覚的に「これを食べてみたい」と感じ自発的にセレクトできるよう練られた商品陳列が、ナッツをガラス瓶に入れ立体感をもたせながら大胆に魅せる方法でした。ナッツの形や色、大きさの違いを見比べながら自分のペースで商品選択ができることは、グルーヴィナッツならではの体験として好評を得ています。
感覚やインスピレーションを大切にして、その時々でカラダが求めている栄養素を探してみて欲しい。そんな想いが込められた陳列は、気付きにくい心配りでありながら自然と興味を惹かれる工夫があります。美術館で絵画を観て楽しむようなシンプルさも目指していて、商品情報をできるだけ取り払い、ポップを過剰に書きすぎないようにも配慮されています。
40種類以上のナッツがすべて同価格で量り売り
ナッツの種類によって価格がバラバラで、店員さんに取ってもらうスタイルは、お客様自身が好きなものを好きなだけ取れるといったカスタマイズ性に欠けます。そこで採用されたのが、他であまり見かけることのない「均一価格での量り売り」です。それによってナッツの値段や量を細かく計算したり、調整のための余計なやり取りが省かれ、自分のペースで買い物を楽しむことができます。
佐川氏は「いまだにベストな方法かどうか分からない」と首をかしげますが、筆者のように量を調節しながら様々なナッツを試したい人にとっては最善の方法と感じます。実際にグルーヴィナッツで買い物をしていると、あれやこれやとナッツを入れていき、気付くと思ったより買い込んでしまうことも日常茶飯事なので、店舗経営としても正解なのでしょう。
佐川さん
喜んでいただけているのなら安心しました。人によっては面倒な作業に感じるかもしれませんが、ナッツ好きの方にとっては1粒から試していただける良い機会をつくれているのかなと思います。
佐川さん
価格も “フラット” なので、”ふらっと” 足を運んでいただき、自分の感性で自由に組み合わせて楽しんで欲しいです。
プレーンナッツの量り売りで用意されている袋は、保存に便利なチャック付き袋と紙袋の2種類。友人にもお裾分けするならチャック付き袋、自宅用なら紙袋に入れて帰宅後に保存瓶やタッパーに移し替えるなど、用途に合わせてお選びください。
商品のラインナップで心がけていること
フレーバーナッツに注目がいきがちなグルーヴィナッツですが、一次産業とのつながりを大切にした、流行に流されないラインナップを最も意識していると言います。ピリナッツやブラジルナッツなど、比較的に珍しいナッツ類も取り揃えていて、ナッツマニアを飽きさせないバリエーションも見逃せません。
また、グルーヴィナッツでは生やロースト、有塩や無塩など、ひとつのナッツでも様々な形態を楽しめる工夫があります。日本で手に入るナッツは12種類しかないそうですが、同じナッツでも産地違いや提供方法を変えることによって、ナッツ専門店としての幅広さと奥深さを実現しています。
アーモンドひとつ取っても、「産地違い」「生/ロースト」「塩/無塩」「殻付き/殻ナシ」など、好みや目的に合わせた種類を選べるので探究心をくすぐります。基本的に商品ラインナップは常時変わらないものの、北海道産クルミなどの国産ナッツは収穫量に限りがあるため、売り切り終了となるものもあります。
店舗限定「ナッツで作ったドリンク」も要チェック
せっかくお店に訪れたなら、店舗限定のドリンクやスイーツもお試しください。スムージーは砂糖や添加物を使わず、様々な栄養素のナッツが組み合わされたナッツ専門店ならではの贅沢な一杯です。ドリンクメニューは、その日の気分や体調に合わせて選べる「ビューティー」「エナジー」「デトックス」の3種類。中目黒散策の小休止に、栄養たっぷりのスムージーをご賞味ください。
台湾茶×ナッツ×フルーツで「Groovyなお茶」を
グルーヴィナッツ中目黒店から徒歩1分圏内に、姉妹店であり新業態店の「Groovyな、お茶」があることをご存知でしょうか。こちらは「台湾茶」×「ナッツ」×「フルーツ」という一風変わった興味深いマリアージュを楽しむことのできるお店です。台湾茶の購入だけでなく、ランチ・ディナー・バー利用もできてしまう、エンタメ性を兼ね備えた本格茶店をご紹介します。
それぞれが密につながっている奥深い世界観
コンセプトは「お茶と、ナッツと、フルーツと」。その場でナッツの殻を砕いて風味豊かな味わいを堪能できるだけでなく、農家から直接仕入れた鮮度バツグンな果物や、佐川氏が台北・台南を縦断し厳選した台湾茶も提供されます。本来、木の実であるナッツと果肉部分のフルーツは一心同体。ナッツ道を追求するうち、次第にフルーツにもハマっていったそうです。
また、台湾茶は夏の暑い日に台湾で出逢った冷たい東方美人茶に感動し、興味を持ち始めたと言います。実際に水出しの東方美人茶を飲んでみたところ、香料を混ぜずともフルーツが熟したような豊かに広がる香りに、思わず目を閉じて心穏やかに過ごすことができました。
ディナータイム(要予約)にはウイスキーを中心としたお酒も提供され、バー形態を楽しめます。「ナッツ→お酒→お茶→フルーツ→お酒→」というお酒を飲む人であれば納得の無限ローテーション。人間に備わっている嗅覚や味覚を研ぎ澄まし、「お茶×ナッツ」や「ウイスキー×フルーツ」など素材の掛け合わせで広がる世界を探求することができます。
シンプルでありながら贅沢なひと時を過ごす
「Groovyなお茶」の入口には茶器が陳列され、温もりを感じる大きな木製テーブルの雰囲気も相まって、台湾のカフェに足を踏み入れたかのような感覚に陥ります。店内左手には本格的な台湾茶が整列します。お花系・蜜系・フルーツ系など、バリエーション豊富な味わいが取り揃えられ、自分好みを探す作業に没頭しそうです。
更に奥へと進むと、名著『シングルモルト&ウイスキー完全バイブル』の掲載酒を完全再現したというウイスキーがズラリ。奥のカウンターではフルーツをカットする様子も間近で眺めることができ、エンタメ感ある雰囲気を醸し出しています。飲み物から食べ物まで、素材の味にどっぷりと浸る幸福探しの時間は、シンプルでありながら贅沢なひと時になります。
台湾食ランチでは、殻付きのクルミにも感動
ランチでは、水出しの東方美人茶にマッチする佐川氏一押しの殻付きクルミとともに、魯肉飯や鹹豆漿(シェンドウジャン)など台湾食をいただくことができます。「クルミでも殻付きとなれば食べる機会がなかなか無いので、美味しさの違いを感じてもらいたくて提供しています」と佐川氏は言います。
試食させていただいたのは岩手県産のクルミ。小さくてツルツルとした殻を割ると、見た目からも新鮮さが伝わってくるクルミが現れます。ポンっと口に入れれば、まろやかな旨味と香り、そして渋皮の心地よい苦みが一杯に広がります。牛や鶏が放し飼いにされている牧場で、猫がクルミの木まで牧場案内をしてくれたと言う写真も交えつつ、現地の情景を伝えてくださいました。
要予約のディナーは、コース仕立ての絶品料理
要予約のディナーでは、厳選された素材を使った絶品料理をコース仕立てで楽しむことができます。取材前日には、絞りたてのレモンで作るレモネードに始まり、炊きたてのご飯とカセットコンロであぶったトラフグの白子、二種の海苔で締めるコースだったそう。聞くだけで垂涎の思いがこみ上げてくるメニューですね。
提供される内容は基本的に不定で、毎回違うコースを楽しめる点も大きな魅力。試食でいただいたリンゴは噛むと瑞々しさがはじけ、爽やかな甘味を堪能できました。時にはアップルパイを焼いたり、クルミと鴨で稲庭うどんを作ったり、幅広いジャンルに心が躍ります。厳選素材と佐川氏によるおもてなしを楽しみに、気の置けない仲間と訪問してみてはいかがでしょう。
新鮮味のある感動を呼び起こす体験型のショップ
Groovy Nuts(グルーヴィナッツ)は、美味しいナッツをバリエーション豊富に提供しているだけにとどまらず、来店客が自身のカラダと向き合いながら、新鮮味のある感動を呼び起こしてくれる体験型のナッツショップでした。
風味豊かな本格ナッツを味わいたいときや、身体に必要な栄養素を摂り入れたいとき。ラフな気持ちで立ち寄ることのできるナッツ専門店に足を運んでみてはいかがでしょう。気の赴くままにナッツを選んでみると、新たな発見に出逢えるかもしれませんよ。
ショップの詳しい情報
店名 | Groovy Nuts(グルーヴィナッツ)中目黒店 |
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住所 | 〒153-0043 東京都目黒区東山1-1-5東山ATビル102 |
営業時間 | 11:00 ~ 20:00(毎日営業) |
最寄駅 | 東急東横線・東京メトロ日比谷線「中目黒駅」から徒歩8分 |
電話番号 | 03-6451-2293 |
ホームページ | https://groovynuts.jp/ |
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