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この記事は、2022年9月22日時点の情報です。
国際都市東京の玄関口である東京駅。その歴史ある赤レンガ駅舎の目前、日本ならではの逸品が揃う商業施設「KITTE(キッテ)丸の内」4階には、伝統的な香りをテーマにした香老舗があります。こちらが、京都を発祥地とする日本最古の御香調進所である「薫玉堂(くんぎょくどう)」です。
掲げるブランドコンセプトは「こころを癒やす香りを
日本最古の御香調進所、京都・香老舗の「薫玉堂」
薫玉堂は、現在では世界文化遺産にも登録される京都・西本願寺の膝元において、本願寺出入りの薬種商として創業した「日本最古の御香調進所」です。創業以来、本願寺をはじめとする全国の寺院にお香を納めるとともに、時代に即して儀式の場や日常シーンに溶け込む香りを作り続けてきました。安土桃山時代・文禄三年に始まる創業ストーリー
薫玉堂の創業は、安土桃山時代の文禄三年(1594年)に遡ります。千利休による茶道の確立、障壁画や歌舞伎に代表される桃山文化が発展した時代でもあります。薫玉堂の創業者・負野理右衛門は、そんな活気ある華やかな時代において幼少の頃から香木に関心を持ち、沈水香木の鑑定や香材の研究に勤しみ、薫物商としての基礎を築きました。 創業家に代々伝わる調香帳(レシピ)には、長い年月をかけて熟成された香木をはじめ、漢方にも使われる草木などがお香の原材料として記されています。薫玉堂のブランドマネージャー・負野千早氏は「大地の恵みを受けて育った植物には、人の心身をやさしく癒やし、元気づけてくれる力が秘められている」と謂われを話します。100年先も香りを作り続けるためのリブランド
従来より「日本人の宗教離れが加速したことによる市場のシュリンクや、仏壇に線香を供えるという慣習の薄れに危機感を持っていた」と話す負野氏。それまでは主に寺院や檀家にお香を納めていた薫玉堂ですが、100年先も香りを作り続けるため、一般の方々にも門戸を広げようとリブランディングに取り組みはじめました。 薫玉堂には、部屋で楽しむことを目的とした汎用線香は以前からあったものの、パッケージや方向性の統一感は乏しく、一級品の材料・品質・香りを表現できていないジレンマがあったと言います。そこで社員一丸となってブランドに向き合い、「京都・歴史・調香技術」の強みを活かしながら、香りを切り口にしたブランドを再構築。『香りの総合ブランド』の実現を模索しています。 古くから薫玉堂は「御香調進所」を看板に掲げてきました。そこには、お客様の要望に添いながらも、差し上げる方へ失礼のないよう、用途に合った進物の体裁を整えて用意するという意味が込められています。今ではそういった想いをより広義に捉え、一人ひとりに相応しい香りを誂えるサービスにまで昇華させ、お客様の好みの更にその先を提案できる店を目指しています。薫玉堂で語り継がれる、仕事における心構え
近年では継往開来のリブランディングに取り組んでいる薫玉堂ですが、創業当時から大切にしている「仕事における心構え」は不変だと言います。材料や人、仕事に対して真摯に向き合い続けた結果、420年以上に渡る歴史を刻んでこれたのだと感じずにはいられません。薫玉堂『仕事における心構え』
- 品があること
- 前向きなこと
- 感謝できること
- 誠実であること
- 謙虚であること
- 最善をつくすこと
- 成長し続けること
- 誇りを持つこと
- 夢を語れること
現代に復刻された明治期の薫玉堂ロゴマーク
銘器を思わせる香炉に、薫玉堂の名前が彫られたブランドロゴ。伝統的な和の趣きに存在感と信頼感が際立った印象を受けます。このロゴは、明治時代に薫玉堂が出版していた御香の新聞「寶林時報」に掲載された薫玉堂のマークを復刻したもの。薫玉堂が展開する香立や印香などにも使われる、重厚ながらも雅なデザインです。KITTE丸の内店は、都内唯一の直営ショップ
京都を主な拠点とする薫玉堂は、都内では「KITTE丸の内」にて香老舗の商品を本格的に楽しむことができます。店舗展開の地に丸の内を選んだ理由として、「時代の変遷の中で、姿を変えながらも歴史ある建物が建ち並ぶ丸の内。東京駅から皇居への道がまっすぐに伸びていて、京都御所からのつながりも感じる土地だと思いました」と負野氏は話します。見目好く実用性を備えた、こだわりの店舗設計
KITTE丸の内店に訪れたなら、こだわりの店舗デザインに注目してみましょう。薫玉堂のコンセプトステータスにも記された「香りのかたちを提案して参ります」を踏まえ、単なる物販店ではなく「提案の場」としての店舗設計を意識したと言います。カウンター越しからも商品を提案できるレジカウンターがその最たる象徴です。 店舗の棚や天井には、規則正しい格子デザインが取り入れられています。これは「商品:什器:用途=1:1:1」の関係性であることを意図し、四角の繋がりを重視したもの。店内を眺めていると、碁盤の目が如く横と縦に直行する京都の街並みや、歴史ある寺院の天井を眺めているような気分になります。薫玉堂の店内でお買い物を楽しむためのポイント
薫玉堂の店内では、お客様が実際に香りをテイスティングできる試し焚きや、好きな香りを少しずつ購入できる10本束での販売が行われています。初めての方であれば尚更、人気の香りからチョイスした試し焚きによって、使用感のイメージが湧いてくるでしょう。取材の最中にも、自宅で芳香を楽しむための線香を探していたり、お供えや進物の目的でスタッフに相談されるお客様で絶えず賑わっていました。香りのセレクトアイテムで、更に広がる世界観
お香や線香について「敷居が高い」と感じる人や、愉しみ方が分からずにいる人もいらっしゃるでしょう。薫玉堂のKITTE丸の内店は、選りすぐった香りのセレクトアイテムも豊富に取り扱うため、フラリと立ち寄りやすい点も魅力。消臭アイテムやタオルを求めて来店するお客様も少なくないと言います。 薫玉堂のオリジナル商品とセレクトアイテムを組み合わせ、ギフトセットとして贈ることも可能です。ルームフレグランスとボディケアで心身ともにリラックスできる香りギフトを仕立ててみたり、ボリューム感や予算感に応じたセット組みを考えてみたり、相手の生活をより豊かにしてくれそうなオリジナルギフト作りに精が出ます。薫玉堂で気になったセレクトアイテムを厳選紹介
慌ただしい生活の中でも、スッと心を落ち着かせてくれる香りのアイテム。それは、伝統的な線香・香木・匂い袋・印香だけにとどまらず、現代の暮らしに沿ったライフスタイルアイテムも然り。薫玉堂の店内で存在感を放つセレクト商品の中から、筆者が気になったものをピックアップしてご紹介します。No.1 フレグランス|かほりとともに
香水 かほりとともに 京都を拠点とする女性調香師・沙里氏が作る香水「かほりとともに」。自然の植物天然香料であることや、廃棄されるはずだった素材を活用するサステナビリティにもこだわりを持って香水作りをしているそうです。日本各地の希少な植物や古くから薬草にも使われてきたハーブ、花々がマッチした神秘的な魅力を感じます。No.2 プリザーブドフラワー|花山 -Hanayama-
花山 -Hanayama- 鎌倉を拠点に活動する亀井紀彦氏の作品です。桜島で採取した浮き石にプリザーブドフラワーやドライフラワーを挿し、繊細な花景色を作り上げています。アロマオイルを垂らすことで香りを楽しむこともできます。No.3 ハーブティー|JACINTHE&Cie
Thé de pivoine blanche A 食にまつわるジャンルからも、香りを楽しむ商品がラインナップ。「植物を食して健康で美しく」をコンセプトとするハーブティーは、飲みやすさや美味しさだけでなく、フラワーアレンジメントのように見た目の美しさにもこだわっています。香りの創作体験、「線香づくり」ワークショップ
薫玉堂では、店舗限定で体験できるワークショップも見逃せません。体験プランは「香袋」と「線香」の2通りで、線香づくりはKITTE丸の内店限定プランです。知的好奇心をくすぐる体験の予約は、丸の内店への電話もしくは店頭にて。毎月20日頃に翌月のワークショップ日が公開されるため、店舗案内やホームページをチェックしてみてください。線香づくり工程①: 原料を選ぶ
線香づくりは、原料選びから始まります。2種の「上匂い(火をつける前の香り)」、10種の「含み香(燃焼中にする香り)」、4種の「残香(燃えきった後に漂う香り)」から、それぞれ数匙を選びます。オレンジやイランイラン、ジャスミン、ユーカリ、山椒、白檀など、名前を聞くだけで良い香りを想起させる素材が用意されています。 缶に入った粉末状の素材を嗅ぎながら香りを吟味するひと時は、さながら調香師になった気分。具体的な利用シーンを思い浮かべながら、香りのアンサンブルを創造する、それだけでリラクゼーションを感じる工程です。レシピカードには「繊細→重」の順に素材名が書かれているので、そちらも参考にしながら進めましょう。線香づくり工程②: 水と練り合わせる
線香の原料を選んだら、素材と水、そして線香の基材(つなぎ)となるタブ粉を合わせ、すり鉢で練り上げていきます。タブ粉を嗅いでみるとバニラのようなほんのり甘い香りがしますが、完成する香りには大きく影響しません。それらを練り合わせていくと徐々に固まり始め、更にもみ込んで団子状にしていきます。線香づくり工程③: 器械を使って成型
合わせた素材が団子状になったら、器械を使って細長く成型します。形が整ったら、長さが均等になるようにカットして、溝がある容器に置き乾燥させます。ここまでくるとようやく、一般的に知られた線香の形となり、自分の手で線香を作り上げた実感とともに愛着感が湧いてくることでしょう。一連の工程は、およそ一時間半が目途となっています。線香づくり工程④: 1週間ほど休ませ完成
形になった線香は、その場で専用の箱に詰められ持ち帰ることができます。実際に使用できるまでには1週間程度の乾燥が必要なので、乾燥するまでは箱から出さないように注意します。しっかりと乾燥させた後に、自宅で火を点ける瞬間が待ち遠しく感じることでしょう。より手軽に楽しめる香袋づくりもオススメ
香袋づくりであれば30分程度で完成するため、さらに気軽な気持ちで参加できます。香りの原材料を何匙かずつ選び、手のひらサイズの巾着に封じ込めます。京ちりめんや麻でできた巾着選びも楽しみのひとつ。華やかで可愛い絵柄や渋い色など幅広く用意されているので、男性も楽しんで参加できることでしょう。簡単な作業なので、家族やお子様だけで参加することも可能です。店長が考える薫玉堂 KITTE丸の内店の魅力とは
薫玉堂 KITTE丸の内店の魅力について、店長・長沼氏はこう話します。「本店は京都の老舗ならではの凛とした厳かな雰囲気を味わえますが、支店である丸の内店ではブランドの品格は保ちつつ、お買い物の最中に気軽に立ち寄れる親しみやすさが魅力のひとつだと思います」。 店内から立ち込める芳しい香りに誘われ、入店後にお香や線香のお店だと気付くことも稀ではないと言います。薫玉堂 KITTE丸の内店は、「敷居が高い」と思われがちな薫物であっても、実は誰にとっても「手軽に楽しめるもの」と知っていただける場。そう長沼氏は続けます。 仕事やプライベートの節目で気分をリフレッシュしたかったり、忙しくて気持ちが休まらず心を癒したいときなど、「気分転換」に重要な役割を果たす香りのアイテム。自宅用だけでなく、大切な人への「贈り物」や「進物」で悩んだときにはぜひ足を運んでいただけたら、と締めてくださいました。確かなクオリティーと提案力が頼りになる香老舗
香老舗と称される確かなクオリティーと、専門店ならではの提案力が頼りになる薫玉堂。KITTE丸の内店は、そういった基盤の上に「香りの総合ブランド」として多種多彩なセレクトアイテムが集められ、線香づくりを直に体験できる楽しみも相まって、幅広い魅力が詰め込まれた店舗に仕上がっています。 店舗を訪れることで様々な角度から香りを楽しめ、また、自分には縁遠いと思っていたお香や線香がより身近に感じられました。香りは、記憶とも密接な関わりを持ち、人の脳に直接働きかけ感受性を促します。生活に豊かさを取り入れたくなったなら、薫玉堂 KITTE丸の内店を訪れてみてはいかがでしょう。ショップの詳しい情報
店名 | 薫玉堂 KITTE丸の内店 |
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住所 | 〒100-7004 東京都千代田区丸の内2丁目7番2号 JPタワー4階 |
営業時間 | 11:00 ~ 21:00(日曜・祝日に限り20:00まで) |
休業日 | KITTE丸の内に準ずる(1月1日・法定点検日) |
最寄駅 | JR東京駅から徒歩約1分 JR京葉線・東京駅から徒歩約3分 JR有楽町駅から徒歩約6分 丸ノ内線・東京駅から地下道直結 千代田線・二重橋前駅から徒歩約2分 有楽町線・有楽町駅から徒歩約6分 都営三田線・大手町駅から徒歩約4分 |
電話番号 | 03-6551-2630 |
ホームページ | https://www.kungyokudo.co.jp/ |
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