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大切なものを包みいれる風呂敷は、日本で古くから使われている暮らしの道具。心遣いを伝える日本人らしい繊細さを感じさせ、多彩で美しいデザイン性から見る人を楽しませてくれます。お弁当箱を入れる小さな包み、買い物バッグになる大きな包みなど、サイズ感に応じて使い方が多様なところも風呂敷の魅力です。
風呂敷の用途は包むだけにとどまりません。現代では、インテリアやファッションのアクセントとして活用されることもしばしば。使い道が拡がった風呂敷は、何枚あっても困りません。そんな暮らしに寄り添った風呂敷を専門的に取り揃えるお店が「むす美」。京都・三条通りと東京・原宿のオフィシャルショップには、むす美の全ラインナップ(約500種)が揃います。
取材に応じてくださったのは、風呂敷の結び方に関する著書を多数もつ山田繊維株式会社の広報・山田悦子氏。話を聞くほどに、風呂敷は単なる便利な道具ではなく、生活を心豊かにする楽しみもプレゼントできるアイテムだと感じました。本記事では、馴染みのない方でも「風呂敷ライフ」をスタートしたくなる、風呂敷の奥深い魅力について紐解いていきます。
京の風呂敷(ふろしき)専門店「むす美」
“むす美”は、1937年(昭和12年)創業の風呂敷メーカーの風呂敷ブランド。2005年の店舗オープンを機に、2代目当主が考案したブランド名「むす美」を店舗名に冠しました。”生きた文化”として継承していけるよう、現代のライフスタイルに合ったデザインや使い方を提案し、風呂敷の魅力を世界に発信しています。
“むす美”という名称には、「結ぶこと」以上の想いが込められています。結び(=ムスヒ)の「ムス」は”生”や”産”、「ヒ」は”霊”の語源と言われ、人と人とが出会い結ばれて新しい生命が生まれるように、無から有を生み出すという意味合いがあります。「苔むす」や「むすこ(息子)」「むすめ(娘)」も、それに由来されると言います。風呂敷も、結ぶことで初めて形が生まれるもの。日本人ならではの精神性を宿した風呂敷を通して人と人とのご縁を結び、幸せを育む役割を果たしていきたいと考えてのことだそうです。
むす美のブランドロゴは、風呂敷がヒラリと浮かんだような様子や英字の「M」をイメージしています。常に変化する時代に適応し続ける柔軟性や軽やかさを表現したもの。「誰もが使え、どんな形にも変幻自在となることで、時代に寄り添いながらその価値を届けられたら」という信念に立ち返り、当初は候補外だった現在のロゴを採用することになりました。
結び方は、シンプルで不変的な手法を現代のファッションやライフスタイルに応用して提案している、と話す山田氏。たとえば、ワインボトルの結び方は、酒や醤油が量り売りで販売されていた当時の、先人達のアイデア。歴史の中で育まれた知恵を活かしつつ、現代の暮らしに風呂敷が溶けこみ魅せられるよう、日々思案しています。
むす美のオフィシャルショップ東京店
500種類以上の風呂敷を取り扱うむす美。2005年にオープンした東京店には、自らの暮らしに添える風呂敷を探しに来た日本人から、日本土産を求める外国人観光客までが訪れます。広げることで全容が見える風呂敷の特性上、店内のパレットウォールに「魅せる」ディスプレイを並べ、好みの風呂敷を一目瞭然に見つけられる工夫が施されます。また、結ばれた姿をイメージしやすいように、様々な結び方のサンプルも飾られています。
店内の大きな姿見(鏡)は、意外性のあるポイント。風呂敷を扱ったことのない人が風呂敷バッグなどにして抱えたとき、どのように映るかをチェックするために設置されています。海外のお客様は、羽織ったりラップスカートにしてみたり、自分に合った一枚を探し出していくのだそうです。
包み方を学べる、ワークショップも開催
包み方が分からないという理由で、風呂敷を避けてきた人もいらっしゃるでしょう。そんな人に参加をおすすめしたい、むす美が開催するワークショップ。たとえば「ふろしきベーシック講座」では、風呂敷のルーツや手入れ方法、基本の結び方2種、四角いもの・ボトル・バッグなど10種類以上の活用方法などを基礎から学ぶことができます。
風呂敷はワンサイズ違うだけで、ゆったりして格好良くみえたり、逆にゆるすぎて締まりがなくみえたりと、見え方が変わります。オンラインやYouTubeでは感じ得ない、的確に要領をつかむ機会を体験してみてはいかがでしょう。「講習では様々な風呂敷のサイズや素材を試すことができます。どんな素材感やサイズの風呂敷が包みやすいかなど、感覚をつかみに来ていただきたいです(山田氏)」。
むす美では他にも、防災や旅行にフォーカスした風呂敷の活用法を学べる講座、子育て世帯に嬉しいクリスマスギフトラッピングの講座など、およそ10コースが常時用意されています。基本的な結び方から応用編まで学ぶことができるワークショップの開催情報は、むす美の公式ホームページからチェックできます。
こだわりが詰まったむす美ブランドの風呂敷
多彩なデザイン性の風呂敷が人々を惹きつけるむす美は、すべてがオリジナル商品。自社のデザイナーが考案したのものだけでなく、クリエイターとコラボした商品も並びます。「どうすれば風呂敷を魅力的に思ってもらえるか考えるのが私たちの使命」と山田氏は話します。常にアップデートしていく気概を込めて、年に2回は展示会が開催されるそうです。
令和の時代に求められる素材とデザイン
山田氏がむす美の風呂敷のこだわりについて最初に挙げたのは「サステナブルな時代に合う、人にも自然にも優しい素材」を意識して商品開発している点。むす美で取り扱う風呂敷の生地には、オーガニック素材やペットボトルの再生繊維などを使ったものも見られます。
また、印象を左右する風呂敷のデザインにもこだわりが垣間見れます。風呂敷は、何かを包んだり人が持っている状態が完成形。そのため、平面的な絵柄も使うイメージを想定しながら配色や構図のバランスを確認するそうです。そして、熟練の職人や高い技術力をもった工場が手がける染めや加工を駆使しながら、時代に合ったデザインを生みだしてます。
用途で使い分けるサイズのバリエーション
風呂敷は包むための道具なので、デザインだけでなくサイズも重要です。むす美では、大別して4サイズを用意。Sサイズ(約45~50cm)は「お弁当箱包みやブックカバー」、Mサイズ(約68~70cm)は「菓子折りやワインボトル包み」、Lサイズ(約90~120cm)は「風呂敷バッグやストール使い」、XLサイズ(約130cm~)は「着物包みやテーブルクロス」に適しています。
サイズによって、使い道も変わることがよく分かります。大きめサイズの風呂敷はあまり見かけることがありませんが、むす美なら豊富なデザインの中から大判サイズの風呂敷を選べて頼りになります。何を包むのか、どう使いたいのかをショップスタッフに伝えれば、適切なサイズの風呂敷を提案してくれるので、ぜひ相談しましょう。
ギフトシーンで特別感を演出するサービス
むす美では、風呂敷に名前やロゴを入れることができます。名入れが施されると、パーソナル感や愛着心が生まれます。そんな特別な一枚を演出する名入れは、相手に喜ばれることでしょう。
風呂敷ではないギフトアイテムを選び、そのラッピングとして風呂敷を活用しても素敵です。むす美には、お店で購入した風呂敷を使い、持参した品物を包んでくれる「ギフトラッピングサービス」があります。
最近だと、取引先に持参する手土産を包むために訪れる男性客も多いそうです。ギフトラッピングサービスでは、相手の雰囲気や好みをヒアリングしながら、風呂敷の柄や結び方を決めて仕上げられるので男性ならずとも頼りになります。ギフトとしてだけでなく、ラッピングにまで応用できるエコな風呂敷は、きっとその日の思い出とともに贈る相手の心に残ることでしょう。
大切な人に贈りたい、むす美の「風呂敷」5選
風呂敷を贈り物として選ぶポイントを伺うと「まず、風呂敷のことをよく知っている人かどうか」と山田氏は言います。ポピュラーな約70cmの風呂敷は、どなたでも応用が効く使いやすいサイズ感。この約70cmサイズの風呂敷を基準に、相手にどう使ってもらいたいか、何を包むかなど想定することでサイズが選びやすくなるそうです。
また「分厚い風呂敷よりも、薄手の方が結びやすい」と山田氏。硬い生地の風呂敷も使っていくうちに柔らかくなるものの、風呂敷ビギナーには柔らかい生地の方が扱いやすいのでおすすめだそうです。ついデザインを重視して選びがちですが、硬さにまで配慮すると親切かもしれません。
クリスマス、母の日、海外の友人への手土産などで、相手の生活背景や好みを思い返しながら、選んでみることもおすすめです。風呂敷バッグにも活用できて使い方の幅が広いので、引越しのご挨拶、退職やホワイトデーのお返しなどにも選ばれます。ここでは、筆者がおすすめしたいむす美の風呂敷ギフトをご紹介します。
No.1 – モダンガールいちごバッグ(リング付)
70 モダンガールいちごバッグ(リング付)【袋入】しましまマルチポップで可愛い大正レトロなデザインの風呂敷と、アクリル製のリングがセットになった贈り物。付属のリングの中にふろしきの角を通して真結びすれば、キュートな「いちごバッグ」が完成。お祭りの浴衣コーデや仕事のランチバッグなど、幅広い使い方ができるユニークなギフトです。
ふろしき単体としては、手土産として菓子折りを入れたり、ちょっとした贈り物を包んでも、親しみやすさを感じさせながら品良く小粋な演出ができそうです。使い勝手の良い70cmサイズの利点をフル活用できる、風呂敷ギフトになることでしょう。
No.2 – アクアドロップリサイクル(撥水加工)
100 アクアドロップリサイクル Adeline Klam 牡丹 ローズ (撥水加工)水も運べるほどの撥水力をもつ「アクアドロップ」シリーズ。パリ在住のフランス人がデザインした「Adeline Klam 牡丹 ローズ」は、大胆な花柄と明るい色味から元気をもらえる一品です。水や汚れに強い大判の風呂敷は、エコバッグやレジャーシートなどマルチに活躍、花好きなお母さんや女友達に贈りたくなります。
約100cmの風呂敷は広げると大きさを感じますが、結んで風呂敷バッグにしてみると、ちょうど良いサイズ感になります。日常的な買い物バッグとして使ったり、旅行でキャリーバッグに入りきらないものを包んで運ぶなど、使い方は多種多彩。大きめサイズの風呂敷の便利さを体感していただける一品です。
No.3 – 伊砂文様(いさもんよう)シリーズ
伊砂文様シリーズ縁起の良い伝統文様を両面で楽しめる「伊砂文様」シリーズは、男性やご年配の方への贈り物にもおすすめです。熟練の京都の職人の手による「両面染め」技術を活用することで、裏表同柄で異なる色彩を楽しめるこだわりの一品に仕上がっています。
大きめサイズならテーブルクロス、小さいサイズならお弁当包みやティッシュボックスにも活用できて暮らしに寄りそってくれます。贈答シーンに応じた縁起柄を選べば、幸運を運んでくれそうな風呂敷ギフトになりそうです。
No.4 – 福コチャエ(歌舞伎)
48 福コチャエ 歌舞伎 クロ海外の方への贈り物を包むなら、日本らしさと遊び心を同時に楽しめる「COCHAE(コチャエ)」と「MUSUBI(むす美)」のコラボシリーズがおすすめ。包むと歌舞伎役者の顔が正面に来るユニークなデザイン柄は、「海外のお友達にもウケがよくて気に入ってます」など、好評のコメントが並んでいます。
歌舞伎の他にも、ひょっとこや招き猫など、可愛らしいラインナップが目を惹きます。店頭で贈り物として選んでいても、つい自宅用にも連れて帰りたくなる愛らしいシリーズ。約48cmの小さめ風呂敷は、ささやかな返礼品やプチギフトを包むのに最適なサイズ感です。
No.5 – 竹久夢二シリーズ(つばきグレー)
二四巾 竹久夢二 つばきグレー美人画で一世風靡した「大正ロマン」を象徴する画家、竹久夢二がデザインした絵柄を取り込んだシリーズも素敵です。レトロな可愛らしさが醸しだす世界観は、幅広い世代から人気のあるロングセラーです。美術館巡りや演劇鑑賞など、アートに通じた大人の女性に贈りたい一枚です。
懐古的でかつ先端的、便利なユースフルギフト
風呂敷は「ギフトの主役に向かないのでは?」と思う人も、本記事を読んで少しでも印象が変われば嬉しく思います。筆者自身、取材を通じてそれだけ風呂敷に惹きつけられたからです。旅行のお供や小寒い季節の羽織りものなど、便利さとオシャレさを贈ることができる風呂敷は、「懐古的でありながら先端的」な贈り物だと感じます。
500種類もの多彩なデザインをラインナップし、気分やシーンに合わせて選ぶ楽しみを味わえる「むす美」の風呂敷は、何枚も集めて暮らしを彩るパートナーにしたくなります。贈り物にする前に、まずはご自身で風呂敷の便利さを体感してみてはいかがでしょう。結び方をひとつ覚えるごとに、もう一枚もう一枚と手に入れたくなりますよ。