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この記事は、2018年9月13日時点の情報です。
ものづくりをコンセプトに、クリエイターや企業の集まる「2k540 AKIOKA-ARTISAN」という複合施設が、JR山手線の秋葉原と御徒町の間にあります。この施設内で御徒町寄りのエリアに、柔らかい灯りが燈る、手ぬぐいの専門店「にじゆら」があります。
明治期から存在すると言われる染めの技法、”注染” を発信する拠点として作られた「染めこうば店(東京)」は、注染で染められた手ぬぐいや、生地を使った雑貨などを販売しています。伝統技法の継承にとどまらず、新進気鋭のデザイナーと共に手ぬぐいの新しい魅力を発信し続ける「にじゆら」、その染めこうば店をご紹介します。
伝統的な染色技法「注染(ちゅうせん)」のこと
注染(ちゅうせん)とは、染めない部分に糊を付け、染料を注いで布を染める染色技法で、大阪が発祥の地として知られています。染料を洗うための河川があり、織物の生産が盛んだった地域を拠点として栄えました。 しかし、現在では全国に製造会社が20数社、糊を置く職人は百人に満たないほど激減し、消滅の危機を迎えつつある状況です。そこで、注染手ぬぐいの専門店「にじゆら」では、手ぬぐいの製造販売だけでなく、生地を活用した雑貨作りや染め体験を通して、伝統的な注染技法を知るための場所やきっかけも提供しています。 染める生地はさらしの木綿です。一度にたくさんの手ぬぐいや、浴衣の生地を作れるのが注染の特徴で、色のついた顔料を押しつけ片側しか柄を付けることのできないプリント製法と違い、目を埋めることなく裏表染めることが可能です。注染の染色工程は4段階
注染の工程は、大まかには4段階に分かれています。まず、手ぬぐい1枚分の布に型紙を張った木枠を固定し、木製ヘラを使って染料を染み込ませたくない部分に糊置きします。糊は、土と海藻を混ぜたペースト状のものです。 強く塗っては型紙が破れてしまうし、力が弱いとしっかり糊付けされず、不要な部分にも染料が染み込んでしまいます。しっかりと糊を付けなければならず力も必要で、職人が使っているヘラは指の形に添ってすり減っています。 1枚分に糊を塗ったら、布を蛇腹状に寸分違わず重ね合わせ、次の1枚分に再び糊付けをします。布を重ねる際に、しわやたるみがあっては綺麗に糊付けすることができず、慎重な作業を求められます。また、塗り重ねるとき、前後左右1㎜もずれずに塗らないとうまく染まりません。 これを、布がある分だけ何度も繰り返します。第一段階の「板場」という作業が完璧でないと、綺麗に染まりません。 次に、折り重なった状態のさらしを染め台に置き、染料が流れ出ないように糊で土手を作ります。作った土手の中に染料を流し込み、減圧タンクで染料を吸引すると、流し込まれた染料が垂直に吸い上げられ、染めたい部分だけに染料が流れます。 土手の左右で色を変えれば染料が混ざり合いグラデーションになります。染料を注ぐタイミングと量、吸引する加減、タイミング、強さによってグラデーションの幅や強さが変わってくるので、ここも職人の腕の見せ所です。この段階は職人の特徴が出る工程で、まったく同じものはできません。 染めが一通り終わったら、川と呼ばれる洗い場へ向かいます。重なり、ひっついている状態の糊や余分な染料を洗い流します。移染をしないように手早く洗い流すのがコツです。 最後に、洗った生地を脱水機にかけ乾燥させます。25mにもなる生地が天井からかけられている風景は、爽やかさを感じます。よく見ると、蛇腹状にする際にできた折り返しラインが見えます。乾燥を終えた布は繋がった状態であるため、シワ取りをして、寸法にあわせてカットしたら完成となります。注染手ぬぐい専門店「にじゆら」の染めこうば店
にじゆら(染めこうば店)の店内には、壁や天井の至るところに手ぬぐいが並びます。淡い色や深い色で彩られた店内は、心癒される空間です。奥に進むと注染の機械が設置されており、天井からは干された状態の長い生地が風にそよぎます。“にじゆら” という店名の由来
にじゆらのブランド名は、注染独特の「にじみ」と、お洗濯で干されている時に風で「ゆらぐ」イメージから名付けられました。「人のあたたかな気配が感じられる、昔ながらの染め技法を最大限生かしながら、新たな個性を掛け合わせ今の時代にそぐう形で伝えたい。そして、注染をのちのちの世代まで残したい」そんな想いから生まれた手ぬぐいブランドです。注染手ぬぐいの特徴と魅力
染料を変えれば、まったく違う印象で色違いのデザインの手ぬぐいができます。写真右側にある踊り炊きのような米の型は、1度染めの状態の手ぬぐい。写真中央と左側は、さらにそこから小豆やパエリアなどの具材の型で染め上げたものとなります(2度染め)。注染の特徴を活かした大変手間のかけられたシリーズで、どのように染められたかを考えるのも楽しくなります。 注染は、糸の目をふさがず染めることができるので、通気性・吸水性がよく、速乾性があります。早く乾くということは雑菌が増えにくく衛生的ということです。また、洗うほど手触りが柔らかくなるのも魅力的な特徴のひとつです。 「使ってみると万能で扱いも楽。バスタオル代わりに2枚ほど使っています。あまり汚れていなければ手で洗え、ぱっとかけておけばカラッと乾きます。場所も取らないので助かります」と、にじゆらの手ぬぐいに魅了されて加わったスタッフは、手ぬぐいの魅力をこのように語ってくれました。注染で染めた生地を活用した、涼し気な扇子
染め工場ならではの、生地を使った雑貨も豊富に揃います。写真は、生地を使い扇子の老舗「舞扇堂」で作られた一品。染め生地独特の柔らかな風合いとグラデーションが涼し気な一品です。保管中に虫が寄り付かないよう桐箱に入っているので、贈り物にもぴったりです。和の趣を感じる、壁掛け(タペストリー)
壁掛け(タペストリー)は、お好きな手ぬぐいと贈れるギフトセットもあります。店舗向かいにある木工芸品屋の木材にレーザー刻印したものは、磁石が仕込まれており、手ぬぐいを挟んで固定します。糸で木材を固定するタイプのタペストリーもあるので、材質や予算に合わせてお選びください。ふわっと巻ける、ガーゼ生地のスカーフ
にじゆらには、手ぬぐいよりも目が荒いガーゼ生地に、注染を施したスカーフもあります。手ぬぐいは切りっぱなしであるのに対して、ガーゼは端を縫ってあるのが特徴です。もともと柔らかい質感ですが、洗うとさらに柔らかくなるため、肌の刺激も少ないです。ガーゼスカーフをふわっと巻けば、ファッションのアクセントになります。見ていて楽しいコラボレーションイラスト
様々な企業とコラボレーションしたイラストを探すのも、にじゆら(染めこうば店)の楽しみ方のひとつです。上野動物園をイメージして描かれた手ぬぐいは、躍動感や賑やかさが伝わります。 プシュッとビールが噴き出ている勢いのあるデザインがポップな「箕面ビール」とのコラボ商品や、食虫植物の図鑑を開いている絵柄が技ありな「咲くやこの花館」とのコラボなど、遊び心のある手ぬぐいは思わず手を伸ばしてしまう一枚。個性的なデザインは見る人を楽しませ、会話のきっかけも作ります。10周年を迎えた「にじゆら」の企画
今年で10周年を迎えるにじゆらから、感謝の気持ちを込めて。過去に生み出された300~400以上のデザインから選ばれた、復刻版・記念デザイン・おまけの手ぬぐいなどが、オリジナルのアルミお弁当箱に詰め込まれた「10周年記念ボックスセット」を販売しています(2018年8月時点)。「懐かしい!」「これが欲しかった!」という声も多い待望の復刻版を、ぜひお楽しみください。オリジナルの手ぬぐい作り
にじゆらで、あなただけのオリジナル手ぬぐいを作ってみませんか?取材にご協力いただいた所長のオリジナル手ぬぐいを見せて頂きました。 所長が過去に携わっていた仕事や経験のあるスポーツ、習い事、大好きなサザンオールスターズのCDジャケットのオマージュが入った手ぬぐいは、豊かな人間性が一目で伝わる仕上がりです。一枚であなたの情報を伝えてくれる、名刺代わりにもなるユーモアな手ぬぐいを作ってみてはいかがでしょうか?ワークショップで注染体験
にじゆら(染めこうば店)では、定期的にワークショップを行っています。注染のデモ機を使ってさらし生地を注染し、洗いは自宅で行います。実際に機械を使った体験ができるのは、こちらの店舗ならでは。外国からの観光客も、染め方に興味を持って観光していくのだそうです。 お子様でも体験できるので、ご家族で参加してみてはいかがでしょうか。カップルで参加し、新鮮な時間を過ごす「ものづくりデート」をするのも、楽しい思い出になります。ワークショップ情報は、にじゆら染めこうば店のFacebookページでご確認ください。手ぬぐい好きなら何度も「にじゆら」に訪れたい
職人の技術や時間、デザイナーの注染の理解から作られる手ぬぐいは、温もりを感じずにはいられない染物です。色合いも様々で、お気に入り探しに悩む時間は、宝物を探しているように感じられます。
「かさばらない、軽い、腐らない、日本的」な手ぬぐいで、日本の伝統工芸を気軽に生活に取り入れてみませんか?曇りなく、色鮮やかに染められた手ぬぐいに心洗われる「にじゆら(染めこうば店)」に、是非お立ち寄りください。
ショップの詳しい情報
店名 | にじゆら(染めこうば店) |
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住所 | 〒110-0005 東京都台東区上野5-9-18 2K540 AKI-OKA ARTISAN O-2区画 |
営業時間 | 11:00 ~ 19:00 |
休業日 | 水曜日 |
最寄駅 | JR山手線 秋葉原駅から徒歩6分 JR山手線 御徒町駅から徒歩4分 |
電話番号 | 03-5826-4125 |
ホームページ | https://nijiyura.com/ |
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