ころんとしたフォルムに赤色の体、しかめっ面のお顔をした縁起物といえば「達磨(だるま)」ですよね。特に受験シーズンによく見かけ、必勝祈願や合格祈願などのお守りと考えている人も多いのではないでしょうか。
せっかく願掛けするのなら、飾り方を始めとして、願い事が叶った後にどうすればいいのかも知っておきたいところ。今回は、そんな熱血イメージのだるまさんを特集します。
目次
だるまの起源・歴史を紐解いてみる
だるまはいつ生まれたのでしょう? だるまという名前から、紐解いていきます。
だるまは、漢字で「達磨」と書き、中国・洛陽にある少林寺の洞窟の岸壁に向かって、9年間座禅を組んで修業した達磨大師に由来します。だるまのころんとしたフォルムは、達磨大師の修業中の姿を模していると言われています。
だるまは、いつから日本で広まった?
鎌倉時代以降には、達磨大師は禅宗の開祖として仰がれていましたが、だるま人形が日本で広まった時期は、室町時代あたりです。
中国でだるまの変形像としてもてはやされた「不倒翁(ふとうおう)」が持ち込まれ、起き上がり小法師に変化して広まりました。しかし、これを達磨と捉え、現在のような形や縁起物となったのはもっと後のことなのだそうです。
だるまの代表的な生産地はどこ?
だるまの名産地は、群馬県高崎市。200年以上の歴史をもつ「高崎だるま」が有名です。「眉毛は鶴、鼻から口ヒゲは亀」と縁起の良い二つの動物が顔に描かれており、「福だるま」「縁起だるま」とも呼ばれています。なんとも….. おめでたいお顔立ちです。
また、お腹には「福入」、両肩には家内安全や商売繁盛などの願いを込めた金文字が書かれています。文字が書かれているだるまは、全国的に見ても珍しいのだそうです。
養蚕が盛んだった高崎では、蚕が繭を作る準備に入る頃を「起き上がる」と呼ぶことに掛けて、だるまを蚕の守り神として祀っていたのだそうです。はじめは養蚕の繁盛を願うものでしたが、次第に一般家庭にも広がり、様々な願い事を託すようになりました。
からっ風が吹く高崎の地形が張子の製作に適していることも、産地へと押し上げます。今では年間約90万個(平成15年時点)を全国に出荷し、全国のだるまの大多数を製作しているそうです。
高崎市では、毎年1月はじめに「高崎だるま市」が開催されています。高崎グルメに舌鼓を打ちながら、高崎だるまを選ぶなんて、年初めから幸せいっぱいですね。
埼玉県越谷市にも「越谷だるま」があり、川崎大師や柴又帝釈天などに収められています。越谷だるまの特徴は、他のだるまと比べ、色白で鼻が高いのだそうです。
これは主な出荷先が江戸だったため、搬送中に鼻が破損する心配が少なかったためと考えられています。だるまの中でも、顔の特徴が違うのだから、面白いですね。
ちなみに、達磨のサイズの単位は「丸(まる)」なのですって。丸いフォルムにぴったりな、可愛いらしい数え方ですね。
だるまの名所として知られるお寺とは
群馬県高崎市には、縁起だるま発祥の寺「黄檗宗(おうばくしゅう)少林寺達磨寺」があります。200年ほど前に大飢饉があった際に、9代目住職が張子のだるまの作り方を村の人に伝授したのがはじまりです。本殿に重なるだるまは圧巻です。
こちらの売店では、だるまの絵付け体験ができます。自分の名前や達成したい目標を描き入れ、自分だけの特別なだるまを作ってみてはいかがでしょう?
自身で願いを書き込むことで、目標宣言をしているようです。また、和尚にだるまの開眼や願掛けを依頼することもできます。和尚によって開眼されただるまは、より強力なパワーが宿ったように感じるでしょうね。
関西では、大阪府の箕面国定公園内にある「勝尾寺」が有名です。約1300年前より勝運の寺として信仰されています。六代座主、行巡が清和天皇の病を祈祷で治し、その功を示したことにより「ここはまさに王に勝った寺、勝王寺である。」と帝より命名されます。
しかし、寺側はあまりに畏れ多いと「王」を「尾」に変え「勝尾寺」と称する様になったそうです。以来、「勝運の寺」として広く信仰され、歴代の将軍や武将達が勝運を祈り、 参拝を重ねてきた歴史をもちます。
勝尾寺が古くより伝えてきた「勝つ」とは他者を負かすことではない。
転んでも起き、転んでも起き、己に打ち勝つ「七転び八起きの精神」
その精神と、勝運信仰の歴史が一体となり形を成したもの。それを「勝ちダルマ」と呼ぶ。
目標に対する、自分への決意表明を誓う場なのですね。
現代では受験、厄除け、病気、スポーツ、商売、選挙、芸事など「人生のあらゆる場面で勝つ寺」として多くの人が足を運びます。授与所で勝ちダルマを購入したら願い事を書き込み、お線香で薫香します。
そして、最後に目標に向かって努力を惜しまないことを誓いダルマの右目に目を描きます。願いが叶ったら目を書き込み、1年をめどに感謝の気持ちをもって奉納します。勝尾寺の勝ちダルマ奉納棚には、両目が描かれた勝ちダルマが積み重なります。多くの人々の願いが成就した、パワースポットのようですね。
また、ダルマみくじのだるまが境内の至るところに鎮座しており、その光景も定番となっています。小さなダルマは、幸運を祈る妖精のようです。
東京都内で見てみると、だるまにまつわる行事が行われている「深大寺」が有名です。深大寺では、3月に「だるま市」が開催され、多くの人が訪れます。深大寺ならではなのが、だるまの眼入れを行う際に「梵字」というインドの古い文字を描き入れることです。
新しいダルマの左目には物事の始まりを意味する「阿」字を入れて開眼し、心願叶ったダルマの右目には物事の成就を意味する「吽」字を入れて感謝の意を込めて寺に納めます。だるま市限定の御朱印をいただくこともできるので、是非足を運びたい行事ですね。
だるまの縁起が良いといわれる理由
禅宗の開祖を模していることや、倒れても起き上がる姿から、不屈の精神を持つという意味合いが持たれていました。また、赤い色は、本来魔除けの意味があり、昔は疱瘡除けとしても祀られていました。
現在では、「七転八起」のことわざからもわかるように、決して倒れないことから豊作や商売繁盛、選挙や合格の祈願など様々なご利益を求めて使われています。
だるまの祈り方をおさらい
それでは、だるまには使い方や祈り方があるのでしょうか。眼入れは、目玉を描き入れる作業ではなく、魂を入れる行為とされています。どちらの目から入れればいいのか、いつ目を入れればいいのか、などの決まりを調べてみましょう。
だるまの眼入れは、厳格なルールはないものの、左目から入れると良いとしている場合が多いです。これは、陰陽道において左が陽で右が陰とされることや、「右に出る者はいない」という言葉があるように左の座席の方が上座とされていることに起因します。
眼の入れ方に決まりはあるのでしょうか。眼の描き方にも決まりはありませんが、昔は内側から外側へと眼入れしていたそうです。また、片目を描いたらもう片目は描き入れないことが多いですが、両目を入れた状態で飾ってもよい、という説もあります。
次に、どこに飾ると良いのでしょうか。昔は、神棚の「向かって右側」に置いていましたが、住居環境が変わった現在は、場所の指定はありません。目につきやすい場所に安置し、時々願い事を思い出すといいといわれています。
だるまの向きについてですが、だるまは本来魔除けの縁起物であることから玄関に向けておくのが良いとの説や、南から東の方角に顔を向けると良いという説があります。
飾っておく期間については、無事に願い事が叶った時もそうでなかった時も1年で交換することが推奨されています。これは、お守りと同じようにご利益は1年間と考えられているからです。その年の家内安全を願うために新年を迎える度に新しいだるまに買い替えたり、願掛けする度に購入しましょう。
だるまの供養の仕方
縁起物であるだるまを、ゴミと一緒に破棄するのは気が引けますよね。願い事を一身に受けてくれただるまは、どのように供養すればよいでしょう。
お焚き上げをしている寺社に返納することをお勧めします。東京都内なら、西新井大師や深大寺などでだるま供養をしてくれます。「だるま供養」や「だるま市」などの時期があるものなので、お寺のホームページをチェックしてからお出かけください。
また、毎年1月に全国の神社で行われる「どんど焼き」に出すことも可能です。こちらの方がより身近な供養方法かもしれませんね。
だるまギフトを贈るときのセレクトポイント
様々な願いの成就を祈ってくれるだるまは、贈り物にもおあつらえ向きでしょう。では、どのようなシーンで、どのようなだるまアイテムを送ればいいでしょうか。
- 受験や試験を控える人へのお守りに
まずは、学業成就。受験や試験を控える人へのお守りとして贈りたいところです。ハンカチやキーホルダーなどの毎日使えるものに取り入れると、目に入りやすく、勇気をもらえることでしょう。また、達磨をかたどったスイーツなら、小腹がすいたときに食べることができて、パワーチャージもできますね。だるまスイーツは、年末年始の手土産にも最適です。
女子学生への学業成就なら、ぬいぐるみを贈ってみてはいかがでしょう?室内に飾ることができ、かわいらしさもあるので、だるまを取り入れやすいはずです。最近は、様々なキャラクターがだるまになったぬいぐるみや雑貨も多いので、探してみてくださいね。贈り相手の好きなキャラクターのだるまバージョンがあったら最高です。
- 商売繁盛を願った開業・開店祝いに
開業・開店祝いにも、だるまはぴったりです。商売繁盛を願いだるまの置物を贈れば、仕事の意欲が湧き上がる贈り物に。大きなだるまで盛大にお祝いしたいところですが、お店のスペースを考慮したサイズがおすすめです。また、飲食店などでは、店内の雰囲気もあるので、贈り相手に確認してから選んだ方がよいでしょう。
- スポーツなど、勝負事の必勝祈願に
勝負事の必勝祈願には、勝負ごとにちなんだアイテムに取り入れてみてはいかがでしょう。スポーツなら、汗拭きに使っていただける手ぬぐいやタオルが実用的です。汗を拭くたびに闘志が燃えるのでは。リストバンドに刺繍してもいいですね。
- 家内安全を願った引っ越し・新築祝いに
引っ越し・新築祝いにも、家内安全を願っただるまはおすすめです。ガラス製のお洒落なものや、デザイン性のあるだるまを贈れば、リビングや玄関に飾れるインテリア雑貨になります。
- 晴れの日を祝う結婚式で
前述の高崎市での結婚式では、披露宴の席札に小さなだるまを使うことがあるそうです。お腹の部分に参列者の名前を書いて席札代わりにすれば、式が終わった後も自宅に飾れる素敵な贈り物になるという、ナイスアイデアな逸品ですね。(写真はイメージです)
余談ですが、折り紙でも簡単にだるまを折ることができます。お子さんと一緒にだるまを折り、新年に飾ってみてはいかがでしょう。また、資格の勉強などをしているお父さんお母さんへ、合格祈願のお守りとして子供から贈られたら、この上ない最高のお守りになることでしょう。
オススメしたい「だるま」ギフト6選
ここからは、具体的にオススメしたい「だるま」ギフトをご紹介します。試験や受験を控える方や開店・開業を心待ちにするご友人への贈り物の参考にしてください。
起き上がり本舗のだるま最中
年末年始の親戚の集まりやお年賀に持参したいのが、だるまをモチーフとしたスイーツ。今回ご紹介するのは、岐阜県に本店を構える「起き上がり本舗」の最中です。
小倉餡をはじめ、抹茶やきんとん餡、大粒栗入りなど種類豊富なだるま最中を味わうことができます。新年から皆でゲンを担いでいるようで、明るい気持ちになるでしょう。縁起がよい和菓子は、ビジネス手土産にも打ってつけです。ご挨拶やお礼としてお贈りしてもいいですね。
ミッフィーちゃんのぬいぐるみ
合格祈願として女子学生に贈りたいのが、ミッフィーちゃんがだるまに扮したぬいぐるみです。
ミッフィーちゃんのモチーフ・うさぎもまた、平和・温順のお守りといわれ、悪運から免れる力があるともされる縁起物。悪運を遠ざけ、合格を引き寄せてくれそうです。部屋に飾りたくなる見た目とサイズ感で、可愛く合格祈願の気持ちを伝えましょう。
また、ちょっとした結婚祝いや引越し祝いにも最適です。紅白ペアのぬいぐるみで、めでたさも倍増。コンパクトサイズなので、玄関やリビングに飾って楽しんでいただきましょう。
少林山達磨寺のだるまの置物
開業・開店祝いには、少林山達磨寺で祈願をした特別なだるまはいかがでしょう。御札が背面に貼られ、祈願した証である祈願証明も一緒に渡してもらえます。
群馬県高崎市の少林山達磨寺にお参りしました。
だるますごい。
語彙力無いけど、それしか出てこない迫力でした。 pic.twitter.com/S2klDYXFsC— snownuts (@snownutss) April 12, 2021
寸法6cmの3分~寸法12cmの1丸サイズは、多彩な色味から選べます。鮮やかに塗られたコンパクトサイズのだるまは、複数個並べても見栄えしますね。金文字で願い事や「福入」と書かれただるまは、学業やビジネスの目標を掲げてくれているようで、力強さを感じることでしょう。
奈良県産の蚊帳生地ふきん
退職や異動時のお礼にぴったりなのが、ふきん。お手拭きや食器拭き、デスク周りの台拭きなどに使うことができ、どなたにとっても重宝します。
生地は、吸水性・吸湿性のよさが特徴の奈良県産蚊帳生地。赤いドットに紛れただるまが、陰ながら贈り相手の幸福を願っているようです。
福猫だるまの箸置き
お正月には、1年の家内安全を箸置きで祈願してみてはいかがでしょう。ご紹介の箸置きは、雑貨メーカー「コンコンブル」の箸置き。
可愛いネコがだるまに扮しており、新年早々に和やかな気持ちにさせてくれます。猫好きさんへの誕生日プレゼントにしてもいいですね。
少林山達磨寺のオリジナル鉛筆
試験を控える受験生には、少林寺達磨寺オリジナルの五角形の鉛筆を贈りたいところ。マークシート式の試験では、鉛筆が重宝するものです。合格にかけた五角形の鉛筆は金色で神々しい1本。だるまの消しゴムはペンケースに入れてお守り代わりに持ち歩きたくなります。
- だるまは大切な人を想った贈りもの
人それぞれの願い事を一身に抱え、成就の日を待つだるまは、大切な人を想って選ぶのにふさわしい贈り物だということがわかりました。
強面でいかつい印象を持たれがちなだるまも、様々なカラーをまとったりキャラクターとコラボレーションすることで、とっつきやすい縁起物になりますね。皆さんも、祝い事や勝負事などのイベント時は、だるまギフトを贈ってみてください。