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贈答マナー

お見舞いに来てくれた人に感謝を伝える、「快気祝い」の贈答マナー

お見舞いに来てくれた人に感謝を伝える、「快気祝い」の贈答マナー

ケガや病気で入院していた人にとって、退院は心の底から嬉しいもの。予断を許さない状況であっても、ひとまずはホッと安心できる瞬間です。喜ばしい出来事があったらお裾分け。入院中にお見舞いに来てくれた人達に、退院の報告を兼ねて「快気祝い」を贈ってみてはいかがでしょう。

快気祝いマナー

お見舞いをもらうと、大切に想われている気持ちが伝わるとともに、健康であることや人との繋がりの大切さが身にしみることでしょう。感謝を伝えたいときに忘れてはいけないのが、贈り物の選び方や渡し方のマナー。ここでは、そんな快気祝いの贈答マナーについてご紹介します。

間違いやすい快気祝いの意味とは

快気祝いはよく退院祝いと混同しがちですが、病気やケガで入院していて退院した人や、療養していて回復した人から贈るもの。特に、病院や自宅にお見舞いに来てくれたり、お見舞い品を贈ってもらった人に対して、感謝やお礼のお返しをすることが快気祝いです。

お見舞い

快気祝いの由来は、周囲の人と全快を祝うために、普段からお世話になっている人に赤飯や紅白餅などを贈る習慣から来ているといいます。現代では、病気やケガを心配してくれた人への全快や一区切りの経過を報告する手段としても使われるようになりました。

お祝い

快気祝いには、同じような意味合いで使われる様々な呼び方があります。たとえば、全快祝いや快気内祝い、御見舞御礼、退院祝いなど。間違いやすい言葉がいくつかありますが、それぞれに意味合いが異なるため、特に熨斗書きなどでは注意が必要です。

全快祝い(ぜんかいいわい)

全快祝いとは、快気祝いとほぼ同じ意味合いで使われます。快気祝いと同じように、入院や療養をしていた人から、お見舞いに来てくれた人やお世話になった人に対して、お礼と報告を兼ねて贈る手紙やギフトのことです。

全快祝い

ただし、快気祝いは病気やケガが完治した場合から、退院後も通院していたり自宅療養を続ける状況にまで、広義の意味で使われます。一方で、全快祝いはその言葉の通り、病気やケガが完治した全快状態でのみ限定的に使われるので注意しましょう。

快気内祝い(かいきうちいわい)

快気内祝いとは、退院はしたものの全快には至らず、通院・自宅療養・リハビリを続ける場合で限定的に使われます。用途としては快気祝いや全快祝いとほぼ同じで、お見舞いに来てくれた人やお世話になった人に、お礼と経過報告を伝える手段です。

快気内祝い

内祝いという言葉は、現代でこそ「お返し」の意味で使われますが、本来は「身内のお祝いを近しい人と分かち合う」という意味合いがあります。つまり、快気内祝いはまだ予断を許さない状況であるが故に、快気祝いよりも内々で行なうものというニュアンスが元々はあります。

御見舞御礼(おみまいおんれい)

御見舞御礼とは、快気内祝いとほぼ同じ意味合いで使われます。退院後も通院・自宅療養・リハビリを続ける状況だけでなく、しばらく入院が長引きそうな場合でも、入院中お見舞いに来てくれた人などに対して、ひとまずのお礼と経過報告を伝える手段として用いられています。

御見舞御礼

とても悲しいことですが、入院していた人が闘病の末に亡くなってしまった場合にも、故人に代わって親族が御見舞御礼を贈ることがあります。快気祝いは「回復の報告やお礼」という意味合いがあるため適していませんが、生前の対応への感謝を込めて、御見舞御礼を弔事包装で贈ることが一般化しています。

退院祝い(たいいんいわい)

退院祝いとは、上記の快気祝いとは異なり、入院していた人の家族や友人が、病気やケガをした人の退院を祝って贈るものです。特に、全快で退院したお祝いというよりも、退院後も通院や自宅療養を続ける場合や、お見舞いに行けず退院を迎えた場合に多く使われます。

退院祝い

一般的には、入院中にお見舞いを贈った場合、退院後に本人から快気祝いという形でお返しがあるため、改めて退院祝いを贈る必要はありません。ただし、入院期間が思いのほか長くなったり、通院や自宅療養でこれからも闘病が続く状況など、ひとまずの退院をお祝いしたいケースでは改めて贈ることもあります。

快気祝いを渡すタイミングはいつが良いか

退院は本人や家族だけでなく、心配してお見舞いに来てくれた人にとっても待ちに待った喜ばしい出来事。回復を待ちわびる人に対して、一刻も早く退院の報告をしたいものですよね。それでは、快気祝いを渡すタイミングや時期はいつが良いのでしょうか?

渡すタイミング

一般的には、退院後1週間から10日の間、遅くとも1ヵ月以内に、退院の報告を添えた挨拶状(お礼状)と快気祝いの品物を贈ることがマナーといわれています。ただし、退院後も体調が思わしくない状況であれば、その旨を記して回復の兆しが見えたところで贈っても良いでしょう。

日柄にこだわって渡す日を決める?

日本では、お祝い事を行なうときに、日にちの吉凶を占う指標である「六曜」を意識する習慣があります。六曜には、大安、仏滅、先勝、友引、先負、赤口の6つがあり、「日」としての吉凶に加えて「時間帯」の吉凶も存在しています。

六曜

「大安」は聴こえが良く、やってはいけないことが何もない日といわれています。安全で無害という保守的な面があるため、無難といったところでしょうか。全てが消滅する日(正午のみ吉)といわれる「赤口」や、物事が終わる日といわれる「仏滅」は、言わずもがな避ける傾向にあります。

大安

結婚式としては最適といわれる「友引」は、友人を引き込む日といわれるため、友人を自宅に招いてお祝いや報告会をしたい場合には適しているかもしれません。「先勝」は、先まわりして行動すると良い日のことで、午前中であれば吉のようです。対する「先負」は、何事も起こらないよう無難に過ごすことが良いとされています。

友引

無理に大安や先勝にこだわる必要はなく、基本的には退院した本人が快気祝いを贈ることのできるタイミングであったり、相手との予定を合わせた日に贈ることが一般的です。ただ、日本古来の習わしに従って縁起を担いだり、ちょっとしたイベント感を出すなら「六曜」を気にしてみても良いかもしれません。

快気祝いで注意すべきタイミング

地域によっては、三月に渡ると終始苦労が身に付くと考えられ、「三月掛け」が仏事と同じくらい縁起が悪いという謂れがあります。もちろん、贈り物は遅くなりすぎるとその効果を失ってしまうため、快気祝いも退院後から3ヶ月を過ぎてしまわないようにすることが、当然の配慮といわれています。

三月掛け

また、お盆月に快気祝いを贈ることは、関係のない行事なので基本的には意識する必要はありません。ただし、お祝い事と仏事は別々にすることが望ましいため、可能であれば快気祝いを贈る時期が「お盆」や「お彼岸」と被らないよう、8月13日~15日を避けるなど配慮することが無難です。

お盆月

快気祝いを贈る相手方に不幸があり、喪中であれば特に注意が必要です。一般的に、人が亡くなってから四十九日の法要(忌明け法要)を終えるまでは忌中の期間と呼ばれ、お祝い事や宴会などを避けることが故人とその家族への最低限の配慮となります。

快気祝いの品物の金額相場

前述の通り、快気祝いはお見舞いに対する「お返し」という意味合いが込められています。日本の贈答習慣では、お返しの金額帯は「半返し」と呼ばれ、いただいた金額の3分の1~半額程度が相場(金額の目安)という一般的なマナーがあります。

金額相場

特に、いただいた金額以上のお返しをすることは、逆に失礼と受け取られてしまう可能性があるため、高額な返礼品を贈ることは避けます。職場や取引先の会社から連名でお見舞いをもらったりした場合には、ささやかながらも個包装などで、全員に行き渡るよう人数分を用意しましょう。

快気祝いの選び方と避けるべきもの(タブー)

快気祝いの品物を選ぶときは、相手との関係性に気をつけるようにしましょう。どういった贈り物でも共通の配慮ですが、好みが分かれるものは避けるべきで、家族や特に親交が深い人でなければ注意が必要です。関係性が浅い人に身につけるものは不向きで、距離感を詰め過ぎないようにしましょう。

快気祝いの選び方

ゲンを担ぐ意味では、病気やケガが後に残らないように「消えもの」と呼ばれる食べ物や日用品などの消耗品を贈ることが定番となっています。食べ物なら、チョコレートやクッキーなどの日持ちするスイーツ(菓子折り)が採用されがちですが、せんべいなどの甘くない和菓子、季節感のある果物やジュースなど好みに左右されないものがおすすめです。

大抵の人が受け入れやすいものだとコーヒーや紅茶が定番で、日本茶は香典返しでよく用いられるため避ける傾向があります。冷凍できて子供のいる家庭には、アイスや冷凍スープも喜ばれそうです。お肉やお酒は定番のギフトですが、自分が病気などで入院していたのに刺激物を贈るのは、何だか相応しくない気がします。

コーヒーや紅茶

食べ物以外なら入浴剤や石鹸、タオルなどバスグッズを贈ると、病を水に流すなんて、洒落をきかせた意味合いを持たせることができます。贈り相手が女性なら、化粧品や感謝の花言葉を込めたピンクのバラやガーベラなどお花を贈ってみても素敵ですよね。

タオルなどバスグッズ

若い人に対して現代風のお返しギフトを選ぶなら、LINEでスターバックスなどの商品券を贈れるe-Giftや、amazonギフトカードがおすすめです。クオカードや図書カードを贈ることの多かった時代が懐かしいものです。相手が夫婦なら、ふたりで使えるカタログギフトや体験ギフトも近年人気を集めています。

カタログギフトや体験ギフト

快気祝いに避けるべきもの(タブー)と言われるものには、「病床」を連想させるパジャマや寝具、「寝付く(根付く)」を連想させる鉢植えの花や観葉植物などがあります。また、ギフト全般として「縁を切る」ことを連想する刃物、「履みつける」ことをイメージする下着や靴下などは避ける傾向にあったりもします。

快気祝いの品物に掛ける熨斗

快気祝いの品物が決まったら、掛ける熨斗(のし)について考えていきましょう。快気祝いは、病気やケガが回復したお祝いであるため、一度きりでよいという意味を込めて「紅白五本の結び切り」を使用します。お祝い事なので熨斗(右上の飾り)は付けますが、全快ではない退院ならば熨斗を付けないこともあります(のしなし)。 紅白五本の結び切り

熨斗シールはカジュアルシーンで使われるため避け、既に熨斗と水引きが印刷された「のし紙」か、贈答品の名目(表書き)がプリントされた「短冊のし」を使用しましょう。また、快気祝いは回復の喜びをお裾分けすることが本来の意味ですので、熨斗が目立つ外のしではなく、熨斗を包装紙で包む控えめな「内のし」を選びます。 内のし

のし紙の上段には、表書きと呼ばれる贈答品の名目を記入します。全快で退院した場合には「快気祝」と書きます(全快祝でも良いですがあまり使われていません)。全快ではない状態であれば「快気内祝」か「御見舞御礼」とし、前者は四文字を避けて「快気之内祝」と書く場合もあります(退院内祝でも良いですがあまり使われていません)。

快気祝いの熨斗

とても悲しいことですが、入院していた人が闘病の末に亡くなってしまった場合、表書きは「御見舞御礼」とします。この場合の水引きは「白黒の結び切り」とし、お悔みとお礼を兼ねて贈ります。

御見舞御礼

のし紙の下段には、名入れと呼ばれる贈り主の名前を記入します。一般的には退院した本人の「苗字」を記入しますが、名前も含めたフルネームで書くことも間違いではありません。また、名入れに会社名や肩書きを添えたい場合は、名前の右側に小さく書きましょう。

快気祝いの渡し方マナー

最後に、快気祝いの渡し方や送り方について考えていきましょう。旧来は、贈り物をするときは直接出向いて手渡しが慣例でしたが、本人が全快状態ではなかったり、相手が遠方に住んでいる場合があるため、郵送で贈っても問題ありません。

快気祝いの渡し方

相手の自宅に訪問する場合には、事前に相手の都合の良い日時をうかがって、品物を持参します。正式なマナーとしては風呂敷に包みますが、紙袋に入れて持参しても構いません。渡すときは、部屋に通されてから、必ず品物を紙袋(風呂敷)から取り出して渡します。相手の正面に熨斗が向くように回して、両手で渡すようにしましょう。

自宅に訪問

直接会うのであれば感謝の言葉や退院の報告を添えて渡し、郵送であればメッセージカードや便箋など添え状にその旨を記載して贈ります。より礼儀を尽くしたお礼がしたい場合は、挨拶状(お礼状)という形で事前に手紙だけを送り、追って快気祝いの品物を送ると良いでしょう。

河野 ひろこ

河野 ひろこ

ギフトコンシェルジュ/コンテンツライター/縁起物アドバイザー。看護師時代に培ったホスピタリティを活かし、贈り相手の「人となり」を想像したプレゼントの見立てを得意とする。子育てに奮闘しながらも、週に1回以上の東京まち歩きとショップ巡りがライフワーク。

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