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ジュエリーギフトの中でも、特に利用シーンの広い宝石ジャンルが「誕生石」ではないでしょうか。自分の誕生石を身につけることで幸運を呼ぶともいわれることから、そして流行にとらわれることなく愛用できるという点で、誕生石は長年親しまれている宝石です。
誕生石は、それだけでスピリチュアルな魅力を放ちますが、それぞれの宝石自体にも意味(石言葉)をもっています。誕生石を贈るシーンにおいて、その石言葉を披露してみたのならば、ギフトのストーリー性をさらに高めてくれることでしょう。ここでは、世界各国で種類が異なるという誕生石の中で、日本における誕生石とその石言葉、それぞれの宝石の特徴についてご紹介します。
誕生石(12ヶ月)の起源と由来
美しく身を飾るアクセサリー(装身具)は、太古の昔から世界中の民族で親しまれてきたといいます。その経緯は諸説あるものの、輝きを放つ物質で闇に潜む邪悪なものから身を守るためや、他者との差異化、単に美しいものをまとう遊び心から来ているという説などが有力視されています。
アクセサリーを身につける習慣が始まった当初、野花や動物の羽・牙・角などが中心だった装身具も、鉱物の中でとりわけ美しい宝石に段々とスポットライトが当てられていきます。そして、文明が栄えてくるとともに社会的な階級が生じ、支配層が権威を示すため、または支配者が代理して神を飾るために、宝石(ジュエリー)を利用するようになったといいます。
宝石自体に意味(石言葉)が付けられるようになった由来としては、誕生石がきっかけだともいわれています。誕生石の起源は、紀元前13世紀に成立したといわれる旧約聖書の「出エジプト記」にまで遡ります。書物の序章では、神に仕えるユダヤ教の大祭司が、美しい胸当てを付けているシーンにフォーカスされています。この胸当てに埋め込まれた「12個の宝石」には、12人のイスラエルの子孫たちの名が刻まれていて、それぞれの部族を象徴する役割があったといわれています。
12個の宝石の種類は、ルビー(赤めのう)、トパーズ、エメラルド、トルコ玉、サファイヤ、ダイヤモンド、ヒヤシンス石(オパール)、めのう、紫水晶、緑柱石(藍玉)、しまめのう、碧玉。これらが12の月にちなむ誕生石の起源とされ、その後も諸々の書物によって、様々な宝石に意味付けがされていくことになります。
生まれ月を表す誕生石としては、18世紀にポーランドの宝石商によって定義されたという記録があり、1912年にアメリカの宝石小売商組合が開催した米国宝石組合大会で統一されました。世界各地で手に入りやすい宝石が異なることから、1937年にはイギリスの貴金属商組合が独自に誕生石を選定、日本でも1958年に全国宝石商組合が日本としての誕生石を定めました。
1月の誕生石:ガーネット
ガーネット新年の始まりであるとともに、清々しい気持ちにさせてくれる1月。1月の誕生石は、ガーネットです。代表的な石言葉は、「真実」、「友愛」、「忠実」の意味合いをもつことが知られています。ガーネットといえば濃い赤色を連想しますが、結晶成分の混ざり合いが複雑で、成分の種類や含有量の違いから40種類以上もの色があり、また蛍光灯と自然光で色合いが変わるカラーチェンジも存在します。
ガーネットはラテン語の “ざくろ” を意味するグラナトゥムに由来し、日本でも柘榴石と呼ばれています。ガーネットを身につけると永遠の友情と信頼をもたらすといわれ、また己の身を守ってくれると伝えられています。赤のガーネットは数千年の歴史を持ち、エジプトではすでに紀元前3100年にガーネットのビーズと象眼のジュエリーが広まっていました。ガーネットは赤系統のものが多いのですが、橙、黄、緑など、青を除いてさまざまな色があります。
諏訪恭一『決定版 宝石 – 品質の見分け方と価値の判断のために』世界文化社、2013年、p.118,120より引用
2月の誕生石:アメシスト
アメシスト恋が華やぐバレンタインデーを控え、そわそわとしたムードが漂う2月。誕生石は、アメシスト[紫水晶]です。代表的な石言葉は、「誠実」、「心の平和」。ギリシャ神話では、美しい女官アメシストが透明な石に化身した際、酒の神バッカスが葡萄酒を注いだことで紫色に染まり、魅惑の宝石になったという伝説があります。
アメシスト(アメジスト)は古代ギリシャでは “酒に酔わない” お守りとされていました。エジプトでは、紀元前3100年ごろにビーズ、魔除け、印鑑などにアメシストが用いられていきました。古代ギリシャ・ローマ時代にも貴重な宝石として重んじられ、中世には王冠や大司教の指輪に飾られました。和名の “紫水晶” からもわかるように、アメシストは紫色の水晶で、水晶の中では一番高価な宝石といえます。
諏訪恭一『決定版 宝石 – 品質の見分け方と価値の判断のために』世界文化社、2013年、p.158より引用
3月の誕生石:アクアマリン
アクアマリン桜の便りもチラホラ聞こえ始め、爽やかな温かさを感じ始める3月。3月の誕生石は、アクアマリン[藍玉]、ブラッドストーン[血玉]、コーラル[珊瑚]です。代表的な石言葉としては、「沈着」、「勇敢」、「聡明」の意味合いをもつことが知られています。アクアマリンは、水の星座である魚座の人が身につけると、その力がいっそう効果を増すといわれています。
アクアマリンは今からおよそ2000年前にローマ人によって名づけられ、その語源はラテン語で “水” を表すアクアと “海” を表すマリンから来ています。船乗りを守り良い旅を約束するといわれ、また激情を和らげ、これを身につけると沈着冷静になれるともいわれています。アクアマリンは清楚な雰囲気を持った宝石として、多くの人々に好まれています。色みが涼を呼ぶので、春から夏にかけて身につけられることが多い宝石です。
諏訪恭一『決定版 宝石 – 品質の見分け方と価値の判断のために』世界文化社、2013年、p.50より引用
4月の誕生石:ダイヤモンド
ダイヤモンド春の陽気に後押しされ、入園・入学・就職など季節のイベントが盛り沢山な4月。4月の誕生石は、ダイヤモンド[金剛石]です。代表的な石言葉としては、「清純無垢」、「不滅」、「恋の勇気」の意味合いをもつことが知られています。ダイヤモンドは地球上で最も硬い宝石として、古来から揺るぎない人気を誇っています。
ダイヤモンドという言葉は、ギリシャ語のアダマス(”征服されざる” の意)が語源です。インドでは紀元前800年にはすでにお守りとして尊ばれ、価値あるものだったようです。非常に稀なのですが、ダイヤモンドにはピンク、オレンジ、イエロー(カナリヤ色)、グリーン、ブルー、パープルのものが存在します。自然からの贈り物、あの美しい輝きを身につけると心が純粋に、そして安らかになるといわれています。
諏訪恭一『決定版 宝石 – 品質の見分け方と価値の判断のために』世界文化社、2013年、p.14,38より引用
5月の誕生石:エメラルド
エメラルド清々しい五月晴れが澄みわたり、子供の日や母の日など家族のイベントが多い5月。5月の誕生石は、エメラルド[翠玉]、ジェイダイト[翡翠]です。代表的な石言葉としては、「幸運」、「幸福」の意味合いをもつことが知られています。エメラルドは、キズのないものを探すことが難しいといわれるほど、天然宝石の証であるインクルージョン(内包物)が特徴的な宝石です。
エメラルドは数千年の長い歴史を持つ宝石で、ギリシャ語のスマラグドスから名づけられました。1818年にその所在が確認された伝説のクレオパトラ鉱山(エジプト)では、古来、淡い半透明の品質のエメラルドを産出していたといわれています。厄災から身を守るともいわれ、歴史的にもたいへん古くもっとも価値のある宝石の一つです。心をおだやかにする美しいグリーンが神秘的です。
諏訪恭一『決定版 宝石 – 品質の見分け方と価値の判断のために』世界文化社、2013年、p.54より引用
6月の誕生石:ムーンストーン
ムーンストーン湿潤な雨の中でアジサイが咲き乱れ、鮮やかな美しさを感じる6月。6月の誕生石は、ムーンストーン[月長石]、パール[真珠]です。代表的な石言葉としては、「健康」、「富」、「長寿」、「純粋無垢」の意味合いをもつことが知られています。ムーンストーンは、乳白色の淡い色味が特徴的で、神秘的な輝きが魅力の宝石です。
昔インドでは、ムーンストーンは月の光を凝固したものだと信じられていました。ムーンストーンは幸運をもたらし、満月に口にくわえると自分の将来がわかるといわれていました。ペリドットとともにアンティークジュエリーに非常によく使われている素材で、夏にふさわしい美しく魅力のある宝石です。ムーンストーンの地色は無色、グレイがかったブルー、わずかにブルーのかかったグリーン、黄色みのグリーン、淡いオレンジ、オレンジがかったブラウンなど多様です。
諏訪恭一『決定版 宝石 – 品質の見分け方と価値の判断のために』世界文化社、2013年、p.150,152より引用
7月の誕生石:ルビー
ルビー爽やかな梅雨明けを迎え、忘れていた夏の暑さを思い出す7月。7月の誕生石は、ルビー[紅玉]です。代表的な石言葉としては、「熱情」、「仁愛」、「威厳」の意味合いをもつことが知られています。ルビーは、ダイヤモンドの次に硬度のある宝石で知られ、キズが付きにくい貴重なジュエルとして愛されてきました。
ルビーの語源は、ラテン語で赤を意味するルベウスです。1800年以前はレッドスピネルも赤系統のガーネットも含めて、赤い宝石はルビーと呼ばれていました。結晶そのものが美しいルビーは非常に少ないのですが、古くからその需要を満たすために、結晶に熱を加えて黒みや青みを取り除き、美しさを引き出す処理が行われてきました
諏訪恭一『決定版 宝石 – 品質の見分け方と価値の判断のために』世界文化社、2013年、p.78,82より引用
8月の誕生石:ペリドット
ペリドット夏の猛暑が本格化し、ご先祖様の帰りを出迎えるお盆の8月。日本における8月の誕生石は、ペリドット[橄欖石]、サードニクス[赤縞瑪瑙]です。代表的な石言葉としては、「夫婦の幸福」、「和合」の意味合いをもつことが知られています。ペリドットは、地球の奥深い場所で結晶化するため、地球や宇宙の成り立ちを解明する石として研究対象にもされていました。
オリビンという鉱物があります。その中にオリーブの実のような黄色と褐色を混ぜたグリーンの宝石があり、中でも貴重なものをペリドットと呼んでいます。ドイツのドレスデンの “緑の丸天井” の宝飾品展示室には、大粒のペリドットがはめ込まれた剣や杖が、ダイヤモンド、サファイヤ、ルビー、エメラルドと肩を並べています。ヨーロッパではこの宝石を身につけると雄弁になるといわれています。
諏訪恭一『決定版 宝石 – 品質の見分け方と価値の判断のために』世界文化社、2013年、p.154より引用
9月の誕生石:サファイヤ
サファイヤ夏の終わりに差し掛かりながらも、残暑が厳しい初秋の9月。9月の誕生石は、サファイヤ[青玉]です。代表的な石言葉としては、「慈愛」、「誠実」、「徳望」の意味合いをもつことが知られています。サファイヤは、その指輪をはめた手で人に触れると、病を癒して悩みから救うといわれています。
サファイヤという言葉はラテン語で青を意味し、中世まではサファイヤといえばラピス・ラズリのことでした。サファイヤは紀元前7世紀以降、ギリシャ、エジプト、ローマでジュエリーとして使われ、中世には広くヨーロッパの王たちに好まれた宝石です。サファイヤを身につけると真実を語る人になるといわれています。ブルーの宝石は誠実を呼び起こす力があるようです。
諏訪恭一『決定版 宝石 – 品質の見分け方と価値の判断のために』世界文化社、2013年、p.98より引用
10月の誕生石:オパール
オパール秋が深まりゆく頃合いとなり、肌寒さを感じるようになる10月。10月の誕生石は、オパール[蛋白石]、トルマリン[電気石]です。代表的な石言葉としては、「歓喜」、「安楽」、「忍耐」の意味合いをもつことが知られています。オパールは、クレオパトラに一目惚れしたシーザーが心を射止めるために贈ったとされ、キューピットストーンとも呼ばれています。
オパールは貴石を意味するラテン語のオパルスに由来し、古代ローマ人はオパールを愛と希望の宝石と考えていました。ローマの詩人プリニウスはオパールを、ルビーの燃えるような赤、エメラルドの素晴らしい緑、トパーズのゴールデンイエロー、サファイヤの深いブルー、アメシストの豊かな紫が石の中で結合しているようだと表現しています。色の輝きの美しさは身につける人に大きな希望を与えます。
諏訪恭一『決定版 宝石 – 品質の見分け方と価値の判断のために』世界文化社、2013年、p.142より引用
11月の誕生石:トパーズ
ブルートパーズ寒さが本格化して、陽が落ちる早さに冬の到来を感じ取る11月。11月の誕生石は、トパーズ[黄玉]、シトリン[黄水晶]です。代表的な石言葉としては、「友情」、「希望」、「友愛」の意味合いをもつことが知られています。トパーズは、採掘されていた島が深い霧に覆われて見つけにくかったため、ギリシャ語のトパゾス(探し求める)から来ているといわれています。
トパーズは古代エジプト、ローマ時代から知られていました。1883年にアメシストを加熱すると美しいイエローのシトリンに変化することが判明し、これがトパーズでないにもかかわらず「ゴールデン・トパーズ」と呼ばれて大量に出まわり、市場は一時混乱しました。トパーズは黄色のほか、無色、淡いブルー、グリーン、ピンクなどが見られ、まれに赤を産出することもあります。
諏訪恭一『決定版 宝石 – 品質の見分け方と価値の判断のために』世界文化社、2013年、p.170,174より引用
12月の誕生石:ターコイズ
ターコイズ忙しさと歳末の高揚感から、じっとしていても慌ただしさを感じてしまう12月。12月の誕生石は、ターコイズ[トルコ石]、タンザナイト[黝簾石]、ラピスラズリ[瑠璃]です。代表的な石言葉としては、「成功」の意味合いをもつことが知られています。ターコイズは、インディアンが邪悪なものから身を守るお守りとして使っていたことで有名です。
トルコ石の歴史は古く、メソポタミア(現在のイラク)では紀元前約5000年のトルコ石のビーズが発見されています。13世紀まではトルコ石という名称は使われず、美しい石を意味する “カレース” という名で呼ばれていたようです。その後、このブルーの石がベニスの商人たちを通じてフランスに渡った際、フランスの買い手たちが “トルコの石” と呼んだことから、トルコ石という名称が一般化していきました。
諏訪恭一『決定版 宝石 – 品質の見分け方と価値の判断のために』世界文化社、2013年、p.202より引用