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子どもの頃、めくるめく物語にワクワクしたり涙したり、時間を忘れて夜更けまで読書に没頭した、そういった経験はありませんか? 頭の中で広がっていく自分だけの世界に浸り、それを絵にしたり、時には秘密基地なんかを作ったりと、本から現実の世界に行動が広がっていったことは、懐かしくも楽しい思い出です。
1冊の本を読んでいても、それぞれの感性によって、人物像や着眼点が異なるのだから不思議です。本から感じたことや学んだことが、今の自分を少なからず形成していることも然り。人生経験を積んでいく中で「こういう意味だったのか」と、後から気付くことや捉え方が変わることもあるため、本はいつだって感性をくすぐってくれるものだと感じます。
そんな楽しくも深い学びの体験を、子どもたちにもたくさん経験させてあげませんか? 大人がその子を想って選んだ本は、子どもの心を育む一生の財産となることでしょう。誕生日や進学・進級祝いはもちろんのこと、新しくお母さんとなる友達への出産祝いにプレゼントしてみても、相手の心に長く残りつづける贈りものとなるでしょう。
子どものためのブックショップ「ちえの木の実」
子どものためのセレクト・ブックショップ「ちえの木の実」は、恵比寿西一丁目の五差路を、渋谷方面にまっすぐ進んだロケーションにあります。「ご近所さんでも意外と知らない人が多い」という店舗は、大自然をオマージュして作られていて、まるで温かな灯りがこぼれる森の小さな隠れ家のようです。
一生の友達になるような本と出会える場所を作りたい、そんな想いからオープンしたという同店。店名になっている「ちえの木の実」とは、本のことを指しているのだといいます。本は「知恵」という名の「木」に
1万冊もの本が、ずらりと並ぶ専門店
「ちえの木の実」の店内には、子どもの成長を願いながら丁寧に選ばれた本たちが、床から天井まで、壁一面にずらりと並びます。その数、なんと約1万冊。子どもの興味を引くためにセレクトされた様々なジャンルの本たちは、同店でどのように選ばれているのでしょうか。
選書コンセプトは、親が子どもに読ませたい本
本の世界にも、ファストフードではなくスローフードのようなお母さんがつくる体に優しいおやつや新鮮な果物のような、ココロとアタマの栄養になるような本を--
「ちえの木の実」では、この選書コンセプトに基づいて、”いま売れている本” ではなく、”親が子どもに読ませたい本”、そして “親が子どもに好きになってほしい本” が厳選されています。
国内外を問わず、数十年ものあいだ読み継がれているクラシック作品から、最新刊まで。漫画・学習参考書を除いた、あらゆるジャンルの中から、子どもに好きになってほしい本だけが選ばれています。在庫にはロングセラーの本が多く、親子三代で懐かしむ本も多く揃うというのだから、家族みんなで足を運んでみても楽しい時間を過ごせるはずです。
「本」を「ギフト」で贈ることの魅力とは
優しい言葉、勇気づけられる言葉、背筋が凍るような言葉・・・・・・。本には、たくさんの言葉が散りばめられています。言葉をたくさん知っていると、それだけで自分の気持ちを表現するパーツが増えていき、コミュニケーションもより楽しくなります。また、同じ内容でも作者によって表現が違うため、本を読むたび新しい言葉に出会えることが、ブックギフトの大きな魅力だと感じます。
ブックギフトを選ぶときのポイント
約1万冊もの在庫の中から、贈り相手にぴったりな一冊を探し出すことは、本好きであっても至難の業。お客様の本選びにも積極的に関わる「ちえの木の実」スタッフは、どのように人と本をマッチングさせているのでしょう。
スタッフコメント
何歳の子には “これ” という薦め方はしておらず、性格や好き嫌い、日常のエピソードをとことん聞いた上で、贈り相手に気に入ってもらえそうな本をセレクトすることを大切にしています。2人目のお子さんなら、お持ちの本を選ばないようにしたり、絵本が好きな子どもなら、他店には無いような本にしたり、チョイスに悩むことは多いものの、最もやりがいを感じます。
「ちえの木の実」に来店するお客様は、どなたも贈り物ひとつにじっくりと時間をかけ、1時間以上悩む人もいるのだとか。「あらかじめ予算や冊数を決めていても、実際に選ぶと変わってきたりします。ちょっとでもお力になりたいので、気軽にご相談いただけると嬉しいです」と笑顔で話す、店長の比留間氏。絵本のことをよく知らない人も、安心して本ギフトを選ぶことができるので、とても頼りになります。
ギフトラッピングでワクワク魅せる
「ちえの木の実」では、包装紙とOPP袋の2種類から選べる、無料のギフトラッピングが用意されています。受け取ったときの高揚感や、どんなものが入っているのだろうと想像を膨らませる時間の「ワクワクする気持ち」を提供できるように、心を込めてラッピングしてくれます。ギフトの魅せ方も、臨機応変に対応してくれるので、贈る側も贈る楽しみが生まれます。
おもちゃと組み合わせて、オリジナルのギフトに
「ちえの木の実」の店舗では、本だけでなく画材や木製玩具、パペット人形などのアイテムも取り扱っています。本とおもちゃを組み合わせて、あなただけのオリジナルギフトを作ってみてはいかがでしょう。
店舗で取り扱う、おもちゃのセレクト基準
「ちえの木の実」で取り扱うおもちゃは、楽しんでもらえるもの、良質でずっと子どもたちの手元に残るもの、という2つの基準で選ばれています。木製のおもちゃを多く取り扱うため、プラスチック製品では感じられない温もりを手に取って楽しむことができます。
また、同店でセレクトされたおもちゃは作り込まれ過ぎておらず、遊び方が決められているものが少ないため、子どもたちが自分で遊びを考えていくものが選ばれていると感じます。そこには、絵本で自分の世界を広げていくのと同じように、おもちゃなどを使って、子ども自身の世界を広げて欲しいという想いが込められているのだといいます。
幼児期の子に「おうち型の積木」
たくさんのパーツで作られた「おうち型の積木」は、自分で遊べるようになった幼児期のお子さんにいかがでしょう。おままごとをしてもいいし、バランスを取りながら積み上げていってもいいし、発想次第で何通りもの遊び方ができます。
出産祝いで活躍「音色が美しい楽器」
スウェーデンにあるアウリス社の楽器。自社工場でひとつひとつ丁寧に楽器を製作していて、音色が非常に美しいことが特徴。グロッケンやシロホンなどは、長い時間をかけて美しいあめ色に変わっていきます。「かごめかごめ」や「メリーさんのひつじ」などを演奏できる「レ・ミ・ソ・ラ・シ」の5音階で、美しいハーモニーを奏でることができます。
お気に入りになる「本と人形のセット」
絵本に出てくるキャラクターの人形も、絵本とセットで贈ったならば、本と現実の世界が繋がったようで楽しい贈り物になります。物語の世界と同じように、いつも一緒に過ごしたくなる “お気に入り” になることでしょう。
「ちえの木の実」スタッフがオススメする本たち
今回の取材では、いくつかテーマを設定し、実際に「ちえの木の実」スタッフにブックセレクトしてもらいました。短時間だったにもかかわらず、各テーマごとに3~5冊ものオススメ本を紹介してもらえたため、その引き出しの多さに思わず脱帽。また、読み聞かせのように本を読みながら説明してもらい、ふと気付くと絵本の世界に引き込まれていくようでした。
作者によって世界観や言葉遣い、表現などがまったく違うことから、「この年齢だからこの本、というのがない」とスタッフが念押しする理由がよくわかります。自分自身でも選びがいはあるけれど1冊に絞り込むのは難しいもので、そんなときこそ「ちえの木の実」スタッフにご相談ください。それでは、各テーマとそれに対するオススメ本をぜひご覧ください。
①子どもとお母さんの気持ちをほぐしてくれる本
選書のためのテーマ設定(贈り相手)
- 生後3〜4か月の女の子がいる家庭
- お母さんは付きっ切りで子育てに熱心
- お父さんは休日に子育てに参加する
- 妊娠中も食生活から自分の身体のことを大事にしていた
- だんだん興味がでてきて絵本を読むのが楽しくなってきた頃
スタッフコメント
絵本と一緒に笑顔を作ったり、生活習慣を学べるような本を選びました。お母さんが子育てを熱心にされていると伺ったので、お母さんがちょっと疲れちゃったときに気持ちをほぐしてあげたいと思い、そんな本も織り交ぜました。
『おかあさんになるってどんなこと』
子どもの目線でお母さんとはなにか、を描いたお話。「こどものなまえをよぶこと」そして「てをつなぐこと」。親にとっては当たり前のことでも、子どもにとっては毎日してもらっている大切なことだと伝えてくれます。ページをめくるたびにほっこりした気持ちが膨らみます。
『おはよう』&『おやすみ』
寝起きのおひさまが、朝の支度をしていく『おはよう』。2匹のわんちゃんが、お布団に入るまでの様子が描かれている『おやすみ』。顔を洗う、歯を磨く、などの生活習慣を楽しく学べる、セットで贈りたい2冊です。お父さんも読みやすく、休日に絵本と一緒に過ごしてみてもいいですね。
ーーなかがわりえこ[作],やまわきゆりこ[絵](1986)『 おはよう 』:グランまま社. ーーなかがわりえこ[作],やまわきゆりこ[絵](1986)『 おやすみ 』:グランまま社.『いいおかお』
女の子といろいろな動物たちが「いいおかお」をする可愛らしい1冊。女の子の「いいおかお」に惹かれてお友達がどんどん増えていきます。お子様も一緒に「いいおかお」したくなる1冊です。
『今日』
「家事をしなきゃ。でも子どもの相手をしていたら進まない・・・・・・」。そんな、ゆとりがなくなった心を溶かしてくれるような、優しい詩です。作者不明のこの詩は、日々奮闘するママさんの心に沁みます。
ーー伊藤比呂美[訳],下田昌克[画](2013)『 今日 』:福音館書店.②子どもの知的好奇心を引き出すような本
選書のためのテーマ設定(贈り相手)
- まだそこまで絵本を見ない赤ちゃん
- 歌や言葉が好き
- 月齢が小さい子に対しての知育
- 楽しいだけじゃなく次の段階の絵本がほしい頃
スタッフコメント
オノマトペ(音の本、『もこもこもこ』、ぱぴぷぺぽ)が刺激となったり、「もっともっと」とお話を聞きたくなるような絵本を選びました。裏表紙まで描いてある絵本が多く、最後のページで次の巻に続くヒントが隠されていたり、「ケンカしているけれど最後は仲良く本を読んでいる」などの発想を広げるカットが入っているので、最後までちゃんと見せてあげるといいですよ。
『じゃあじゃあ びりびり』
見開きごとに、水の音や犬の鳴き声といった身近な音が書いてあります。順番がなく、どこから読んでもいいので、子どもがパッと開いたページを読んであげるとわくわくします。言葉を話せるようになったら「みず!」「じゃーじゃー!」と、一緒に言って楽しむこともできます。1ページ目に「この絵本は○○ちゃんのです」と書くスペースがあり、思い入れのある1冊になりそうです。
『ごぶごぶ ごぼごぼ』&『ぎゅ ぎゅ ぎゅ───』
赤ちゃんは、黄色や丸、柔らかい雰囲気のものが好きなので選びました。音の読み方も自由なので、ドラマチックに読んでもいいし、音楽に合わせて読んでも楽しい。色・形・音で赤ちゃんを刺激してくれます。
『もこ もこもこ』
赤ちゃんにとってダイナミックに映る大判の本。鮮やかな色彩と、ページをめくるたびに少しづつ変化していく様子に、注目です。
③のりもの好きな子どもに薦めたい本
選書のためのテーマ設定(贈り相手)
- 幼稚園に入ったくらいの男の子
- 乗り物が好き
- 三人兄弟の二人目、とても活発
- よく大きな声で歌っている
スタッフコメント
「のりもの」って一言でまとめても身近な物から普段乗らないようなものまであるから悩みましたが、その本を持って、元気いっぱいにお出掛けしたくなるような本を選びました。
『モノレールのたび』
あまり乗ったことがなくて、わくわくするモノレール。上から見た景色が詳細に描かれていて、隈まで眺めたくなる絵本です。海やトンネルなど遠くに出掛けた気持ちになれます。
ーーみねおみつ[作](2014)『 モノレールのたび 』:福音館書店.『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』
バージニア・リー・バートン作のロングセラー。白黒だけど、優しくて味わいがある絵のタッチが魅力的です。上品な言葉遣いで訳されており、力強いイメージの機関車との対比が心地よい一冊です。躍動感のある文字の配列も楽しく読めるポイントです。
『巨大空港』
ダイナミックで外に飛び出しそうなイメージから選んだ1冊です。空港の1日や舞台裏で活躍する人の作業が緻密に描かれており、好奇心をくすぐります。子どもは絵を読むといわれていますが、細かいところまで楽しめそうです。観音開きで大きく広がるページは男の子を興奮させるのでは。
ーー鎌田歩[作](2019)『 巨大空港 』:福音館書店.④小人がキーワード、活字に触れる読みもの
選書のためのテーマ設定(贈り相手)
- 小学校中学年の男の子
- 進級祝いに贈りたい
- 本が好きな子と、活字が苦手な子の2パターン
スタッフコメント
小学4年生くらいになると読書の好き嫌いが分かれてくるので、スポーツなどの楽しい世界も広げていくけれど、「本の世界ならこっち」というジャンルを作ってあげられたらいいなと思います。面白いと感じる本を見つけたら、その作者さんやシリーズもの、同じジャンルの本を次々と読みたくなる子も少なくないので、その子が気になるフックを見つけてあげることで、次の本へと繋げていかれたら。
スタッフコメント
キーワードとしては、「小人」。架空の存在だけれど、どこかにいるかもしれない。その世界を知っていたら、きっと毎日がちょっと楽しくなるのでは、という存在です。「泥棒」や「探偵」も結構男の子は好きです。本に馴染みがなかったとしても、タイトルに興味を惹かれ、まずは読んでみようと思えるものを選びました。
『だれも知らない小さな国』
アイヌに伝わる小さな小人の話。この本に出会ったことがきっかけで小人の話が好きになり、いろんな小人の話に出会ってきたというスタッフの武本さん。幼い頃にこの本(初版)を読んで、葉っぱの裏を覗いてみたこともあるそうです。
『大どろぼうホッツェンプロッツ』
おばあさんのために2人の男の子が立ち上がる物語。ユーモアいっぱいのお話で、読書が苦手な男の子でも楽しく読める名作です。
『だまされたトッケビ』
日本でいう河童や鬼のような、韓国に伝わる伝説の存在「トッケビ」。そんなトッケビに関するいろんなエピソードが詰まった本です。忘れっぽかったり、おっちょこちょいだったりと人間らしい一面に、のめり込める昔話集です。
ーー神谷丹路[編・訳]チョン・スンガク[絵](1999)『 だまされたトッケビ 』:福音館書店.『ルドルフとイッパイアッテナ』
人間の言葉を理解したり、字が書ける猫に親近感がわき、男の子の心をくすぐる1冊です。飼い猫と野良猫の派閥があったり、猫の視点で冒険をしながら人間の世界を覗いていて面白く読めます。
『ほこらの神さま』
男の子3人組が神様の家を拾ってしまうことから始まるお話。「えっ、願い事が叶っちゃうのかな!?」と、わくわくします。自分の日常と似ている中で、ぎょっとした出来事が起こるので、話に入り込みやすいです。
ーー富安陽子[作],小松良佳[絵](2002)『 ほこらの神さま 』:偕成社.子どもの一生の財産になる「本ギフト」を贈ろう
本という「モノ」だけでなく、記憶や知識として子どもの中に残り続ける本ギフトは、子どもの財産となります。贈り相手のお子さんは、「童話」とか「冒険」とか、どんな本が好みでしょう? 贈り相手の好みや年齢、性別などを思い返しながら、一生の友達となる1冊を「ちえの木の実」で探してみてくださいね。