INDEX
① 雑司ヶ谷霊園(ぞうしがやれいえん)
今回の旅のひとつの目的である紅葉を巡るため、まずは「雑司ヶ谷霊園」を訪れます。明治政府によって1874年に開設された公共墓地で、いちょう並木で有名な約12ha(東京ドームの2.5倍)の霊園です。 街歩きをした11月中旬には木々が暖色に色付いていて、天気も快晴、気持ちの良いお散歩が楽しめました。道幅が広く、並んで歩きながら語らうには好都合。谷中霊園のときも感じましたが、墓地って意外とデートスポットにピッタリなのかもしれません。 雑司ヶ谷霊園には、金田一京助、ジョン万次郎、東條英機など有名人のお墓が数多く存在します。雑司が谷未来遺産の巡拝マップに示された夏目漱石の墓所は、霊園のいちょう並木のすぐそば。49歳で永眠した漱石の墓は、変わった形状で高くそびえ他とも一線を画します。幼少期にお世話になった偉人に想いを馳せながら、手を合わせて歩みを進めます。② 日蓮宗 清立院(せいりゅういん)
雑司ヶ谷霊園の管理事務所を横目に、緩やかな坂道を下ると、雑司ヶ谷七福神のひとつ、毘沙門天が祀られる日蓮宗「清立院」が現れます。台地のへりに建てられたであろうお寺には、急こう配な石段をのぼり門をくぐります。お堂の扉を手で開けると、木彫りの毘沙門天を拝むことができます。 清立院は、約770年前から皮膚病や雨乞いの祈願寺として崇められた歴史があり、毘沙門天だけでなく日蓮大聖人や十一面観音の像が設置され、ユニークなものではペット供養塔が併設されています。高台から見渡す景色も爽やかで、早速ご利益を享受できそうな雰囲気を感じました。③ 雑司ケ谷旧宣教師館(きゅうせんきょうしかん)
清立院の前の御嶽坂を雑司ヶ谷霊園に沿ってのぼり、脇道を抜けてゆくと旧宣教師館通りの標識が目に留まります。通りの中腹に位置する邸宅が「雑司ケ谷旧宣教師館(旧マッケーレブ邸)」。東京都の有形文化財に指定された建造物で、明治期にアメリカ人宣教師マッケーレブ氏が建てたかつての外国人住宅です。 旧宣教師館は無料で拝観することができます。入口の鮮やかな松の木が印象的な木造洋風建築。用意されたスリッパを履き中へと進むと、床・天井・窓枠・暖炉など、住宅の至るところから明治時代の雰囲気を感じられます。重厚感がありつつも、大きな窓が抜け感を演出し、室内から趣のある庭を眺める時間にも癒されました。 邸宅内で興味をそそられたのが、明治期の宣教師館周辺模型。雑司ヶ谷霊園を中心とした台地のへり、旧宣教師館の眼前には、今は無き弦巻川(神田川の支流)が流れていることが分かります。坂のこう配には段々畑が広がり、かつての風景を脳裏に映し出しながら時代ロマンを感じることができます。④ 清土鬼子母神堂(せいどきしもじんどう)
旧宣教師館で見た地形図を思い返しながら小路を進み、雑司ヶ谷七福神の吉祥天が鎮座する「清土鬼子母神堂」を訪れます。昼時なら、護国寺の首都高対面側にあるカフェ「コアラとライオンときどきチーター」で、ピザトーストとオリジナルスイーツを味わってみてください。清土鬼子母神堂には、弦巻通りの脇道からと、不忍通りに面した参道から入ることができます。 清土鬼子母神堂は、雑司ヶ谷鬼子母神堂の本尊である鬼子母神像が掘り出された旧跡。ご尊像は境内の井戸の近くで清められたと言われています。コンパクトな敷地内には、この三角形の井戸や本堂の裏手にある蔵など、珍しいものがあり必見。七福神のひとつ、吉祥天にも招福開運の祈りを捧げましょう。⑤ 小倉屋製菓(おぐらやせいか)
清土鬼子母神堂を出て、弦巻通りを鬼子母神の表参道に向かって進む途中、近所に住んでいるという人に「ここの煎餅は美味しいよ」と促され、立ち寄ったお店が「小倉屋製菓」。工場と販売が一体となった煎餅の製造直売所で、雑司が谷で60年以上愛され続けている名物として知られています。 お取り寄せギフトで名を馳せる絶品の煎餅も、小売りで購入できるのがここだけ。鉄板を大きく揺さぶりながら煎餅を焼く昔ながらの製法で、人気の甘からを始めとして16種類の味を楽しめます。直売所の横でじゃらじゃらと心地よい音が響き渡り、職人の手仕事を垣間見れる貴重な機会ともなりました。 こちらでは、えびと柿の種を自宅用に購入。プレーンはもちろん、チーズやわさびなど種類も豊富で、工場直売所限定の徳用ミックスも捨てがたく、店頭で悩んでしまいます。今の時勢柄、お家で晩酌をすることの多い家族や友人への手土産、大晦日やお正月のつまみ菓子としても重宝されています。⑥ ジャングルブックス
弦巻通りをさらに進むと、「占」と書かれた立て看板が気になり入ってみたお店が「JUNGLE BOOKS(ジャングルブックス)」です。古本と雑貨が並べられた店内で占いもできるという、何とも渋いカルチャーがミックスされたユニークな形態。 占い師歴20年・占い歴38年のタナミユキ氏は、テレビや雑誌でも数多く取り上げられる人気の占い師で、タロット占いはもちろんのこと、占いスクールまであるというから驚きです。店内にはオカルト本やパワーストーンのアクセサリーもあり、占い好きにはたまらないはず。⑦ 旅猫雑貨店(たびねこざっかてん)
ジャングルブックスの程近くには、「旅猫雑貨店」というこれまた気になるショップを発見しました。黒猫をイメージキャラクターにした雑貨店で、店主が全国から集めた和雑貨や古本、郷土玩具を販売しています。訪れた時間は閉まっていたものの、外から垣間見える雑貨の数々に興味を引かれます。 扉に貼られた案内によると、昔懐かしの紙芝居を自転車で回り行なっているそうです。そこでは水あめやソースせんべいなどの駄菓子も販売され、昭和情緒の文化が未だに息づく雑司が谷ならではの光景が見れることでしょう。店内では、缶で作った「かんから三線」や懐かしい「ロー石」なども取り扱っています。⑧ 雑司が谷公園(ぞうしがやこうえん)
弦巻通りから鬼子母神表参道を目指す途中には、子供達が走り回ったり家族でピクニックが出来るような「雑司が谷公園」があります。広い敷地内には、旧高田小学校を改装した「丘の上テラス」やその校庭を転用した「多目的広場」がなどがあり、地域の憩いの場として広く活用されているそうです。 丘の上テラスには、お茶を飲んだりお喋りができる広いエントランスホールがあり、「まちの縁側」を目指している施設というのも頷けます。公園内には他にも、噴水に囲まれた水遊びひろばやローラースライダー、小高い丘になっているどんぐり広場などもあり、小さい子供を育てる筆者としては、雑司が谷に住んでみたくなるほど羨ましく感じました。⑨ アルテリア・ベーカリー
鬼子母神表参道に出ると、都電荒川線の踏切前に「おいしいメロンパン」という魅惑の看板を見つけました。こちらが、冷めても次の日でも美味しいと評判のメロンパン専門店「arteria bakery(アルテリア・ベーカリー)」です。甘い香りに誘われて、昼食前にもかかわらず歩みを止めてしまいました。 小腹を満たす軽食として購入したのが、メロンパンのプレーン。さくっとした甘いクッキー生地と、ふんわり膨らんだパンが絶妙で、大変美味しくいただきました。冬季限定でホイップクリームを挟むことあるそうなので、機械があれば是非味わってみてください。⑩ ときわ木
雑司が谷・鬼子母神に訪れたら立ち寄りたい和菓子店が、アルテリア・ベーカリーの対面に位置する「ときわ木」。最中やどら焼き、季節の生菓子など、種類豊富な和菓子が鬼子母神堂の参拝客らを出迎えてくれます。 名物の「子育て最中」は、最中の皮に子育ての守り神であるミミズクが浮き彫りになっていて、子育てママや鬼子母神参りの手土産にぴったり。安産と子育てのご利益で有名な鬼子母神ならではのお土産になります。可愛らしい鬼の子が焼き付けられた「おにどら」も見逃せませんよ。⑪ 鬼子母神大門 けやき並木
鬼子母神表参道と交差する踏切を渡り、都電荒川線の鬼子母神前駅を横目に進むと、西参道と分岐する「けやき並木」があります。鬼子母神大門をくぐると広がるこの小路には、昔から鬼子母神堂の参詣者で賑わい、多くの茶店や料亭が並んでいたと言います。 東京都の天然記念物に指定されているけやき並木には、かつて大径のケヤキが立ち並んでいたそうですが、現代は若いケヤキに植え替えられて巨木は四本のみとなっています。ケヤキの紅葉に趣きを感じながら、雑司が谷の案内処に立ち寄ってみましょう。⑫ 案内処
けやき並木に佇む「案内処」では、雑司が谷のおすすめ散策コースなど観光スポットを案内するコーナーがあり、ここから雑司が谷散歩をスタートするのもひとつの手だと感じます。名物の「すすきみみずく」や「元禄かざぐるま」など郷土玩具の販売があり、鬼子母神堂にお参りするなら必訪の地。 2階はギャラリーになっていて、日蓮聖人を偲ぶ「万灯」が展示され、それを用いた練り歩きの映像が流れています。また、販売所には雑司ヶ谷七福神の御朱印が1枚にまとめられた色紙が販売されていて、すべてを巡らずとも一挙に御朱印をゲットすることができます。若干掟破りな気がするのは私だけでしょうか…。⑬ 雑司ヶ谷鬼子母神堂(きしもじんどう)
鬼子母神大門、そしてケヤキ並木を過ぎて突き当りを左に曲がると、突如として開けた景観が広がります。遠くに見える「鬼子母神堂」に向かい進むと、広い境内へと入ります。ちょうど11月ということもあり、七五三のお参りや写真撮影に来ている家族で賑わっていました。 境内には、樹齢600年とも言われる大きなイチョウの木があり、東京都の天然記念物に指定されています。樹高30メートルの大イチョウは「子授けイチョウ」「子育てイチョウ」と呼ばれ、子育て・子授けのご利益が。イチョウの樹皮を削って持ち帰り、煎じて飲めば乳の出が良くなる、子が授かるとも言われています。 境内には他にも、創業1781年と書かれた駄菓子屋「上川口屋」があり、昔懐かしい駄菓子に引き寄せられた大人達の姿で溢れています。鬼子母神の鐘が鳴ると幸せを運ぶと言われる「ミミズクの石像」、そして忘れてはならない「大黒天」に子孫繁栄の願掛けをしておきましょう。⑭ yurucafe(ユルカフェ)
当初は鬼子母神参道でランチを取るつもりでしたが、意外と飲食店がなくさまよっていたところ、明治通りの手前に雰囲気の良いカフェを見つけました。こちらが、倉庫をリノベーションした「yurucafe(ユルカフェ)」です。アートが飾られた店内、そして所々の鮮やかな彩りに心が温まります。 カレー・ハンバーグ・オムライスなど、洋食系が並ぶメニューから選んだ看板メニューのユルカレーは、ココナッツベースの食べやすいカレー。スープ・サラダ・ドリンクがつくセットメニューを注文して、嬉しい満腹感を得ました。 ユルカレーは、絵画のようなパッケージでレトルトパウチも販売されているので、食べた後もどこに飾ろうか楽しい悩みがついてきます。店名の如くゆるい空間で、ゆるい時間を送ることのできるホッコリ系カフェに、ふらり訪れてみてはいかがでしょうか。⑮ 観静院(かんせいいん)
yurucafeでランチを取りながら、現在一体いくつの七福神を巡ったか考えていると…、まだ3つ!あと4つも残されていました。でも安心してください。ここからは南池袋にかけて比較的狭いエリアに凝縮されているので、サクサクと行きましょう。弦巻通りに戻るとすぐに、弁財天が祀られる「観静院」が現れます。 威光山法明寺を中心に、眞乗院や玄静院など多くの寺院が並ぶ一帯には木々が生い茂り、鎌倉に来たかのような落ち着いた雰囲気が味わえます。学業成就の弁財天は、琵琶を手に持つ芸術の神様としても知られています。実は、観静院の手前の弦巻通りには東京音楽大学と付属高校があり、その関連性を感じずにはいられません。⑯ 雑司が谷 大鳥神社(おおとりじんじゃ)
弦巻通りを都電荒川線方面に向かうと、如何にも神社らしい縁日の準備が進む「大鳥神社」が鎮座します。大鳥神社は、毎年11月に酉の市がたち、縁起物の熊手が有名な神社として知られていて、商売繁盛の神である恵比寿神が祀られています。 大鳥神社は古くから疱瘡(天然痘)除けとしても信仰されていて、現在でも神職が境内の小石を拾ってきれいに洗い、祓い清めて小袋に入れ、疫病除けのお守りとして配っているそうです。また、この一帯は江戸時代に味が良いと評判だった雑司ヶ谷ナスの産地でもあり、境内にそれが記された案内板がありました。⑰ Racines Bread & Salad
都電荒川線沿いを都電雑司ヶ谷駅に向かって進むと、池袋方面に続く東通り商店街に出ます。この東通りには飲食店が数多く居並び、雑司が谷エリアよりもグッと人通りが増えます。お洒落なカフェやレストランを横目に見つけたベーカリーが「Racines Bread & Salad(ラシーヌ ブレッド&サラダ)」です。 こちらでは、25種類ものドーナッツやパン、サラダ、ジャムなどが販売され賑わっています。シュガーグレースやチョコレートでデコレーションされたツヤツヤのドーナッツが食欲を掻き立てます。他にも、トーストしたバゲットに塗りたぐりたいラムレーズンバターが美味しそうでした。ドーナッツを買って、近くの南池袋公園で食べるのも良いかもしれません。⑱ 中野ビル
ベーカリーの程近く、老眼めがね博物館の対面に、見落としてしまいそうな七福神が祀られた「中野ビル」があります。この中野ビル七代目に護持されている布袋尊は、恰幅の良いお腹と宝物が入っていそうな袋からも連想されるように、千客万来や金運隆盛のご利益があると言います。⑲ 仙行寺(せんぎょうじ)
東通りから路地に入り、シアターグリーン通りに出るとすぐに、最後の七福神である福禄寿が祀られた「仙行寺」がお目見えします。華の福禄寿とも言われるように柔らかな表情で出迎える福禄寿(実際にはお顔は拝見できなかった)の傍らには、良縁や家庭円満を祈る絵馬が張り巡らされていました。 おわりに 雑司ヶ谷七福神をコンプリートすべく、意気揚々と臨んだ雑司が谷の旅はいかがでしたでしょうか? 各所に鎮座する七福神でご利益を願いながら、イチョウやケヤキの色付きを楽しめる一挙両得な東京散歩。どの寺社も綺麗に手入れが施されていて、清々しい気分で満喫することができました。 今回は一日ガッツリの1万6千歩を記録した長旅でしたが、半日程度であれば副都心線の雑司が谷駅から鬼子母神堂を通り、東通りで食事を取って南池袋公園でまったりと過ごすコースもおすすめです。あっという間に見頃が過ぎ去る秋の紅葉を求めて、雑司が谷に訪れてみてはいかがでしょうか。他におすすめしたい街歩きスポット