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街歩き No.037 小伝馬町|新日本橋から徒歩で行ける「小伝馬町」で大人の趣味に赴く

街歩き No.037 小伝馬町|新日本橋から徒歩で行ける「小伝馬町」で大人の趣味に赴く

今回訪れたのは東京都中央区にある「小伝馬町」。かつて江戸時期には旅人宿で賑わい、繊維問屋や金物問屋も連なっていた面影を街中に残しつつ、現代では住宅地に個性的なお店が点在するユニークな街として趣味人が集うエリアとなっています。

小伝馬町

小伝馬町駅は日本橋エリアの北側に位置し、時代劇が好きな人なら「小伝馬町」を一度は耳にしたことがあるというほど古くから存在する町です。江戸時期にあった、人や荷物を馬に乗せて次の目的地へ運ぶ制度「伝馬」を担う「伝馬役」がこの地に住んでいたことが駅名の由来とされています。「小」伝馬なのは、この周辺にある大伝馬の地区より馬の用意が少なかったためだそう。

小伝馬町

小伝馬町駅から馬喰町駅の周辺にまで足を延ばし、ディープな日本橋エリアを歩きます。午前10時より小伝馬町駅3番出口からスタートです。

① WENT 2 GO

小伝馬町

まず向かったのは「WENT 2 GO(ウェントトゥゴー)」。水天宮通りのオフィス街にある TO GOスタイル(持ち帰り)のコーヒーとサンドウィッチのお店。メキシカンサンドやたまコロなど、いろいろな具材のサンドイッチがいただけます。

オープンの時間には早かったためコーヒーはいただけませんでしたが、アメリカンダイナーな外観は気軽さが感じられ、何よりお洒落で気分が上がりますよね。ちょっとしたコーヒータイムにも気兼ねなく利用できそうです。店内に小さなイートインスペースがあるので、お店の雰囲気を味わうべくそちらも利用してみてください。

② 旧日光街道本通り石標

小伝馬町

水天宮通りの信号を渡り路地へ入ると、新しい住宅やビルの間に歴史を感じさせる商店が散見されます。この旧日光街道は、現代こそ江戸期の面影は薄れてしまいましたが、ところどころに屋敷跡を示す看板や石碑があります。「旧日光街道本通りの石標」には下記のように文献が多く残されているため、旧跡を巡ることができるのも街の魅力のひとつといえます。

「徳川家康公江戸開府に際し御傳馬役支配であった馬込勘解由が名主としてこの地に住し以後大傳馬町と称された」

「江戸名所図絵や広重の錦絵に画かれて著名なこの地は将軍御成道として繁華な本街道であり木綿問屋が軒を連ねて殷賑を極めた」

③ COMMISSARY NIHONBASHI

小伝馬町

旧日光街道本通り石標の向かい側には「COMMISSARY(カミサリー)」があります。建物の中は1フロアにカフェ、ベーカリー、タコス、などのお店が集まるフードコートで、食べたいものをそれぞれのお店で購入できるため自分好みのメニューにカスタマイズできます。アメリカ・ブルックリンの工場がコンセプトの白基調の屋内はSNS映え間違いなし!さらに、個性的なお店が集まっているのでユニークな空間になっています。

小伝馬町

時刻は10時過ぎ、遅めの朝ごはんとしましょう。まずは “COFFEE” エリアの「mind spa(マインド スパ)」でアイスカフェモカを購入。さらに、その隣の “DONUTS” エリアの「GRANDPA」で、揚げたてふわっふわのイーストドーナツをいただきます。ブルーベリーパイやキャロットケーキもオシャレにレイアウトされていて、ついあれこれ手が伸びてしまいそう。

小伝馬町

“DONUTS” エリアでは通常「Chigaya Bakery(チガヤベーカリー)」がオープンしているそうですが、期間限定で「GRANDPA」がオープン。イベントなどでドーナツを販売しているそうなので、SNSなどをチェックして美味しいドーナッツを味わってください。どの店もキャッシュレス決済となっているので、現金派の方はご注意を。

④ HARIO ランプワークファクトリー

小伝馬町

美味しいものを食べた後は落ち着いてショッピングとしましょう。旧日光街道の一本筋違いの “えびす通り” に「HARIO ランプワークファクトリー」があります。レンガ倉庫のような外観のお店の中には HARIO のアクセサリーが並び、工房でガラスを加工する様子も見学できます。

小伝馬町

ガラスに特化した HARIO ならではの透明度の高いガラスワークは、洗練されたデザインが美しく、見ていると心が整っていくのを感じます。ネックレスやイヤリングは暑い夏に爽やかさをプラスしてくれるのはもちろん、四季を通して違った表情を見せてくれるでしょう。

小伝馬町

中でも筆者が気になったのは、ガラスのボタンがあしらわれたチュニック。生地の滑らかさとガラスのボタンの存在感が絶妙です。どんな色合いにも、どんな素材にも合わせてくれるガラスの懐の深さが一段と感じられる一品です。

⑤ 三縁史跡の碑

小伝馬町

駅前に戻ってきました。小伝馬町駅の4番出口の目の前には「三縁史跡の碑」があります。”三縁史跡” とは、この後に訪ねる予定の十思公園に現存する3史跡「石町宝永時鐘」「江戸伝馬町牢屋敷跡」「吉田松陰先生終焉之地」のことで、この石碑はすぐそばに史跡があることを知らせています。3史跡の解説看板も併せてみると、十思公園をより面白く巡ることができますよ。

⑥ 十思公園

小伝馬町

三縁史跡の碑に記されていた3史跡の存在する「十思公園(じっしこうえん)」へやってきました。「石町宝永時鐘」「江戸伝馬町牢屋敷跡」「吉田松陰先生終焉之地」はすべて公園内にあり、住民の憩いの場にもなっています。公園を囲むようにある史跡を順番に回ることとしましょう。

石町宝永時鐘

小伝馬町

東京都指定有形文化財の指定されている江戸時代初期の鐘で、二代将軍“徳川秀忠”の時代には江戸城内で使われていましたが、御座の近くで差しさわりがあったため鐘を日本橋石町(現在の日本橋本石町)に鐘楼堂を造って納めたのが起源で、その後3度の火災によって破損したために、後身として宝永8年(1711年)に鋳造されたのがこの鐘なのだそう。伝馬町獄が近隣にあったため囚人の処刑は鐘の音を合図に執行されており、吉田松陰、橋本左内など数々の士を見送った音色が残されています。

江戸伝馬町牢屋敷跡

小伝馬町

公園からみられるのは石垣のみですが、明治8年までの約270年にわたって存続した牢獄で、“安政の大獄“では吉田松陰、橋本左内など五十余人がこの牢獄に入れられていました。現在の大安楽寺、身延別院、村雲別院、十思小学校、そして「十思公園」の一帯が伝馬町獄で、かなりの広さだったことがわかります。

吉田松陰先生終焉之地

小伝馬町

前述の伝馬町獄で刑についた、言わずと知れた偉人「吉田松陰」の留魂碑です。「安政の大獄」に連座して伝馬町獄に入獄となった吉田松陰は、牢の中でいくつもの和歌や「留魂録(りゅうこんろく)」を残しました。

『今吾れ国の為に死す 死して君親に背かず 悠々たり天地の事 鑑照明神に在り (私は今、国のために命を捧げる。 これは決して君や親に対する忠孝の道に背くことではない。 遥かに広がる天地の間に営まれる事の中で私の行ってきたことはすべて国の為であり至誠より発したものである。)』

安政6年10月27日(1859年11月21日)、刑場で歌を朗読して刑についた吉田松陰は、後に数々の功績が認められ正四位(しょうしい)を贈位され、この留魂碑が建設されました。

『身はたとひ 武蔵の野辺に朽ちぬとも 留め置まし 大和魂(この身が武蔵野の地で処刑されようとも、思想は生き続けるのだ)』

⑦ 雑貨&カフェ DEAR YOU

小伝馬町

公園を出て、水天宮通りを駅と反対方面へ進みます。少し進んで対向車線側のコンビニ横の路地を5分ほど突き進むと見えてくるのが「雑貨&カフェ DEAR YOU」。日本の有名なデザイナーや職人が製作したキッチン道具、特にお茶やコーヒーの道具を取り揃えるセレクトショップです。

使いやすさや、美味しく淹れることにこだわりたい人にとって気になるものが並びます。また、カフェも併設されており、こだわりのドリップコーヒーや、スペシャルティーコーヒー、デザートなどをいただきながら、素敵な雑貨に囲まれてゆったりとした時間を過ごすことができます。

⑧ minä perhonen elävä Ⅰ

小伝馬町

旅は後半戦、馬喰町方面へ向かいます。DEAR YOU の通りを進み、清洲橋通りに合流したころ、「minä perhonen eläväⅠ(ミナ ポルホネン エラヴァⅠ)」が見えてきます。

こっくりとした趣の店内にはオーガニックの野菜や果物、お味噌やスパイスなどの調味料や焼菓子のような、日々の食卓を豊かにする食品を中心に、日常のシーンに沿った食器もセレクトされています。二階はギャラリーになっており、訪れた日は写真展が開催されていました。体に優しい素材を心掛けている方へ気の利いた手土産選びに、日常にオーガニック素材を取り入れたい方に、ぜひ訪れてほしいお店です。

⑨ minä perhonen elävä Ⅱ

小伝馬町

minä perhonen elävä の2号店で、キッチンウェアやファニチャーなどのセレクトショップです。コンセプトは同じでも店舗の雰囲気や置いてあるものが違うため全く違ったショッピングが楽しめます。オシャレで日常使いしやすいものが多く、質の良いビンテージも揃っています。

小伝馬町

デザイナーで創設者の皆川明が1995年に始めたブランド “minä perhonen”。フィンランド語で「minä」は「私」、「perhonen」は「ちょうちょ」を意味し、デザイナーがフィンランドを旅する中で、そのライフスタイルやカルチャーに共感して名付けられたそう。北欧風のデザインでも日本の空間になじんでくれ、自宅に気軽に取り込めそうです。

小伝馬町

筆者は手ぬぐいとトレイを購入。どちらも動物や自然をふんだんにあしらい、可愛らしさとナチュラルが共存するデザインに心を掴まれました。手ぬぐいはデザインが在り来たりで、使い道がないなんてこともありますが、大きな絵本のような絵と、優しい色使いはテーブルランナーにも使えます。汚れてしまったらティータオルにリメイクするなど使い道に困りません。日常にあるとそれだけで気分を上げてくれる、そんなものに囲まれる“私らしい“お家づくりにおすすめしたい、素敵なお店でした。

⑩ 鳩時計専門店 森の時計

小伝馬町

清洲橋通りを進み、馬喰町の交差点を渡った先のエリアを歩きます。横山町大通りに曲がってから5分ほどで「鳩時計専門店 森の時計」にたどり着きます。店舗は4階にあるので、1階のブティックの手前にあるエレベーターに乗りましょう。

小伝馬町

エレベーターの扉が開くと壁一面の鳩時計に圧倒されます。ここは大きさやモチーフもそれぞれ異なった鳩時計が一度に見られる、国内でも貴重な鳩時計専門店です。映画やログハウスなどで見かけて憧れを持つ人も少なくない鳩時計ですが、取り扱うお店が身近にないことから憧れ止まりになってしまっていないでしょうか。実際に見てみると見た目の可愛らしさや精巧なカラクリ、独特な存在感から一気に魅力に引き込まれます。

小伝馬町

実は記念品やギフトにも利用できる鳩時計。プレートに日付や名前、メッセージなどを掘ってもらうことができます。結婚や古希、定年祝いなど、これからも一緒に過ごしたい思いを、時を刻む時計に乗せて贈るなんてロマンチックですよね。

⑪ plywood

小伝馬町

森の時計の裏手にあるのはキャンプ用品専門店の「plywood(プライウッド)」。店内には焚き火台、ランタン、テントなどキャンプに必須の道具が所狭しと広げられています。キャンプ用品はパッケージのままだと大きさや機能性などが確認しづらいうえ、決して安いお買い物ではないため吟味したいもの。plywood では実際に組み立てられた状態での展示であったり、お願いすれば組み立ててもらえたりと、きちんと納得したうえで購入に踏み切ることができます。

小伝馬町

私も愛用している “BAREBONES LIVING(ベアボーンズ リビング)” の「ビーコンライト LED 2.0」。USB充電が可能で、調光機能もある優れもの。実はホヤ部分の色違いを購入することで雰囲気を変えることもできるのです。キャンプはもちろん、自宅のアクセントとしても活躍してくれます。

小伝馬町

大型店舗に劣らない充実度で、新しい発見があること間違いありません。キャンプにおいてデザイン性と機能性どちらにもこだわりたい方にお勧めしたいお店です。

⑫ Parlors

小伝馬町

plywoodからほど近くに「Parlors(パーラーズ)」があります。ガレージ系のインテリアでゆったりと読書をする人、足を休める子連れ家族などが集まります。過ごしやすい陽気の日にはオープンカフェとなるようです。レジでレモネードを注文して席へ。ドーナツがおすすめのようですよ。

小伝馬町

ニュージーランド発のコーヒーロースター「コーヒースプリーム」がプロデュースしたカフェで、奥渋谷などを拠点に“コーヒーを通じたコミュニケーションの場”をつくっています。不定期でマーケットイベントを開催しており、美味しいコーヒーを片手に訪れる人と気さくにつながることもできます。

⑬ 小宮商店

小伝馬町

Parlorsの2つ筋違いにある傘専門店「小宮商店(こみやしょうてん)」。1930年創業から手しごとで洋傘を作り、販売してきたメーカーです。傘の生地には山梨県で折られた“甲州織”を使っているため光沢感と重厚感があり品の良さを感じます。日傘、雨傘、晴雨兼用傘どれでも揃っており、生地も柄や色により染め方、折り方を変えているため多種です。

小伝馬町

筆者もここで日傘を調達しようと思いますが、たくさんあるデザインや生地間のもののなかから私だけの日傘を選ぶのはとても大変。ですが、店員さんが優しく声をかけてくれ、何度でも傘を開いて見せてくれるので無事にベストな傘を見つけ出すことができました。確かな品質と唯一無二のデザインの晴雨兼用傘を手に入れて、これからはどんなに陽射しが強い日も楽しくお出かけができそうです。もっと詳しくお店を紹介する記事も併せてご覧ください。

⑭ HYST

小伝馬町

馬喰町の駅に向かう方面へ足を進めます。旅の最後に訪れたのは毎週土曜日の13:00~17:00にのみオープンする幻のアンティークショップ「HYST(ヒスト)」。オープン早々から人で溢れ、15時頃にはほとんどのものが売り切れてしまうほどの人気店です。

2階建ての店舗に、邸宅や医院などから調達したファニチャーやインテリアなどとにかくセンスの良いアンティークやレトロなものが集います。SDGsや古民家カフェに注目が集まる昨今、益々人気が高まりそうですね。インスタグラムで次のオープン日に並べるファニチャーやインテリアが紹介されるので、目星をつけて早めの来店を狙いましょう。

おわりに

徒歩で隣駅まで楽に歩けるため、何度でも散策したいと思えるのもこのエリアの魅力です。知る人ぞ知る素敵なスポットが盛りだくさんの小伝馬町~馬喰町には今回ご紹介できなかった趣味深いお店がまだまだあります。ぜひご自身のお気に入りのお店を探しに訪ねてください。

小伝馬町

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小林 祥子

小林 祥子

システムエンジニアからフリーランスへ転身。趣味はアンティーク集めやギター演奏、お茶(紅茶・中国茶・茶道)、金継ぎ、オイルランプ集めなど多岐にわたる。中国茶エキスパート”シニア”の資格を持ち、インドアライフを追求している。

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