親しい家族や友人、はたまた会社の同僚や取引先の相手から送られる、喜ばしい結婚の便り。事前に報告を受けていても、正式に「結婚式の招待状」が手元に届くと、お祝いの気持ちを表現しながらも、失礼がないように返信マナーを心掛けたいものですよね。
結婚式の招待状を返信するときには、一定のルールやマナーが存在します。親しい間柄であれば則っていなくても差し支えないかもしれませんが、自身の品格を保つと同時にお祝いの気持ちを最大級に示すためにも、正しいマナーを身につけておくと便利です。
目次
結婚式の招待状が届いたら
結婚式の招待状が手元に届いたら、すぐに返信するのではなく、招待状の内容をよく確認しましょう。まず、招待状に書かれている「自分の名前」が正しいことをチェックします。漢字が間違っていないか、そして、別の宛名になってないかを確認して、必要があれば訂正や相手方への連絡をいれましょう。
次に、結婚式の「日時と場所」をチェックします。事前に聞いていた情報から変更されている場合もありますので、いま一度、自分の予定と照らし合わせてみて、問題なく出席できるのか、欠席となってしまうのか、現時点で出欠の判断ができないのかをハッキリさせましょう。
最後に、招待状の「返信期日」をチェックします。ただし一般的に、出席できるときは招待状が届いてから3日後~1週間以内、欠席するときは1週間が過ぎたころに返信することがマナーといわれていて、ギリギリまで出欠がわからない場合を除いて、この目安の時期に返信するように心掛けましょう。
招待状(返信はがき)の「書き方」マナー
結婚式の招待状には、通常は返信はがきが同封されていて、自身の出欠を相手方(新郎新婦)に伝えるためにも使われます。ただし、出席や欠席と書かれている文字を単に○でかこむだけでなく、自分に対する敬称や相手方の宛名を訂正するなど、ある程度決まったマナーが存在します。
ここでは、本記事の核心でもある「返信はがきの書き方マナー」についてご紹介します。マナーはあくまでも礼儀を尽くすための便宜的な慣習ですが、大人として恥ずかしくない最低限の知識であるため、この機会におさらいしておきましょう。
返信はがきに使うペンの種類
結婚式の招待状を返信するとき、つい普段使い慣れているボールペンで書いてしまいがちです。しかし、結婚式のようなお祝い事(慶事)では「太く濃い方が縁起が良い」といわれていて、特に目上の方に対する返信では失礼と思われてしまうケースもあるので注意しましょう。
最も理想的な手段は「毛筆」ですが、現代では持ち合わせていない場合がほとんどですので「筆ペン」を使うのがよいでしょう。黒の「サインペン」や「万年筆」でも差し支えないかもしれませんが、「ボールペン」は極力避けるようにして、太くハッキリとした文字で記入するよう心掛けます。
相手との関係性によっては、ボールペンやカラーペン(グレーは不祝儀のためNG)で返信するのも問題ありませんが、水性ペンだとインクが乾くまでに時間がかかって汚れてしまうこともあるため、そういったケースでは油性ペンを選ぶことをオススメします。
オモテ面の宛名の訂正
結婚式の招待状(返信はがき)の表面には、返信がしやすいよう相手方(新郎新婦)の住所と氏名があらかじめ記載された状態になっています。ただし、一般に相手方の氏名(宛名)には「行」という敬称が書かれていて、返信するときには自分が送り主となることから、相手方を敬うような訂正をすることがマナーです。
敬称の訂正は、定規などを使ってきれいに線を引きましょう。「行」という文字に対して、縦書きであれば二重線をタテに引き、横書きであれば二重線をヨコに引きます。また、「行」など一文字だけに二重線を引くと、打ち消されたことがわかりにくいこともあるため、右上から左下にかけて「斜め」に二重線を引いて訂正する方法もあります。
さらに、敬称の訂正には「寿消し」という方法もあり、洒落っ気を出すときに使うこともあるようです。寿消しとは、「行」などの敬称に対して、二重線の代わりに「寿」の文字を重ね、訂正とお祝いの気持ちを示すものです。ただし、相手方の名前に「寿」という文字が入っているとわかりにくいので、この場合は避けましょう。
「行」という文字を打ち消したら、相手方の氏名の後に「様」という敬称を追記します。縦書きの場合は打ち消した「行」の左横に、横書きの場合は打ち消した「行」の真下に「様」という敬称を付けます。「御中」という敬称は、会社など組織・団体に対して用いるものなので、ここでは使用しないようにしましょう。
返信はがきの宛名が、新郎新婦の連名となっている場合は、それぞれの名前の後に敬称を付けましょう。縦書きの場合はそれぞれの名前の真下に、横書きの場合はそれぞれの名前の右横に「様」という文字を追記します。宛名と「行」との間には若干広めに空白が設けられているため、このスペースに敬称である「様」を書くと良いでしょう。
ウラ面の出欠の書き方(敬称の訂正など)
多くの返信はがきでは、裏面の初めに出欠を示すための選択肢が設けられています。「どちらか○でお囲みください」などという案内の通りに「出席」もしくは「欠席」の文字を○で囲みましょう。ここでも「ご(御)出席」など丁寧語(敬称つき)で書かれていますが、返信するときは自分が送り主となるため、これを訂正する必要があります。
出席の場合、「ご(御)出席」という文言の敬称である「ご(御)」を二重線で打ち消し、「出席」を○で囲み、「ご(御)欠席」の文言を同じく二重線で打ち消します。欠席(不参加)の場合、「ご(御)欠席」という文言の敬称である「ご(御)」を二重線で打ち消し、「欠席」を○で囲み、「ご(御)出席」の文言を同じく二重線で打ち消すことがマナーです。
二重線による打ち消しは、縦書きであれば線をタテに、横書きであれば線をヨコに引きますが、「斜め」に二重線を引いて訂正する方法もあります。このときは縦書きでも横書きでも、右上から左下にかけて線を引きましょう。また、「ご(御)」などの敬称に対して「寿」の文字を重ねる「寿消し」も有効です。出席の場合、見た目は「寿 出席」となり、「ご(御)欠席」の文言は二重線で打ち消しましょう。
さらに丁寧に出席の意思表示をしたい場合は、「出席」という文字の前(縦書きは右上、横書きは左上)に、「慶んで」もしくは「喜んで」と書くこともあります(欠席の場合は「残念ながら」)。余白が十分にある場合は、「出席」という文字の後(縦書きは真下か左下、横書きは真下か右下)に、「させていただきます」を追記するとより丁寧な印象になります。
住所・名前の記入(ご芳名の消し方など)
一般的に返信はがきの裏面には、出欠欄だけでなく自分の住所や名前、電話番号を記載する欄が設けられています。子供連れや夫婦で一緒に出席する場合、名前の欄には家主のフルネーム(氏名)を書き、中点(・)で区切って他の人は名前だけを書き連ねます。住所は長くなるようであれば2行にわたって書き記し、郵便番号は記載しなくても良いでしょう。
通常、名前の欄には「ご(御)芳名」、住所の欄には「ご(御)住所」などと敬称が付けられています。これも出欠欄と同様に、名前欄は「ご(御)芳」の文字に対して二重線もしくは寿消し(一文字ずつ)で訂正し、住所欄は「ご(御)」の文字に対して二重線もしくは寿消しで訂正しましょう。
お祝いメッセージの文例と注意点
結婚式の招待状(返信はがき)には、出欠や住所・氏名のように事務的な伝達欄の他に、新郎新婦に対してのメッセージを書く欄や、アレルギーなど食事にかんする注意コメントを書く欄が設けられている場合があります。もしその欄がなかったとしても、余白にメッセージや食事の注意コメントを書くと良いでしょう。
ここでは、結婚式に出席する場合のお祝いメッセージや挨拶文、欠席となる場合の理由や一言コメント、食事にかんする注意点がある場合の文例をご紹介します。一般的なマナーとして使ってはいけない言葉なども併せてご紹介しますので、メッセージを書き始める前にぜひご覧になってください。
使ってはいけない言葉/避けるべき表現
結婚式の招待状などに書き記すお祝いの文章では、使ってはいけない言葉や避けるべき表現があります。代表的なものとして「、」や「。」などの句読点はふさわしくないといわれています。これは、お祝い事に対して終止符をうったり、区切るなどの意味合いを連想させてしまうため書かないことがマナーとなっています。
さらに、「忌み言葉」と呼ばれる縁起の悪い言葉も使わないようにしましょう。具体的には、不幸を連想させる「落ちる」「消す」「四」「九」など、別れを連想させる「終わる」「切れる」「分かれる」など、結婚は繰り返さなくても良いため「日々」「ますます」などの重ね言葉も使用を控えましょう。
記号(ビックリマークなど)やイラスト(絵)について、相手方(新郎新婦)と親しい間柄であれば特に問題ないといわれていますが、あまりにも多用すると見栄えが良くないため注意しましょう。また、欠席で断る理由を書くときに、不祝儀(弔事・忌中・病気)の場合は縁起が悪いため、書かないか濁して書くようにします。
出席する場合のメッセージ文例
欠席する場合のメッセージ文例
食事にかんする注意コメント
結婚式の披露宴では、新郎新婦から食事がふるまわれることが一般的なため、食事にかんする注意書きを記すためのコメント欄が設けられている場合があります。このコメント欄がない場合でも出席者にとっては重要なことですので、注意点があればメッセージ欄などに記入しましょう。
食事にかんする注意コメントは、食物アレルギーをもっていて特定の食品を抜いて欲しい場合、妊娠していて生もの・アルコール・カフェイン含有飲料を避けたい場合、小さい子供を連れていて子供の食事は自分たちで用意する場合、宗教上の理由(イスラム教、ユダヤ教、ヒンドゥー教、モルモン教など)で豚肉や酒類を禁じている場合などに記入します。
アレルギーがある場合の文例としては「申し訳ありませんが○○などの○○アレルギーがあります ご配慮いただけますと幸いです」、妊婦の場合は「現在妊娠○ヵ月のため アルコールやカフェイン飲料を控えております」などと記載するようにしましょう。食物アレルギーがある人のために主要品目を囲む欄が設けられている場合も、「ご面倒をおかけして恐縮ですが よろしくお願いいたします」など一言添えると良いでしょう。
招待状(返信はがき)の「出し方」マナー
返信はがきの記入が終わったら、相手方(新郎新婦)に返信はがきを「いつ」、「どうやって」渡すかを考えましょう。特に、返信はがきをいつ出すか(渡すか)については、考慮すべきマナーがあるため、事前に知っておくと気配りや教養を表現することができます。
返信はがきはいつまでに出すか
結婚式の招待状には、返信はがきの期日(返信期限)について書かれていることが一般的です。原則的にはこの期限内に送ればよいですが、相手方の準備の都合を考え、なるべく早く送ることを心掛けましょう。送るタイミングは、届いてから3日~1週間以内が目安といわれています。
返信期限ギリギリで送ることになるなら、「お返事が遅れまして申し訳ございません」などの謝意を記載したり、事前に電話で状況を説明しておくと良いでしょう。また、結婚式を欠席するのであれば、すぐに返信すると逆に失礼なため、直後を避け、届いてから1週間が過ぎたタイミングで送るようにします。
返信はがきは切手などがすでに貼られた状態で届くため、ポストにそのまま投函することが一般的です。ただし、直接会ってお祝いの気持ちや欠席の謝意を示したい場合は手渡しにしたり、郵便ポストでの紛失や汚れが気になるようであれば郵便窓口に直接持っていく方法もあります。
出し忘れた/急に行けなくなった
返信はがきを紛失してしまったり、出し忘れて返信期限が過ぎてしまった場合は、なるべく早めに相手方(新郎新婦)に連絡して、お詫びの気持ちを伝えましょう。また、返信期限過ぎてしまっても手元にはある場合、返信はがきはきちんと出して、その中でもお詫びの言葉を添えると良いでしょう。
返信はがきですでに出席を示していながら、仕事や身内の不幸などで急に行けなくなった場合、なるべく直接会うか電話でお詫びをいれましょう。その際は、手渡しか現金書留でご祝儀を送り、さらに電報で式中にお祝いコメントを読んでもらうことが一般的です。
マナーは厳密に則っていなくとも、意思疎通には大きく影響がないといえます。しかし、人間関係は合理的なやり取りだけでは味気なく、目に見えない気持ちを表現する方法としてのマナーは非常に大切です。結婚式の招待状に想いを込め、新郎新婦の一世一代のイベントを気持ちよくお祝いしてあげましょう。
これからも、贈答マナーに関する、皆様の疑問を解決していきます。「これってどうすればいいの?」という疑問も大募集していますので、ご遠慮なくお問い合わせフォームからご連絡ください。