人が亡くなったときは、生前に故人と関係があった人に向けて、遺族から「訃報(ふほう)」という死亡のしらせが通知されます。訃報を受けると、故人との関係性や遺族の意向によって次に起こすべき行動は異なりますが、香典や供花、供物などの準備に始まり、通夜や葬式・告別式に参列するための喪服を用意することが一般的です。
遺族の悲しみははるかに大きく、訃報を受け取った人もさることながら、深い喪失感に苛まれていることでしょう。そういった心中を察すべき状況でも、粛々と進めていかざるを得ない葬儀では、グリーフケアよりせめてもの一助となるような「香典」が大事な役割を果たします。本記事では、故人をしのび遺族に寄り添うような、香典のマナーについて解説していきます。
目次
香典(こうでん)とは何か
自身にとって初めての葬儀であれば尚更のこと、礼儀やしきたりについてイチから学ぶ必要があります。香典は心ばかりの金品を贈る冠婚葬祭の慣習と知っていても、細やかなマナーを心得ているかどうかで、相手方に余計な気を遣わせない対応ができるでしょう。ここではまず、香典とは一体どういうものなのかご説明します。
香典の意味と由来
香典とは、特に仏式の葬儀において、ご霊前(亡くなった方の霊の前)に供える金品のことを意味します。香料とも呼ばれる香典は、仏教用語の「香奠(こうでん)」から由来し、「香」はお香(線香)、「奠」は供える台という意味があります。かつては尋問客がそれぞれ線香を持参し、焼香して死者の供養を行なっていたのです。
それが時代の移ろいとともに、線香は遺族側が用意するようになり、また、葬式には多大な費用がかかることから、線香の代わりに金品を供える香典が定着していった経緯があるといいます。つまり、現在の香典には故人への弔いと同時に、故人の遺族を経済的に助ける意味合いがあるのです。
どんなときに贈るものか
香典は、故人の宗教や宗派を確認したうえで、通夜や葬式・告別式に持参することが一般的です。葬儀に参列できない場合は、香典を郵送する手段もありますが、弔意(故人を悼み遺族を慰め、ともに悲しみを共有する気持ち)を表すためには、香典を持参する弔問こそが最も優先すべき手段といえます。
通夜とは、古来は鳥獣や悪霊から遺体を守る目的で、死者を葬る前夜に遺族と近親者が集まり明け方まで過ごす儀式のこと。現在では、葬式・告別式の前夜のうちに終了する「半通夜」が主流で、弔問客も近親者以外に広く受け入れることが一般的です。通夜で香典を渡していて、尚且つ葬式・告別式に参列する場合は、香典を二度渡す必要はありません。
葬式(葬儀式)は、故人が家族や親族、身近な人に別れをする宗教的な儀式。告別式は、参列する人が故人に対して別れを告げる社会的な式典のことです。葬式と告別式は、厳密には異なる儀式ですが、現在ではどちらも同じ日に同じ会場で行なうケースが多いようです。同時に取り行わない場合は、葬式から告別式の順で組まれるのが通例となっています。
香典の金額について
香典を用意するときに、最も気になることが「お金をいくら包めばいいか」ではないでしょうか。会葬返礼品、通夜ぶるまいの膳、香典返しは遺族負担と考えると、ひとりあたり最低5千円を目安に包むことがマナーといわれますが、故人との関係性や地域の慣例など考慮すべき事柄があります。
香典の金額が「偶数か奇数か」という点にも注意しましょう。現代では無用の配慮と言われるようになってきたものの、場合によっては不快な感情を抱かれる可能性もあります。偶数は割り切れる数字であることから、「故人とのつながりを切る」という連想をされる恐れがあり、奇数の金額を包むことが慶弔事におけるマナーといわれています。
偶数だけでなく、「死」「苦」を連想させる「4」「9」が付く金額も避けたほうが無難です。ゲンを担ぐ傾向の強い日本において、縁起の悪い「忌み数」は避け、「1」「3」「5」あたりの金額が香典ではよく選ばれています。金額の数字だけでなく、お札(紙幣)の枚数についても同様のことが言えるので注意が必要です。
家族や親戚に包む相場
香典の金額相場は、故人との関係性や自分の年齢、立場によって異なります。家族や親戚に不幸があったとき、まだ自分が両親に扶養されていたり、自分が喪主で葬儀費用を負担するのであれば香典を包む必要はありません。また、故人が所帯主や一家の中心的存在だった場合は、相場よりも気持ち多めに包むようにしましょう。
- 両親
5万円~10万円(20代は3万円程度など収入に見合う金額)
- 兄弟姉妹
3万円~5万円
- 祖父母
1万円~3万円(自身が40代~50代で立場があるなら5万円)
- おじ・おば
1万円~3万円(自身が50代~60代なら3万円以上にする)
- 遠縁の親戚
5千円~1万円
- 配偶者の親族
配偶者(義理)の親族の場合も上記と同額
会社関係や友人・知人に包む相場
職場の人に対する香典の相場は、故人の役職や自分の立場(肩書き)によって異なります。職場の人たちと連名で香典を包む場合は、社内で相談して決めましょう。個人で包む場合は、自分の上司よりも高額にならないよう注意します。個人で包むとしても、会社で連名の香典は出すことが無難ですが、慣例でないなら一声かけて辞退しても良いかもしれません。
- 上司・同僚・部下・その家族
5千円~1万円(自身が肩書きのある立場なら多めに包む)
- 友人・その家族
3千円~1万円(親しい友達なら1万円以上にする)
- 知人やご近所さんなど縁の遠い人
3千円~5千円
香典袋(不祝儀袋)の選び方
香典を贈るときは、専用の「香典袋」に包むのが正しいマナーです。ただし、香典は仏教での呼び方であり、本来的には「不祝儀袋」。香典の方が広く知られているため、便宜上で使われる機会が多いようです。また、故人が属していた宗教によって不祝儀袋の体裁や表書きが異なるため、葬儀の形式を予め確かめて、それに合わせるようにしましょう。
故人の宗教・宗派を確かめる
香典(不祝儀)は、半紙で包んだ紙幣をさらに奉書紙で包んで、水引きを結び設えることが正式なマナー。ただし、合理性が受け入れられるようになった現代では、市販の不祝儀袋で代用するのが一般的になっています。不祝儀袋(香典袋)は、故人の宗教に即してマナーを守る必要があるため、まずは宗教や宗派を確認しておきましょう。
宗教や宗派が分からない場合は、無地の不祝儀袋で銀一色「結び切り」の水引きを用意し、表書きを「御霊前」とする方法もあります。ただし、それが適切でない宗教・宗派もあるので注意しましょう。また、水引きや絵柄なども宗教によって異なるので注意が必要です。不祝儀袋の熨斗(袋の右上の飾り)は、どの宗教でも掛けないことがマナーです。
不祝儀袋の水引きと表書きの種類
不祝儀袋(香典袋)は、基本的には白無地の袋に水引きを掛け、中央に不祝儀の名目である表書きが書かれたものを使います。不祝儀袋の水引きや表書きは、包む金額帯や故人の宗教による違いがあるので注意しましょう。ちなみに、お供え物(供物)は仏式と神式の弔事で贈り、キリスト教式では贈らないことが通例です。
包む金額帯によって選ぶべき不祝儀袋の目安があるのは、相手に余計な期待を持たせない配慮からで、不祝儀袋に見合わない金額を包むことは失礼に当たるため避けましょう。目安としては、包む金額が5千円以下であれば水引きが印刷されている略式タイプ、5千円~1万円までなら藍銀の水引きが印刷された不祝儀袋が一般的です。
包む金額帯が1万円以上になるようであれば、印刷されたものではなく実際の水引きが掛けられた袋を選びましょう。1万円~2万円なら黒白の水引きを掛けた水引金封、3万円~5万円なら黒白か双銀の水引きを掛けた高級和紙の中金封、10万円以上なら中金封よりもさらにひと回り大きい大金封と呼ばれる豪華な不祝儀袋を使用しましょう。
不祝儀袋(香典袋)の表書きや柄は、故人が生前属していた宗教によって異なります。基本的には、仏式、神式、キリスト教式、無宗教の場合に分かれます。表書きは、宗教の違いにかかわらず「御霊前」が使用できますが、神式と予めわかっている場合は「御神前」と書く方が良いでしょう。 表面の柄は、仏式なら蓮(ハス)の花、キリスト教式なら百合(ユリ)の花や十字架です。
- 仏式の不祝儀袋(香典袋)
仏式の不祝儀袋の水引きは、黒白、黒銀、双銀の「結び切り」があります。結び切りには「二度と繰り返さないように」という意味があります。少額であれば印刷された藍銀の水引き、京都でよく使われる黄白の水引きもあります。特に、浄土真宗系の場合は、黒白または双銀の結び切りが一般的です。
仏事では、四十九日までは故人の霊がこの世にとどまると考え、通夜から告別式で霊前に供える香典の表書きは「御霊前」、四十九日の法要(忌明け)からは「御仏前」を使います。ただし、浄土真宗系では霊は存在しないという考えから、通夜から告別式でも「御仏前」とし、どの宗派の仏式か分からない場合は「御霊前」や「御香料」などにしましょう。
- 神式の不祝儀袋
神式の不祝儀袋の水引きは、黒白、双白、双銀の「結び切り」を用います。不祝儀袋の表書きは、「御神前」「御玉串料」「御榊料(おさかきりょう)」「神饌料(しんせんりょう)」「御霊前」「供物料」「御供料」などがあります。
- キリスト教式の不祝儀袋
キリスト教式の不祝儀袋には、水引きは不要です。ユリの花や十字架などの絵柄がついたキリスト教専用の袋を選びましょう。表書きは、カトリック教なら「御花料」「御白花料」「御ミサ料」、プロテスタント教なら「忌慰料」と書くようにします。御白花料とは、キリスト教式の葬式で棺を白い花で飾ることに由来しています。
- 無宗教の不祝儀袋
無宗教の場合は、密葬(家族葬)の後にお別れ会を開くことがあります。水引きは黒白、双白、双銀の「結び切り」、表書きは「御花料」とし、会費制なら白封筒に「志」と表書きします。お別れ会は密葬(家族葬)の後に行なわれるため、表書きは薄墨でなくても良いでしょう。どの宗教でも共通ですが、「御悔」の表書きは一般的でないので避けます。
香典袋の書き方
香典に包む紙幣と不祝儀袋(香典袋)が用意できたら、香典袋に表書き(献辞)、自分の氏名、香典の金額、自分の住所を記載していきます。香典袋には、既に表書きが印刷された短冊状の紙を差し込んだりするタイプや、中袋の付いていないタイプ、記入欄が既に印刷されているタイプなど様々なものがありますが、記載する4つの事項は宗教や宗派を問わず共通です。
ペンの選定ポイント
香典袋の表書きは「涙で墨の色もにじむ」という意味を込めて、薄墨で書くことが正式なマナーです。最も望ましい道具としては、薄墨の毛筆や筆ペンで、筆ペンが慶事用ならペン先を水に浸して薄墨にします。インクを使うことは避けた方が良いとされますが、どうしても使う場合は薄墨色か濃紺色のサインペンで書きます。
薄墨の毛筆で書く理由は、急な訃報を悲しんでいる様子や、すぐに駆けつけたことを示すためです。そのため、薄墨を使うのは故人が亡くなった直後のお通夜や葬式・告別式、そして初七日までです。四十九日や一周忌、三回忌、七回忌などは事前に予測できるため、これらで用意する香典は濃墨の毛筆や筆ペンで書くことがマナーです。
また、香典の外袋(外包み)は薄墨の毛筆や筆ペンで書くことがマナーですが、中袋(内袋)はボールペンや万年筆、サインペンでも問題ありません。中袋は外袋よりもサイズが小さいため、必要事項(金額や住所)を読みやすく遺族に正確な情報を伝えるためには、線の細いペンで書くようにすると良いでしょう。
外袋(外包み)の書き方
香典の外袋(外包み)の書き方は、中袋(内袋)があるかないかで変わります。中袋がある場合、外袋には表書きと自分の氏名のみを記載し、中袋に香典の金額と自分の住所を記載します。表書きは宗教や宗派で異なるため、前章で述べた内容を参考にしてください。
自分の氏名は、外袋の下段中央にフルネームで(表書きよりもやや小さく)書きます。夫婦連名の場合は、夫の氏名を中央に書き、左側に妻の名前だけを書き添えます。夫の代理で妻が会葬する場合は、夫の名前の左に「内」と小さく添えることがマナーです。
会社でまとめる場合は、3名までなら中央から目上の人の氏名を書き、左に向かって他の人の氏名を順に書きます。4名以上の連名なら、「〇〇株式会社 〇〇課一同」と書くか、中央に書いた代表者名の左下に「他〇名」「外一同」と書き、別紙に全員の名前と住所を目上の人を右から順に記載して、香典袋(中袋の中)に同封します。
香典袋に中袋が付いていない場合は、外袋に記入欄が印刷されていることが多いため、それに則って記入します。記入欄がなければ、外袋の表面に自分の氏名を書き、裏面の左下にやや小さく自分の住所と香典の金額を書きます。住所の番地や金額には漢数字を用い、金額は「金伍仟円」(金参仟円・金伍仟円・金参萬円・金伍萬円・金拾萬円)などと書きましょう。
ちなみに、香典を贈ると通常は遺族側から「香典返し」と呼ばれる返礼品が届きます。香典が少額で遺族の負担を考慮したり、弔問が忌明けになった場合は、外袋や中袋の裏面に「返礼拝辞」と書いたり、一筆箋に「返礼は謹んで遠慮いたします」と書いて同封し、香典返しの辞退を申し出ましょう。公務員や代議士など公的機関では、香典返しを受け取ることを禁止しているケースもあります。
中袋(内袋)の書き方
香典に中袋が付いている場合は、中袋に香典の金額と自分の氏名・住所を記載します(外袋に氏名を書いても中袋にも氏名を書く)。中袋に記入欄が印刷されているタイプでは、それに則って記入するようにしましょう。記入欄がなければ、中袋の表面に香典の金額を漢数字で「金壱萬円」などと記入し、裏面に自分の住所と氏名を郵便物と同じように記入します。
香典を郵送する場合や特にお悔みを伝えたい場合など、香典袋に手紙を添える(同封する)とより丁寧な印象になります。手紙は白い縦書き用の便箋を使うことが一般的で、便箋は一枚だけにしましょう。自分自身が故人の家族と面識がないなら関係性を記入し、季節の挨拶は入れず、「重ね重ね」や「再度」などの忌み言葉を避けましょう。
香典袋の包み方
日本では古来より、金品を贈るときに和紙で包む「折形(おりがた)」の作法があります。この折形の礼法は、広く一般に普及した折り紙の源流ともいわれています。紙で包むのは現金や品物を汚さないためであり、けがれのないものを渡すことが当時から重要だと考えられていたようです。
香典袋は、外袋の中に奉書紙もしくは半紙でこしらえた中袋を入れ、二重にすることが伝統的な手法です。市販の香典袋には封筒が入っていることが一般的ですが、封筒がない場合や金額を書き損じた場合は、代わりにコピー用紙などで現金を包んでも良いでしょう。
香典袋へのお札の入れ方
香典袋に入れるお札(紙幣)について、旧来は「慶事では真新しいお札(新札/ピン札)」、「弔事では古いお札(旧札)」と決まっていました。弔事で新札を用いる理由は、あらかじめ用意してあったような印象を避けるためです。ただし、近年では綺麗な方が良いといった考えもあるため、新札でなくとも比較的綺麗なお札にするか、新札に折り目をつける方法があります。
香典袋に封筒(中袋)が付いている場合は、香典袋の表面に対して、紙幣が裏面(肖像画がない面)となるように入れます。封筒を裏にして開けたときに紙幣の表面が見えるように、かつ肖像画が上にくるようにします(肖像画の上下は諸説あるため、さほど気にする必要はありません)。お札を裏にする理由としては、お悔やみの心を示す香典で「顔を伏せる」という意味を込めるためだといわれています。
奉書紙などで現金を包む場合は、まず奉書紙を斜めに置き、紙幣の表面が上になるよう中央より右側に縦にして置きます。次に、奉書紙の左側の角を右側の辺に揃えるように折り、上側の角を下に折り下げ、下側の角を折り上げます。そして、紙幣を折らないよう、紙幣の幅より少し広めに右から折り込みます。最後に、余った角を裏に折り込んで完成。弔事では、位置を調整しながら左上を閉じて、左下だけが三角になるように包むことがマナーです。
地域や宗教のしきたりによっては、外袋と中袋の二重包みが「不幸が重なる」と捉えられるため、中袋を使わないこともあります。その場合は、香典袋(外袋)に直接お札を入れても問題ありません。紙幣の向きについては、中袋が付いている場合と同様で、香典袋の表面に対してお札が裏を向くように入れます。
外袋と袱紗(ふくさ)の包み方
外袋の包み方は、慶弔で異なるので注意しましょう。葬式などの弔事では「悲しくてうつむく」や「涙をためないように」などの意味合いを持たせ、外袋の上側を最後に被せ、外袋の上側が最上面になることがマナーです。結婚式などの慶事では「幸せをこぼさないように」という願掛けから、下側を被せるように折り込むため、間違えないように気をつけましょう。
香典袋を持参するときには、むき出しでバッグに入れたりせず「袱紗(ふくさ)」と呼ばれる布に包みましょう。弔事では、灰色・紺色・濃い緑色の袱紗か、慶弔どちらにも使える紫色の袱紗を用います。袱紗から取り出した香典袋を台に乗せて差し出せる「台つき袱紗」や、折りたたむ必要がない「はさみふくさ」などが便利です。
袱紗がないときは小型の「風呂敷き」で代用できますが、弔事では左包みになることに注意しましょう。風呂敷を使う場合は、裏面を上にして広げ、中央よりやや右に不祝儀袋を置いて右側に折り、下側・上側・左側の順番に折り込み、裏に折り返すようにします。
香典の渡し方
故人の訃報を受けて通夜や葬式・告別式に参列するのであれば、香典はそれぞれのタイミングで渡すことになります。通夜と葬式/告別式の両方に参列する場合は、通夜だけに持参し、葬式/告別式には準備しなくても問題ありません。以下に、香典の具体的な渡し方マナーについて解説していきます。
香典を渡すタイミングと作法
葬儀では、受付で一礼してから芳名帳に氏名と住所を記帳し、香典を手渡す流れになります。渡し方はまず、右の手のひらに袱紗を置き、左手で袱紗を開いて香典袋を取り出します。袱紗は手早くたたんで受付台の上に置くか、金封タイプの場合は香典袋を上に置いて渡します。渡すときには「この度はご愁傷様です」などお悔みの言葉を述べて、香典袋の表書きが相手から読めるように反時計回りに向きを変え両手で渡しましょう。
仕事上の付き合いなどで上司の代理として参列する場合、芳名帳には上司の氏名を記入し、その下にやや小さい文字で「代」と書き、本人が参列したと間違われないようにします。妻が夫の代理で参列する場合も、夫の氏名の下に「内」と書きます。代理出席で名刺を添えるときは、上司の名刺を渡すなら名刺の右上に「弔」、自分の名刺を渡すときは「代」と書きます(名刺が横書きなら左上に小さく書く)。
通夜で香典を渡していながら、葬式や告別式に参列する場合も、受付では必ず芳名帳に記帳しましょう。芳名帳は、喪主や遺族が参列者の出席状況を把握するためにあるため、受付を通らずに参列するのはマナー違反です。芳名帳に記帳した後は、すでに一度香典を渡しているので「お香典は昨日お渡ししました」と受付に伝えて通るようにしましょう。
通夜や葬式・告別式で受付がない場合は、まず焼香で御霊前にお参りして、香典袋の表書きが自分で読める向きで香典盆に供えます。このとき、すでに供えられている香典袋の上に重ねても問題ありません。香典袋の向きを自分から読めるようにする理由は、焼香の後に遺族が御霊前に向けて置き直すためで、弔問客が逆向きに置かないようにしましょう。
葬儀に参列できなかった場合
訃報が伝わらなかったり連絡が遅れたりして、葬儀に参列できなかった場合は、即座にお悔みの手紙を送るようにしましょう。仏式であれば四十九日までに弔問を約束し、後飾りの祭壇にお参りさせてもらう方法があります。その場合でも香典や供物を持参し、遺族に直接渡すなら相手に香典袋の表書きが読める向きで、御仏前に供えるなら自分で読める向きで供えます。
一般的に、四十九日の法要は遺族や親族で執り行いますが、長年の友人だったり故人と深い関係性だった場合は、参列を要請されることがあります。法要とは、故人の冥福を祈るための「供養行事」を指し、四十九日や一周忌に開かれるもので、法要後に集まった人で食事をする場合は法事と呼びます。法要や法事でも葬儀と同様に、受付で香典を渡すようにしましょう。
自宅で法要が行なわれる場合や、受付の場がない場合は、遺族に挨拶するときに香典を渡します。法要は葬儀から日数が経っていることから「ご愁傷様です」といったお悔やみの言葉は使わず、「御霊前にお供えください」などと一言添えて渡しましょう。ただし、仏式では四十九日までは「御霊前」ですが、一周忌・三回忌など四十九日過ぎだったり、浄土真宗系であれば「御仏前」を使います。
郵送で香典をおくる場合
葬儀に参列できなかった場合は、香典を郵送して贈っても良いでしょう。そういったケースでは、お悔やみの手紙(添え状)を同封し、香典を必ず「現金書留」で郵送します。手紙は信書にあたり、信書を普通郵便や宅配便で送ることは郵便法で禁止されているので注意しましょう。弔事の添え状は、毛筆か薄墨色、濃紺色のインクで書くことがマナーです。
通夜・葬式・告別式まで時間がある場合は、葬儀会場に「気付」で郵送するようにします。ただし、郵送された香典は受け取らない方針の会場もあるため、会場に対して事前に確認しましょう。通夜・葬式・告別式までにあまり時間がない場合は、喪主のご自宅に郵送するようにして、葬儀が終わってから2~3日後を目安に送るようにします。
香典や弔問を辞退された場合
近年では、家族葬(密葬)が増えていることから、遺族側から香典辞退や弔問のお断りを申し出るケースが一般化してきています。弔問しながらも香典辞退されている場合は、遺族の意向を尊重して弔意のみを伝えるようにし、香典は控えるようにしましょう。弔問も辞退されるようであれば弔問はせず、故人や遺族と親しい間柄なら弔電を打ってからお悔みの手紙を出すこともあります。