INDEX
① 柴又駅からスタート
柴又駅のホームに降りたつと、「しばまた」と書かれた駅名標が目に飛び込んできます。ドラマ・映画のワンシーンや名言の展示も駅ホームに飾られ、さっそく足を止めて見入ってしまいます。「まぁまぁ、ゆっくりしていきなよ」と、寅さんに話しかけられているような気分になります。 筆者自身は、リアルタイムで「男はつらいよ」シリーズを見ていない世代ですが、それでも帽子をかぶり羽織を翻す寅さんのシルエットに心和まされるのだから、不思議なものです。「ああ生まれてきて良かった」なんて呟きながら改札をくぐります。 柴又駅の改札を出ると、かの有名な「フーテンの寅像」、そして「見送るさくら像」が正面から出迎えてくれます。噂によると、寅さん像の左足は触れるだけで幸運を呼ぶのだとか。それが理由かは定かではないものの、像の左足はツルツルピカピカ。皆さんもそっと触れて、幸せをお裾分けしてもらいましょう。② 柴又ベーカリーグッデイストア
まずは、帝釈天に向かう参道とは逆方面、柴又駅から南に延びる商店街(柴又親商会)を歩いてみましょう。駅改札を出て右後方に進むと、八百屋の2階に「柴又ベーカリーグッデイストア」というお店があります。 こちらは月に数日しか営業していない人気のパン屋さん。運よく営業日に柴又を訪れたなら、本日のランチとして惣菜パンや菓子パンを購入してみてください。定番の商品以外は、毎回パンの種類が違うというユニークさも楽しめるお店です。③ おでん大国屋
柴又親商会の商店街では、おでん種を販売する「大国屋」も要チェック。出汁の香りに誘われて、ついついおでんを買いたくなります。おでんを手軽に楽しめるって、何だかワクワクしますよね。日本酒を選りすぐっての晩酌タイムが待ち遠しくなりそうです。④ 柴又観光案内所
柴又親商会をUターンして北上すると、寅さん&さくら像の真横に「柴又観光案内所」が佇んでいます。葛飾区の広報課長を務める「モンチッチ」が目印。こちらで、柴又の観光スポットをチェックしてから帝釈天参道に向かいましょう。⑤ 柴又ハイカラ横丁
柴又観光案内所の程近く、帝釈天参道の入口手前に、ノスタルジックな外観の建物があります。駄菓子や射的など、懐かしい時代の世界観が今なお残る「柴又ハイカラ横丁」です。かつて夢中になった駄菓子が店内所狭しと並び、大人になってからでも心が弾むようです。 ここでは、取材班の男性と各々が懐かしいと感じる駄菓子を、予算200円以内でセレクトすることになりました。写真左はアラフォー世代の男性チョイス、合計218円と少々オーバー。写真右は筆者のチョイス、合計で186円と守りに入っています。 この駄菓子ゲームは、世代や性格で選ぶものが違い、思った以上に白熱して楽しめました。この中に、皆さんが懐かしいと感じる駄菓子はありましたか? ハイカラ横丁には、ピンボールゲームや射的もあり、まるで温泉街を訪れたかのような気持ちになります。⑥ 柴又のおもちゃ博物館
せっかくなので、ハイカラ横丁の主人に入館料200円を払って、建物2階にある「柴又のおもちゃ博物館」を覗いてみます。葛飾はセルロイド玩具発祥の地であり、おもちゃを地場産業として栄えてきた歴史があります。ここは、おもちゃ文化が息づく、葛飾柴又ならではの博物館なのです。 おもちゃ博物館では、昭和時代のおもちゃやゲームを心ゆくまで楽しみましょう。筆者もファミコン「星のカービィ」をプレイしてみましたが、あえなく撃沈。瞬く間に3機を消化してしまいました。ソフビの人形や漫画雑誌の展示もあるので、昭和世代ならずとも胸が熱くなるのでは。⑦ 帝釈天参道
お次はいよいよ、今回の旅のメインともいえる帝釈天参道です。約200mにわたって延びる参道には、団子屋や川魚料理屋など柴又名物のお店が立ち並びます。昔ながらの雰囲気を味わいながら、のんびりと食べ歩きしてみましょう。 柴又帝釈天界隈および矢切の渡しは、全国各地で人々が地域のシンボルとして大切にし、将来に残していきたいと願っている音の聞こえる環境を集めた「残したい日本の音風景100選」にも選ばれている名所。見てよし、食べてよし、聞いてよし、三拍子そろった旅になりそうです。 柴又帝釈天界隈の音風景は、昔ながらの呼び込みの声、参拝客のざわめき、帝釈天の梵鐘の響きなど、参道の賑わい。江戸川付近まで足を延ばすなら、矢切の渡しの櫓の音、ヒバリ、ユリカモメの鳴き声など、のどかな音風景を楽しんでみてはいかがでしょう。⑦-1 高木屋老舗
帝釈天参道を進むと程なくして、趣のあるお団子屋「高木屋老舗(たかぎやろうほ)」が現れます。参道の両側に、お土産販売店舗と食事処の店舗を構えていて、どちらの店舗でもイートインできます。1皿に5つの草餅がついた名物の「草だんご」は、ヨモギの味わいがしっかり感じられます。⑦-2 天ぷら大和屋
食欲をそそる香ばしい匂いがしたと思ったなら、軒先で天ぷらを揚げている「大和屋(やまとや)」です。バチバチと切れのいい音色も、街行く人々を楽しませてくれます。濃い目のタレがかかった江戸前天ぷらは、もはや柴又名物ともなった味わい。こちらで昼食をとる観光客も多いそうです。⑦-3 手焼きせんべい金子屋
昔懐かしい地球びんに入ったお煎餅の陳列が興味をそそる「手焼きせんべい金子屋」。こちらでは、甘辛の「ザラメ煎餅」とパリパリ食感が病みつきになる「のり巻」が絶品と評判です。化粧箱に入った煎餅もあるので、手土産にしても良いかもしれません。⑦-4 柴又門前とらや
寅さんの実家として映画撮影が行われていた「とらや」でも草だんごを食します。注文した後に、たっぷりのあんこを団子に乗せてくれました。お団子は、とろりと溶け落ちそうなほど柔らかいのでご注意あれ。ほんのり温かく、もっちりとしたお団子はペロッと食べられます。⑦-5 川千家
利根川水系の一級河川、江戸川が流れる柴又エリアは、川魚料理も有名です。参道に構える「川千家(かわちや)」は、創業250年の老舗。著名人も数多く訪れる料亭では、ウナギ、鯉、どじょうなどを使った川魚料理がいただけます。ゆったりと昼食をとりたいときは、こちらで休憩してはいかがでしょう。⑦-6 亀家本舗
帝釈天まで目前となった位置にある「亀家本舗」では、みたらし団子を注文。柔らかなお団子とおこげの香ばしさに、みたらしの甘じょっぱいタレが絡んで美味。胡麻だんごや季節限定のレモンだんご、お食事系団子などもありましたが、これまでに3本食べて満腹に近く「もっと食べたいのに」と悔しい気持ちが湧いてきます。⑧ 柴又帝釈天 経栄山 題経寺
帝釈天参道を抜けると、いよいよ柴又帝釈天「題経寺」が現れます。なんと寛延6年(1629年)に創建された、歴史ある日蓮宗のお寺です。境内には、彫刻が施された諸堂や柴又七福神のひとつ「毘沙門天」が祀られています。賽銭を奉納して「いい旅になるようお見守りください」と祈りましょう。 題経寺には、回廊式の寺院庭園「遼渓園」という魅力的な庭園があります。取材日は入場を受け付けておらず、脇から眺めただけでしたが、永井楽山が作庭した素晴らしい景観を垣間見ることができます。題経寺では、おみくじもお忘れなく。筆者はなんと久しぶりの大吉でテンションが上がりました。⑨ 山本亭
柴又帝釈天から歩くこと5分、葛飾区山本亭に移動します。こちらでは、大正末期から昭和初期の特色を残した近代和風建築を鑑賞することができます。また、アメリカの日本庭園ランキングで3年連続第3位を取ったことのある庭園が有名です。 館内は入館料100円で鑑賞できますが、旅の最終目的地である「寅さん記念館」との共通券(550円)がお得。お座敷では、抹茶やコーヒーを飲みながら、足を伸ばして庭園を眺めくつろぐことができます。 平成3年の山本亭開館時に制作された屏風「花菖蒲」は、菖蒲の花々がダイナミックに描かれていて圧巻のスケール。正面に立って絵の世界に入り込んだり、近くで細部を観察したりと鑑賞のしがいがあります。明治期の上品な造りが特徴的な応接室も必見です。 館内をひと通り鑑賞したら、入場券を購入した窓口で飲み物を注文しましょう。座敷に座り、待つこと数分で注文の品が運ばれてきます。花菖蒲が描かれたコーヒーカップがこれまた素敵。お抹茶と生和菓子のセットも風情があります。帰り際には、ステンドグラスが美しい裏口の門を見てみましょう。⑩ 矢切の渡し
寅さん記念館には、山本亭の裏口を出て正面の丘(柴又公園)を登り向かいます。丘の上は開けていて眺めがよく、深呼吸したくなるほどの絶景が広がります。うねうねとしたスロープと、急こう配な階段があり、元気があれば共に訪れた人と競争なんていかがでしょう。 そのまま堤防を進むと、都内に唯一残る渡し船「矢切の渡し」があり、約150mの川幅をもつ江戸川を手漕ぎ船が往来します。中学生以上は200円で乗船できるので、さすらいの旅人気分で船に揺られてみてはいかがでしょう。⑪ 葛飾柴又レンタサイクル
寅さん記念館の近くには、観光文化センターB棟2階に「葛飾柴又レンタサイクルセンター」があります。茨城県まで続く江戸川提サイクリングロードを、自転車で颯爽と走ってみても楽しいです。自転車なら、北にある水元公園や南西にある鎌倉野草園にも行きやすいですね。⑫ 葛飾柴又寅さん記念館
遂にやってきました「葛飾柴又寅さん記念館」! 館内は、昭和時代にトリップしたかのようなセットが広がります。「男はつらいよ」の名シーンが流れたり、寅さんの人間関係図があったりと、初心者でも楽しめるようなつくりになっています。思わずポーズをとりたくなるセットを眺めながら、20分ほど滞在しました。⑬ 山田洋次ミュージアム
寅さん記念館を出たら、記念館との共通券で入館できる「山田洋次ミュージアム」を訪れてみましょう。こちらには、実際に撮影で使われた道具や映写機、山田洋次監督が受賞した数々の賞状やトロフィーなどが展示されています。若い世代にも知られる名作で、その場でも土産話でも話題が膨らむことでしょう。⑭ セピア
山田洋次ミュージアムを出て、帰路に向かいます。予定では、昭和レトロな雰囲気の喫茶店「セピア」を訪れるはずでしたが、取材日は残念ながら店休日。立ち寄った外観からは、オレンジ色と茶色のコントラストや少し色褪せた感じが、味のある雰囲気を醸し出していました。⑮ ALrT.TOKYO
セピアを訪れるなら、柴又に拠点を置く雑貨・アパレルメーカーが運営する雑貨店「ALrT.TOKYO(アルト・トウキョウ)」を覗いてみましょう。自然素材を活かした木製アイデア文具や木製玩具は、ドイツのデザイン賞も受賞している逸品です。⑯ おつけもの丸仁
電車に乗って帰路につく前に、柴又土産を帝釈天参道で物色します。悩みながら訪れた先は「おつけもの丸仁(柴又本店)」。柴又と浅草に店舗を構えるお漬物屋さんです。こちらでは、試食する中で気に入ったものを購入することができます。 筆者が手土産に選んだのは、「たけのこラー油きくらげ」と「べったら漬け」。ご飯のお供にも、酒の肴にもなる漬物を購入できて大満足です。約40種類の漬物を取りそろえるという同店は、家族やご近所さんにお裾分けしたくなる漬物が豊富でした。おわりに
寅さんのことを詳しく知らなかった筆者でも、半日存分に楽しめた街歩き。柴又は、軽食片手におしゃべりしながら散策できる、のどかなエリアでした。日々の仕事や家事で疲れがたまったら、フーテンの寅さんのように徒然なる街歩きをしてみてはいかがでしょう。他におすすめしたい街歩きスポット