INDEX
厳しい寒さがやわらぎ、サクラ咲き乱れる待望の季節が訪れると、街に繰り出してお散歩に行きたくなりますよね。第22弾となる街歩きは、混雑を避けながら桜を見てまわるのに絶好のロケーション「広尾(ひろお)」を巡ります。
有栖川宮記念公園のお花見スポット、そして広尾散歩通りの桜並木を愉しみながら、カフェや雑貨店、美術館を巡る半日散歩。今回は、そんな桜色に満たされながら春を満喫するプロムナードエリアをしっかりとご紹介します。
恵比寿や麻布からも徒歩圏内の広尾は、都内を代表する高級住宅街のひとつ。東京メトロ日比谷線が広尾駅に通ずる唯一の路線で、中心地の広尾散歩通りや有栖川宮記念公園を訪れるなら、広尾駅1番出口もしくは天現寺橋方面出口から地上に出ましょう。
① Nem coffee&Espresso
広尾には朝の時間帯に到着したので、有栖川宮記念公園のサクラを訪ねる前に、お洒落カフェでモーニングを頂くことにしましょう。有栖川宮記念公園の脇の南部坂を少し進んだ、住宅街の細い路地の先に「Nem coffee&Espresso(ネムコーヒー&エスプレッソ)」はあります。店先にはネムノキが飾られ、大きなガラス窓からも木の温もりが溢れる雰囲気が伝わってきます。 店内にはジャズミュージックが流れ、大きなカウンターテーブルや4人掛けのテーブル席があって穏やかな心地良さを感じます。注文したのは、タマゴサンドと焼き菓子カフェラテ紅茶。ミルクは牛乳だけでなく豆乳やオーツに変更できます。タマゴサンドはマスタードが効いていてパンもかりふわ、小麦の旨味を味わう系で絶品でした。ちなみに
海外の方など常連さんが多く、店内は商品を含めて撮影禁止なので注意しましょう。
② 有栖川宮記念公園
小腹が満たされたところで、お花見スポットに向かいます。「有栖川宮記念公園(ありすがわのみやきねんこうえん)」は、如何にも宮家の御用地といった名称ですが、江戸時代に遡ると元は旧盛岡藩主南部美濃守の下屋敷。その後、高松宮殿下が有栖川威仁親王の命日にちなんで公園として開園しました。 南部坂中腹の入口から入ると、まず広がるのが「児童コーナー」。子供向けの遊具や広場があるため常に保育園児たちで賑わいます。「花菖蒲園」には滝や渓流もあり、都心ではなかなか体験できない自然との触れ合いができるので、一児の母である著者も太鼓判の公園施設です。春には梅や桜、秋には楓や紅葉など、四季折々の木々を楽しめます。 さて、目的の桜はと言うと、有栖川宮記念公園の奥にある「笛を吹く少年像」の周辺に広がっています。像を中心としてこんもりとした芝生が柵で囲われ、そこでも子供たちが春の陽気を楽しんでいます。周りにはベンチが設置されているので、広尾橋交差点のベーカリーでパンを買って食べても穏やかな時間が過ごせるかもしれません。 有栖川宮記念公園に植えられた桜は、ソメイヨシノやヤマザクラを筆頭に11種類もの品種があると言います。花菖蒲園に咲く「アメリカ」という品種は、明治期に東京市がワシントン市に寄贈した後、昭和期に里帰り桜として採取された珍しい桜。池のほとりを歩きながら、薄いピンク色をした可愛らしい品種を探してみてください。ちなみに
公園脇の南部坂は盛岡城主南部家の屋敷跡だったことが由来で、忠臣蔵の南部坂は赤坂。
③ TruffleBAKERY(トリュフベーカリー)
広尾橋の交差点に店舗をかまえ、今や広尾のランドマークとなりつつある「TruffleBAKERY(トリュフベーカリー)」。レンガ造りの重厚さが伝わる建物からは、美味しいパンが焼き上がる信頼感が滲み出ています。広尾駅を出て有栖川宮記念公園に向かうまでの道のりにあるので、こちらでパンとコーヒーを買って公園散策を楽しんでも素敵です。 店内にひとたび入るとトリュフの香りで満たされ食欲がグッと掻き立てられます。トリュフベーカリーは、店名に冠した白トリュフの塩パンが看板メニュー。その味わいは病みつきになるほどですが、他にもレーズンバターサンドやクリームパンなども絶品です。ちなみに
2020年にオープンした広尾店は「神戸屋キッチン」の跡地で、広尾パン界隈の聖地。
④ 広尾プラザ
トリュフベーカリーの対角には、広尾ガーデンに併設するショッピングモール「広尾プラザ」が鎮座します。1階には「明治屋 広尾ストアー」を中心に「ディーンアンドデルーカ」や「スターバックスコーヒー」、「メゾンカイザー」などおしゃれで魅力的なラインナップ。 2階にも軽井沢の名店「沢村」のベーカリー&カフェ、絨毯・キリムの輸入販売店「広尾キリムギャラリーアナトリア」、子供向けにもヨーロッパの木製玩具「アトリエ ニキティキ」やフランス子ども服の「bidouillez」など上質な一級品を取り扱うショップが居並びます。ちなみに
前身は輸入商社の明治屋が建てたフードプラザで、90年代に建て替え現在に至ります。
日本橋 西川
広尾プラザで注目したショップが「日本橋 西川(にほんばし にしかわ)」。1566年の創業と歴史深い寝具店で、オーダーメイド枕と健康マットレスを専門に取り扱っています。こちらでは、ギフトコンシェルジュである筆者もよくお客様にご提案しているオーダーメイド枕をチェックします。 西川の店舗では、頸部の高低差を計測することで個々の体にフィットした枕をオーダーメイドすることができます。中に入れる素材は、触り心地を確かめながら好みの硬さを選んでいきます。空いている時間帯であれば、1時間ほどであっという間にオーダーメイド枕が完成するそうです。 西川のオーダーメイド枕で注目すべきはアフターサービス。やはり枕は実際に何日も使ってみないと相性が分からないものです。西川では購入後も体の変化や好みに合わせて中材を追加・減少できて、追加料金は必要ながら素材変更も可能です。オーダー枕のギフト券も用意されているので、ギフトシーンで一度利用してみてはいかがでしょうか。ちなみに
非接触の3Dスキャン計測でオーダー枕を作れるサービスを2021年4月から順次開始。
⑤ 兵左衛門(ひょうざえもん)
広尾プラザを出て、いよいよ広尾のメインロード「広尾散歩通り」に入ります。2017年までは通り沿いに店舗があった、兵左衛門の箸専門店「にほんぼう」が、脇道を入ったすぐに移転して「兵左衛門(ひょうざえもん)」と名称を一新していました。 兵左衛門は、若狭塗箸の産地である福井県小浜の漆塗り職人が大正10年に創業した老舗メーカー。「お箸は食べ物です。」をポリシーに、箸先部分には合成化学塗料を一切使わない安全安心な箸を提供しています。箸のギフトセットや名入れサービスなどギフト用途にも対応していて、正しい箸の持ち方レクチャーも随時店内で行なっています。ちなみに
2009年には当時の麻生総理大臣を通じてオバマ大統領に贈られた箸として話題に。
⑥ AND THE FRIET
広尾散歩通りに面した「AND THE FRIET(アンドザフリット)」はフレンチフライ専門店。ヨーロッパには数多くあるものの、創業当時日本ではあまり見かけることのなかった真新しいフライドポテトの専門店は、2013年の広尾本店オープンによって一大センセーションを巻き起こしました。 専門店が故にやはりフレンチフライは絶品ですが、手土産やちょっとしたお礼に使える「ドライフリット」は特にオススメしたい逸品。水分を飛ばしたザクザク食感と、濃いめのフレーバーにお酒や炭酸飲料がよく合います。メンズにも満足なボリューム感も嬉しいポイントです。ちなみに
パッケージに描かれたイラストは、世界的に活躍するAnje Jager氏の描きおろし。
⑦ 香林院(こうりんいん)
広尾駅から広尾散歩通りを進んだ先に、臨済宗大徳寺派祥雲寺の山門が見えてきます。そこを通り抜けるといくつもの寺社が集中しているエリアが広がり、その一角に「香林院(こうりんいん)」があります。こちらは寛文五年(1665年)に松平氏の菩提寺として建立された臨済宗のお寺。 香林院では、月~金曜の朝7時から、そして日曜の17時から、予約不要・参加費無料の坐禅会を開催しています(開始10分前の入室、途中入退場は不可)。また、写経・写仏画や法話会、オンライン座禅も開催されていて、一般の人でも仏教の習わしを体験しやすいお寺。震災と空襲を免れ現存する茶室は一見の価値アリです。ちなみに
香林院・宗信和尚の法話「ちょっといい話」が、YouTubeで配信中。
⑧ AFRIKA ROSE
祥雲寺の山門の角を曲がり進むと、色鮮やかな花々が商店街を明るく彩る「AFRIKA ROSE(アフリカローズ)」が佇んでいます。世界最高品質と称されるケニアのバラを直輸入しているというバラ専門のフラワーショップは、2015年に広尾散歩通りに店舗をオープンさせました。 ケニアのバラは、日本で見かけるものよりも1.5倍から2倍ほどの大きさがある大輪。たくましい生命力を感じるとともに華やかでグラデーション豊かなバラは稀有な贈答機会にうってつけです。店名のアフリカは「AFRICA」ではなく、ケニアのKをとって「AFRIKA」なのでお間違えなく。ちなみに
レッスンプラン「自分でつくるプロポーズブーケ」は成功率が100%とも(お店調べ)。
⑨ 椿宗禅(つばきそうぜん)
アフリカローズから少し歩みを進めたところにあるお茶の専門店「椿宗禅(つばきそうぜん)」も、広尾に訪れたらチェックして欲しいお店です。渋谷で30年愛された日本茶専門店「ながた茶店」が広尾に移転し、紅茶やフレーバーティーを加えた約200種類の世界のお茶が揃うお茶屋として2015年にオープンしました。 店内はさすが専門店と言わしめるほど豊富なバリエーションのお茶が所狭しと並び、ギフトで贈りたくなる可愛らしい絵柄のパッケージが目を惹きます。いくつかの紅茶を試飲させてもらった中で注目したのが「春いちごの紅茶」。イチゴのドライフルーツがゴロっと入っていて、香り高いフレーバーに春の息吹を堪能できる紅茶です。 他にも「パン専用紅茶」と銘打たれた紅茶は、フレーバーをつけていないシンプルな紅茶で、パンの香りを邪魔しない一杯としてオススメ。「100年飲み飽きない味」を目指したというのも納得の毎日飲みたくなるような紅茶は、一度試したらハマってしまいそうな病みつき感があります。ちょっとしたお礼に贈りたくなる「ほんの気持ちです」や「おつかれさまブレンド」をギフトセットにしても良いかもしれません。⑩ FabuDine.(ファビュダイン)
椿宗禅の向かいに新しくオープンした「FabuDine.(ファビュダイン)」は、お粥とワインを同時に楽しめるオーガニックお粥バル。取材日は残念ながら店休でしたが、朝から広尾散歩を始めていると丁度小腹が空く時間帯に訪れることができるので、是非とも立ち寄ってみることをオススメします。 野菜のお粥や海藻がたっぷりのお粥など、ヘルシーなラインナップもさることながら、通常サイズとスモールがあり女性には嬉しい気遣いを感じます。サラダや盛り合わせ、大山鶏や牛イチボなどの一品料理もあって調節もしやすそう。ほっこり感のあるキュートな内装で足休めをしてみてください。ちなみに
月曜日が定休で当面は日曜日も休み、ホームページでのインターネット予約が便利。
⑪ 東京江戸味噌
広尾散歩通りから明治通りに出ると(この周辺も広尾散歩通りという名称が付いているそう)、満開になった桜を見上げながら散策を楽しむことができます。比較的人通りが少なく、混雑を避けながら桜並木をてくてく歩きたい人に自信をもってオススメできるコースです。 交番前の路地を少し入ってみると、和モダンの気になる建物が視界に入り立ち寄ってみました。かつては江戸前の味のベースとして存在しながらも、戦争を機に幻の味噌となってしまった江戸味噌。それを70年ぶりに復活させ、現代風にアレンジした専門店「東京江戸味噌(とうきょうえどみそ)」です。 暖簾をくぐると早速、4種の味噌をかつおだしで溶いたものを試飲させてもらいました。塩分や麹歩合、製法が異なる味噌はそれぞれ異なる旨味や香りを持っていて、その日の気分に合わせた味噌を使いたくなります。 江戸味噌は煮立たせても香りが飛ばないので、煮込み料理にも向いているそう。子供を見ながら食事の支度をしていると、お味噌汁をつい煮立たせてしまいがちな私はすぐさま購入を決めました。ちなみに
試飲で感激して鰹節パックも購入。鰹節だけで出汁をとるのが江戸料理の本来とのこと。
⑫ 有田焼やきもの市場
明治通りをひたすら進み、恵比寿橋を越えた辺りには、陶器好きなら訪れておきたい「有田焼やきもの市場」が店舗をかまえます。その名の通り有田焼の専門店で、佐賀県有田町の老舗問屋が運営している肝いりの専門店です。 有田焼は見た目の華やかさを持ちながら、日常的に使いやすいデザインが特徴で初心者にも選びやす点が特徴。こちらでは高品質ながらお値打ち感のある有田焼を物色することができます。 皿・鉢・湯呑・飯碗・茶碗などの日常和食器から、伝統的な飾り皿・壺・花瓶・茶器など、3000品を超える品揃えに驚かされます。もちろん名入れ品も取り扱いがあるため、出産祝いや退職祝いなど慶事ギフトを探している人にもオススメです。⑬ FALAFEL BROTHERS
渋谷橋交差点から駒沢通りを青山方面へ進むと、ヴィーガン料理専門店「FALAFEL BROTHERS(ファラフェルブラザーズ)」が見えてきます。こちらでは、すりつぶしたひよこ豆にハーブ類を混ぜて団子状にして揚げた「ファラフェル」や、ひよこ豆のペースト「フムス」など、ビーガンフードを楽しむことができます。 少し疲れてきた足を休めながら注文したのは、ピタパンにファラフェルとたっぷりの野菜をはさんだ「ブラザーズサンドイッチ(ハーフ)」のセット。フライドポテトとドリンクがついてきます。もりもりの野菜を美味しく食べられることができて大満足。スパイスが効いたファラフェルや卓上の調味料は病みつきになります。ちなみに
ヴィーガンスイーツとともに、夜はワインやビールを楽しむこともできます。
⑭ BELTZ
さらに駒沢通りを進んだ先に立ち寄ったのがバスクチーズケーキ専門店「BELTZ(ベルツ)」。ここでは、お土産に1人分サイズのSmallを購入。店員さん曰く、こちらのバスクチーズケーキは、他店で作られるものよりも甘さ控えめなので、バスクチーズケーキを始めて食べる方やお子さんにおすすめなのだとか。 後日食べたところ、なめからでクリーミーなチーズケーキと焦げ目の渋みがナイスマッチ。1人分とは言うものの、ずっしりと重厚感のあるケーキはなかなかの食べ応えです。私には子供と半分こしてちょうどいいサイズで、子供はお皿についたチーズケーキも一生懸命スプーンで集めていました。⑮ 山種美術館
いよいよ広尾散歩の執着地「山種美術館(やまたねびじゅつかん)」に到着しました。全国初の日本画専門の美術館として知られ、山種証券(現SMBC日興証券)創業者である山崎種二氏らが収集したコレクション品を鑑賞できます。ゆっくり回っても30分程度なので、気を張らずに美術品に触れる機会を得られるのではないでしょうか。 また、同館1階にはカフェ「Cafe 椿」があります。ガラス窓からのイチョウ並木を眺めながら、芸術鑑賞の余韻に浸る時間も良いひと時です。特別展に合わせたオリジナル和菓子は、目にも楽しい一品。抹茶と合わせてほっと一息つきましょう。ちなみに
120点に及ぶ速水御舟の作品が収蔵され「御舟美術館」としても親しまれています。
おわりに
桜が見頃の季節にもってこいな広尾散歩。歩道がしっかりと整備されているため歩きやすく、混雑を避けながら春の様相を満喫することができました。朝食や昼食をテイクアウトで注文して有栖川宮記念公園でのんびりしたり、早朝や夕方に訪れて香林院の座禅を体験してみても面白いかもしれません。
帰路は恵比寿駅まで歩けば交通の便もバッチリ。恵比寿でダイニングやバーを楽しんでも良し。意外と訪れる機会がなかった広尾は他の街にも繰り出しやすく、散策プランも柔軟に変更しやすいのでデートにもオススメです。お花見から美術館までを網羅した桜色の広尾散歩に出掛けてみてはいかがでしょう。
他におすすめしたい街歩きスポット