芯から冷えるような日が減っていよいよこれから春本番。自宅の窓際で育てているアロマティカスも冬を乗り切り元気になってきました。もう少ししたら植え替えの時期、新たに買った植木鉢を使うのが今から楽しみです。
さて今回の散策は虎ノ門です。多くの高層ビル群を抱える港区の中で北側に位置するこのエリアは「国際的ビジネス拠点」地区としてグローバル企業の誘致を目的とした再開発が長らく行われています。
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再開発によってオープンした一番有名な施設が「虎ノ門ヒルズ」。昨年23年10月のステーションタワー開業をもって主要タワー4棟が全面開業となりました。日々進化し続ける注目スポット虎ノ門、これは今まで訪れた街歩きの中でも、群を抜いて最先端の街歩きになるのでは? 春めく陽気に心を躍らされながら虎ノ門へと繰り出したのでした。
JRユーザーの筆者は新橋駅から出発。SL広場を通り東京メトロ虎ノ門駅方面へ向け歩き始めます。JR新橋駅と東京メトロの虎ノ門駅の間は都道405号線(通称外堀通り)を真っすぐ進むだけ。途中都営三田線内幸町駅を通り過ぎ徒歩10分程度で、無理なく歩ける範囲です。
目次
① 田村町木村屋
外堀通りを進んでいくと内幸町駅のある日比谷通りとの交差点に1軒のお菓子屋さんがあります。「田村町木村屋」はあんぱんで有名な銀座の「木村屋」から暖簾分けしたお店です。暖簾分けというと創業年数の若いお店をイメージしますが、このお店の暖簾分けは1900年(明治33年)のこと。すでに立派な老舗洋菓子店です。
朝9時から営業していて、20席程度のイートインスペースもあるのでモーニングとして利用することもできます。お店に入ると手前にケーキが並ぶショーケース、奥がイートインスペースです。
平日の朝ということもありイートインスペースの先客は1組。BGMも音量小さめでゆったりした朝の始まりにはぴったりの空間です。
朝は血糖値を一気に上げていく派なのでコーヒーとクルミのキャラメルタルトのセットを頼みました。個人的には理想の朝食です。甘いもの苦手な方には惣菜系キッシュも数種類ありますので、そちらをぜひ。
コーヒーを飲みながらくつろいでいる最中、手土産用に箱詰めして包装された焼き菓子を買いに何組もお客さんが来ました。スーツ姿の人も多く、お得意先に持って行くのかしらと妄想してみたり。使い勝手の良いお菓子屋さんが会社の近所にあると便利ですよね。
またバナナケーキも人気の商品の一つ。薄くもっちりした食感のクレープ生地にバナナとカスタードクリームを包んであります。クリームとバナナはクレープ生地にきっちりくるみこんであるので手にもって食べられお手軽。324円というお手頃さも今の時代とても嬉しいです。
新橋から虎ノ門にかけてはカフェ、喫茶店が多い地域です。歩いていると道の左右そこかしこに見つけることができます。コーヒースタンドも多くビジネスマンが一息つく憩いの場になっているのかもしれません。
数ある喫茶店の中でも有名なのが「ヘッケルン」。名物のプリンがメディアやSNSで取り上げられ一躍行列のできる有名店となりました。
10時頃、店舗前を通った時は平日にも関わらず7、8組並んでいました(席は時間で区切る完全入れ替え制をとっているみたいです)。意外にも並んでいるのは外国人の方が多いです。TikTokで人気が出た模様。海外の方にも昭和レトロブームがあるのでしょうか。訪日目的の多様性が見える気がしました。
② 日本の酒情報館
街歩きに戻りまして。木村屋でのモーニングを終え、外堀通り沿いを虎ノ門の駅へ向け歩いていくと「日本の酒情報館」があります。ここは日本酒や焼酎、みりんなどの製造元が組合員になっている日本酒造協同組合連合会が運営する施設。組合員が製造した酒類常時100種類以上の銘柄が取り揃えられており、100円から試飲ができ、気に入ったものは購入も可能です。
まだまだ午前中なんですが失礼して…。日本酒素人にも違いが分かりやすそうな飲み比べセットを注文してみました。少量での飲み比べは酒に弱い人間には大変有難い。比べてみるとなるほど、確かに匂いや味わい、後味など全然違います。熟成タイプの香りと味わいの深さは感動ものです。
平日の午前中ということもあり空いていました。男性の常連さんが一人、新しいの入った?などと店員さんと会話しながら入店、席に着くと吟味しながらお酒を選んでいます。これだけ銘柄豊富だと何度も通いたくなるのも頷けます。心の中で常連さんと勝手に絆を深めつつじっくりと試飲を楽しみました。
ちなみにお酒が飲める場所ですが居酒屋ではないので営業時間は18時まで。筆者は背徳感がたまらない午前中の訪問を推したいです。
海外向けの焼酎の紹介冊子。アメコミ調の漫画をまじえて焼酎を分かりやすく紹介しています。館内には英語のフリー冊子も数種類置かれていました。日本を体験しにくる海外からのお客さんにオススメできる場所です。
③ 虎ノ門きや
ほろ酔い気分で日本酒の情報館を後にし、いい気分のままふらりふらりと外堀通りから外れて脇道に入ってみました。すると高層ビル群の中にあって珍しい2階建ての比較的新しい建物が。「GATE虎ノ門」、あとで調べてみると、虎ノ門における再開発途中の仮設店舗として2026年までの営業が予定されている商業施設なのだそう。書店やクリニックなど、周辺で営業していたお店がテナントとして入っています。
そのうちの一つが「虎ノ門きや」。虎ノ門に70年以上ある老舗のお菓子屋さんですが、新しいアイディアにあふれた珍しい商品を買うことができます。
コミカルな絵柄の付いたお煎餅。厚めの海苔がお煎餅全体を包み込んでいます。
手前に置いた鮮やかな緑のお菓子はグリンピースを使用しているおこし。砂糖がからめてあり節分に食べる大豆のような風味があります。おせんべいと並べてみるとおしゃれなお茶請けの出来上がり。見た目の楽しさと目新しさにお茶の時間の話題にもなりそうです。
④ TARO TOKYO ONIGIRI
きやから2~3分歩いた場所におにぎり屋さんを発見しました。「TAKO TOKYO ONIGIRI」とあります。おしゃれな外観に興味をそそられ入店して品ぞろえを眺めてみました。
厳選素材のマリアージュがテーマになっているお店だそうで、品ぞろえは定番具材からなかなか見かけない変わった具材までバリエーション豊かに取り揃えています。個別のおにぎりの他、ランチ用にセットになったお弁当もありました。
お店には周辺に勤めているらしきお客さんが次々と入って行きます。虎ノ門は昼間に急激に増える周辺人口に応えるよう飲食店も多いですが、おにぎりはやはり別格のソウルフード、いろんな具材が楽しめるとなると毎日でも通いたくなりそうです。
⑤ 金刀比羅宮
おにぎり屋さんから2ブロック西に行くと国道一号線が横切ります。この道路を北上すると虎の門駅、南下すると虎ノ門ヒルズに着きます。まずは北上して虎ノ門駅付近の散策から。
50メートルも歩くと堂々たる佇まいの鳥居が見えてきます。1660年に讃岐藩主によって香川の金刀比羅宮より分霊(本宮の御神祭を別の場所で祭ること)して創建されました。
御神祭は大物主神と崇徳天皇。大物主神と言えば前回散策した北千住で、足立市場内にあった神社と同じ神様(北千住の街歩き記事)。崇徳天皇は不遇な人生を送り、崩御後祟り神と恐れられたことから御神祭として神社に祭られることが多い神様です。
琴平タワーのプロムナード部分が神社の参道にあたり、ランチの移動販売の車が複数止まっていました。神社ではあまり見ない光景に少し驚きましたがフランクフルトやイカ焼きなどの屋台と同じ感覚だと思えば境内が賑やかになるのは良いことのように感じます。
作務所はビル一階、なんとも近代的な雰囲気です。琴平ビルを抜けると青銅製の鳥居と立派な本殿。思いのほかビルと調和した印象を受けたのは、神社とこの土地の歴史に敬意を持ってビルが設計されたからなのかもしれません。商売繁盛にご利益がある神様なのでスーツをきたビジネスマンも多く訪れていました。
お参り後、参道のベンチで紅鮭のおにぎり(おにぎり屋さんで買ってました)を休憩がてら食べました。最近のおにぎりはお米粒が口の中でほどけやすいよう緩めにに握ってあるものが多いですが、結構しっかり握ってあります。昔ながらのおにぎり、という感じがしてこれはこれで良いです。個人的にはお米大好きなのでもう少し大きいサイズだとさらに嬉しい。
⑥ 旧文部省庁舎
休憩もそこそこに金比羅宮を出てさらに北上すると、すぐに東京メトロの虎ノ門駅のある外堀通り(木村屋と日本酒の情報館がある通り)との交差点に出ます。虎ノ門の名前の由来は江戸城の外堀にあった門で、ちょうどこの辺りに「虎御門」がありました。
当時は外堀の水の流れをせき止める堰堤(えんてい)として、あたり一帯ため池になっていました。明治時代に門が撤去されてからも馴染みのあるその名が町名として定着、現代に至っています。
この交差点の角にあるのが旧文部科学省庁舎。関東大震災後の1932年に建てられた国の登録有形文化財で、重厚なレンガ造りの建物は長年虎ノ門の「顔」として街を見守ってきました。建物裏手には当時の外堀の石垣の一部が今も残されています。
前回歩いた北千住の郵便局電話事務室と同じスクラッチタイルの外壁ですが、窓枠部分のタイルは事務室が曲線、庁舎が直角タイル(北千住の街歩き記事)。細かい差ですが違いを見つけると建築物見学もちょっと楽しくなりますね。
この文部庁舎の北側にある坂道が三年坂。江戸時代からある坂で、現在は坂の北側が財務省、南側が文部科学省庁舎になっていますが当時は門の内側、一帯が大名屋敷のあるエリアでした。昔からの路地も結構残っているので、古地図がみられるアプリ片手の散策も楽しいと思います。
来た道を引き返し、国道一号線を南下、虎ノ門ヒルズ方面へと歩きます。
途中レトロなフォントの趣のあるお店があり、金比羅宮へ向かう際にも気になっていたのでショーウィンドウを覗いてみました。トロフィーや記念メダル、社章などの専門店なんだそう。サンプル品がたくさん並べられています。ビジネスエリアの虎ノ門だと確かに需要がありそうです。
多様な品ぞろえを眺めていると子供の頃集めていたご当地ピンバッチを連想し懐かしい気持ちになりました。集めたバッチ、どこに仕舞ったんだったっけ。
⑦ HOTARU NO HIKARI(ホタルノヒカリ)
ずっと眺めていられそうなショーウィンドウに後ろ髪を引かれつつ先へ進みます。
しかしまた50mと行かないところで気になるお店を発見してしまいました。「HOTARU NO HIKARI ホタルノヒカリ」、珍味、おつまみに特化した専門店です。
中に入ると番号が書かれたパッケージが壁面にずらりと陳列されています。番号ごとにおつまみの種類が異なっていて、基本的にどれも乾物ですが、肉、海産物、果物、ナッツなど好みによって幅広い食材から選ぶことができます。家で飲むときは気の利いたつまみを用意することはほとんどない筆者ですが、こんなに可愛らしいパッケージが並んでいたら買わないわけにはいきません。
No.0「ホタルノヒカリ(ホタルイカのいしり干し)」と、No.46「アジわう(焼き鯵の燻製)」、先ほど試飲した日本酒にやや引っ張られたチョイスですが、購入してみました。どちらもしっかり目の味付けでお酒のアテにうってつけ。食べきりサイズの容量と可愛らしいパッケージは、お酒を嗜む女性への贈り物にピッタリです。ギフトボックスも用意がありますよ。
⑧ 虎ノ門ヒルズ
ホタルノヒカリを出て道路を挟んだ南側が虎ノ門の新しい顔となった「虎ノ門ヒルズ」です。2014年に開業した「虎ノ門ヒルズ森タワー」を皮切りにビジネスタワー、レジデンシャルタワーと続いてオープンし、昨年のステーショナリータワー開業で主要4棟の建設を終えました。4棟それぞれに商業施設が入り日々訪れる人で賑わいをみせています。
虎ノ門ヒルズのイメージキャラクターといえば22世紀のトーキョーからやってきたビジネスロボットの「トラのもん」。モノトーンのすっきりした姿は子供だけでなく、大山のぶ代さん世代にも刺さるキャラクターデザイです。可愛い。
ヒルズ内ではトラのもんのオリジナルグッズも販売されており、施設のところどころで彼の姿を見ることができます、見つけるとちょっと嬉しくなってしまいますね。
トラのもん以外にもヒルズ内を散策する際に注目して欲しいのがアート作品。敷地内の至る所でパブリックアートが展示され虎ノ門ヒルズ全体が美術館のようになっています。現代作品が中心で、絵画、立体像、インスタレーションと表現手法は様々。新たな芸術家との出会いがきっとあるはず。
上の画像は敷地内の展示品の中でも一番目につくオーバル広場にある巨大な座る人の像。スペイン・バルセロナ出身のジャウメ・プレンサの「ルーツ」という彫刻作品です。8つの言語の文字で人体が構成されて、多様性と調和を表しているとのこと。街歩きをした日はあいにくの曇りでしたが青い空を背景にした美しい白い像はさぞかし映えそう。
数々の芸術賞を受賞した著名な芸術家である彼の作品は地元のスペインをはじめ、アメリカ、カナダ、シンガポールと世界中にあります。日本ではこの虎ノ門ヒルズと瀬戸内海に浮かぶ男木島の船の発着場で彼の作品を見ることができます。男木島もいつか行ってみたいな。
天を指し示す猿の像。「matter」という題名がついていますが、皆様はどのようなメッセージを感じますか?
さらに至る所にあるといえば「虎」。ヒルズ内にある飲食店やギフトショップでは虎ノ門ヒルズ限定の商品が販売されていて、中には虎柄を模したスイーツやグッズも。虎ノ門土産として渡す人それぞれの好みに合ったものが必ず見つかるはずなので、一店舗一店舗じっくり覗いてみて下さい。
建物内部はかなり立体的な構造になっていて、今何階にいるのか分からなくなります。
⑨ TOKYO NODE
虎ノ門ヒルズ内、ステーショナリータワーの開業に伴い、新たな東京の名所がまた一つ誕生しました。「TOKYO NODE」、結節点を意味する「NODE」を冠したビジネス、アート、エンターテインメント、テクノロジーなど、あらゆる分野のコラボレーションによってまだ見ぬ新しい世界を創造する情報発信の拠点です。もうすこし分かりやすい言い方をすると、最新設備のギャラリーやラボ、ホールを持ったイノベーションスペース、といったところでしょうか。
まずは8階へエレベーターで上がります。そこからカフェの横にあるエレベーターでさらに45階へ上がりっていく、という流れです。ちなみにTOKYO NODEが有するエリア内にも複数の飲食店があり上層階のレストランでは東京を一望する素晴らしい景色を眺めながら食事をすることができます。
エレベーター入口の近未来感。この通路入っていってもいいのかしら?とびくびくしながら洗練された通路を進むとその先にエレベーターがあります。
45階に上がってきました。このフロアにはレストランとインスタレーションや立体展示に対応できる最新設備を有するギャラリースペースが3つあります。
ここで展示会やイベントが行われるのですが、訪れた日はちょうど数日前に蜷川実花さんのイベントが終了したタイミングでした。イベントが開催されてないためフロアは閑散としていましたが、これはこれで眺望独り占めの得した気分です。まだまだオープンしたばかり。きっとこれから何回でも訪れる機会はあるでしょう。
本来であれば虎ノ門ヒルズの紹介だけで十分一日過ごせるのですが今回は大まかな見どころのみにして、各店舗のご紹介はまた別の機会に。せっかくの街歩き記事、もう少しだけ周辺を散策してご紹介していこうと思います。
今回の虎ノ門ヒルズ戦利品はビジネスタワー1階の鶴屋吉信で購入した「IROMONAKA」。希少小豆の馬路大納言をしようしていてカラフルで愛らしい見た目ですが、大粒の豆がつぶされずに残っており、しっかりと素材の味を感じる王道の和菓子でこちらも手土産にぴったりです。
虎ノ門ヒルズの主要4タワーは完成したことはすでに書きましたが、虎ノ門ヒルズに接する道路は現在も整備真っただ中で画像のような状態です。工事中の箇所を避けながら歩き、虎ノ門ヒルズの南側のエリアを目指します。
⑩ 岡埜栄泉
国道1号線を南下し100メートル程歩いたところに「岡埜栄泉(おかのえいせん)」があります。もとは上野にあった総本家(現在は閉店)からの暖簾分けで開いたお店だそうですが、昭和元年創業と、朝立ち寄った木村屋さん同様、立派な老舗の和菓子屋です。ここの名物と言えば豆大福。遅い時間に行くと売り切れていることもあります。
せっかく来たのだから豆大福買いたい…いやでも、さっき鶴屋吉信で最中買ったし、買いすぎだよな…諦めかな…。
まあ買ってしまいますよね。これ道理なり。相変わらず柔らかく風味豊かなつきたてのお餅と甘めの滑らかなこし餡がとても美味しいです。
賞味期限は当日のみですが、手土産としての人気は絶大で、箱でまとめて購入する常連らしきお客さんもたくさん来店していました。頬張りながら味と品質への信頼感が老舗を支えているのだとしみじみ感じます。
⑪ みなと科学館
岡埜栄泉の西側、こちらも虎ノ門ヒルズ南側エリアにある「港区立みなと科学館」もぜひ訪れて欲しい場所のひとつ。「まちに息づく科学の発見と探求」をコンセプトに2020年6月に開館したまだまた新しい施設です。もともと日本最初の公立小学校があった場所の跡地に建てられています。それにふさわしく体験学習施設として周辺の学校に利用されていますが、一般の人も無料で入館することができます。
一階では身の回りにある身近な科学を体験しながら紹介。模型や体験型の実験を多く盛り込み、幅広い分野の英知をお子さんにも分かりやすい工夫がされています。
訪れた平日の午後は数組の親子連れが楽しそうに実験をしていました。笑い声が響いてとても楽しそう。虎ノ門ヒルズにも近いので買い物のちょっとした待ち時間に立ち寄ることもできそうです。
二階には気象庁の気象科学館とプラネタリウムです。プラネタリウムは800万個の星を映し出すことのできる光学式投影機「オルフェウス」によって一時間半に一回番組が投影されます。各回それぞれ番組が異なり、アニメキャラが登場する子供向けの演目やお昼休み、終業後のビジネスマンのヒーリングタイムを演出する番組など様々です。
お子様を対象にした気象庁の予報をゲーム形式で体験することができるモニター。空いているのにかこつけて大の大人が一人で贅沢に体験してみました。改めて考えると意外と分からない知識もあり思いのほか難易度高めです。
展示内容は多岐に及び丁寧に作り込んでいるなという印象でした。すべての展示をじっくり見て回ると見ごたえ十分で大人でも一日楽しめてしまいます。
満喫しきった科学館を出て、建物脇の坂道を上がりました。かなりの急こう配で上ったあたりはかなりの高台。江戸時代、高い建物がなく、丘の上から周辺地域を見渡すことができました。江戸城方面に伸びる当時から残っている坂は「江戸見坂」というなんとも風流な名前です。当時の武士はここを下りながら江戸城内を目指していたのかしら。思わず古い時代に思いを馳せてしまいます。
⑫ 菊池寛実記念 智美術館
江戸見坂の道路を挟んだ向かい側には中が全く見えない高い壁が続いています。京葉ガスの会長を務めた菊池智の蒐集した現代陶芸作品を中心としたコレクションを展示する美術館「菊池寛実記念智美術館」の外壁です。
壁の切れ目から中に入ると正面委美術館本館、右手の脇には菊池智の父で明治から昭和にかけて活躍した実業家、菊池寛実の自宅が残っています。美術館内もじっくり鑑賞したいところですが、科学館で遊びすぎて閉館ギリギリだったので今回は家屋の見学だけさせてもらいました。
大正時代に建てられたこちらの建物、洋館で国の登録有形文化財に指定されています。
武士の時代が終わり明治に入ると、大名屋敷の跡地には財界で活躍する富豪たちの邸宅が立ち並びました。その一角として1925年に竣工された菊池寛実の西洋館は洋風でありながらどこか日本的な印象を受けます。
レンガ積みと柱の縦ラインが目を引く瀟洒なファサード。お客様を迎え入れる玄関扉の上部についているステンドグラスはティファニー社製です。当時はアールデコ全盛期で当時の流行を取り入れたデザインになっていて建物へのこだわりが見てとれます。
背後には高層ビル、都会の真ん中にあって静かで穏やかな空間は訪れた人の日ごろの疲れをいやしてくれるはず。
⑬ 大倉集古館
智美術館を出てさらに坂を上るとホテルオークラがあります。1962年開業の老舗ホテルは「ホテルオークラ」の名で親しまれてきましたが本館建て替え後の再開業時に「The Okura Tokyo」に改められています。海外から人が集まる場所ならではの改名ですね。
そのオークラの敷地内、本館も向かい側にあるのが「大倉集古館」です。大倉財閥の創始者である大倉喜八郎が蒐集した美術品を展示していて、現存する日本最古の私設美術館です。展示品は仏像や和歌集、日本画など古美術品が中心で国宝も3件所有しています。
建物自体も戦災を免れた国の登録有形文化財。大きく反り返った屋根とアーチが連なる正面顔は異国情緒を感じさせます。智美術館とは同じ有形文化財ながら意匠のアプローチの仕方が全く異なっていて興味深いです。合わせてまわって建物の違いを見比べてみて下さい。
- おわりに
虎ノ門の街歩きは、いかがでしたか? 再開発により最先端のエリアになった虎ノ門ですが、日々新しいスポットが生まれると同時に意外にも江戸、明治期の名残がみられる歴史感じる街でもありました。
虎ノ門には今回ご紹介できなかった注目スポットがまだまだたくさんあります。これからできるであろう新名所と合わせて遠くない未来にまた改めて訪れてみたいと思います。
この記事を書いた人
フクロモモンガと暮らすジュエリーデザイナー。ショールームコーディネーター、ジュエリーアドバイザーなどの豊富な接客経験から「人の気持ちに寄り添った商品提案」を行うことをモットーとしている。ヴィンテージマグカップ集めと刺繍が趣味。