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新年が明けると、間もなく訪れる日本の伝統行事が「節分(せつぶん)」です。節分の時期というものは大抵の人が共通認識をもっていますが、何をどうやって行なうかに関しては人それぞれ思い付く事柄が異なるのではないでしょうか。
そんな国民の行事ともいえる節分の日は、大切な人への感謝を伝えるギフトシーンとしても活用されます。本記事では、節分の起源に関するご紹介からはじまり、節分イベントの様々な楽しみ方、そして贈り物マナーについて解説します。
日本の伝統行事「節分」とは何か
節分という言葉自体は本来、四季それぞれが始まる日(立春、立夏、立秋、立冬)の前日を意味します。節分は「季節」を「分ける」ことが語源になっているといわれ、季節の変わり目をより細かく区切るために設けられた「雑節(ざっせつ)」のひとつにも数えられます(雑節には他に彼岸や入梅などがあります)。
現代では、特に日本で節分というと、立春[2月4日頃]の前日を指し、福豆を撒いて年齢の数だけ豆を食べる厄除け行事とされています。節分はもともと中国から伝来した、年越しに行なわれる厄除けの習慣であるものの、現代の中国では旧暦の元日[2月13日頃]を旧正月として大々的に祝うため、今では日本独自のイベントとして定着しています。
節分の読み方については、現代では「せつぶん」と読むことが一般的で、枕草子(第二十三段/すさまじきもの)など取り分け古典では、“まいて節分などは、いとすさまじ” とあるように「せちぶん」と読みます。節分にもてなさないことは酷く残念と書かれているように、平安時代にはすでに節分の習慣があったのでしょう。
中国から伝来した節分の起源
節分は、古代中国で大晦日に行なっていた「追儺(ついな)」という邪気祓いの行事が起源といわれています。追儺とは、中国の庶民の間では「儺(ヌオ)」といい、桃の木でつくった弓矢を射って邪神や疫病に見立てた鬼を追い払う行事です。
この庶民による「儺」に対して、中国の朝廷では祈祷師による厄払いの行事「大儺(たいな)」が催されていて、それが日本にも伝わり「追儺」として宮廷の年中行事になったといいます。
追儺は飛鳥時代にはすでに取り行われていて、中国同様に「方相氏(ほうそうし)」と呼ばれる祈祷師の役の人達が、宮廷内を掛け声をかけて回っていたそうです。そこでは、方相氏をサポートする貴族達が弓を放ったり、太鼓を振って鬼を威嚇しており、これが現代の節分の儀式に通じているといわれています。
その後、中国では儺が「害のある迷信」と見なされ消失していき、日本でもやがて追儺の文化は一旦無くなったとされています。しかし、庶民の間では、江戸時代頃から追儺を模した節分の行事が盛んになり、「豆まき」「鬼退治」といった厄除けの行事として根付いていったそうです。
ついでながら、中国の大儺でも五穀を用いて厄除けをしていた記録があり、日本の庶民間でも手に入れやすい豆を撒く行事として定着したと考えられています。また、もともと鬼を追い払う側だった方相氏が、やがて鬼役として追い払われる側になったのは日本独自のものだそうです。
節分の日は具体的にいつか
節分の日とは、前述のように立春[2月4日頃]の前日です。ここで節分の日を「2月3日」と書かなかったのには理由があり、立春の日自体は暦(太陰太陽暦)で決められた二十四節気のひとつであるため、地球や太陽の動きによって微妙にズレが生じます。太陰太陽暦では、うるう年によってこのズレを補正しますが、うるう年でも完全に補正しきれないため、立春などの二十四節気も日付が変わる年があり、節分もそれに伴い変動します。
過去の節分の日をみてみると、2020年から1985年までは2月3日、それ以前は1984年を境にしばらく4年に1度が2月4日になっています。すなわち、2021年を現在とすると、節分が2月3日以外になるのは37年ぶり(1984年以来)、2月2日になるのはなんと124年ぶり(1897年以来)です。ちなみに、2021年からはしばらく4年に1度が2月2日となります。
端的に言うと、節分の日は基本的には「2月3日」でありつつ、2021年が「2月2日」となるように、しばしば「日付が変動する」ことになります。各協会で制定された記念日でみてみると、2月2日は「夫婦の日」、2月3日は節分の豆まきにちなんだ「大豆の日」となっているため、2月2日が節分の日となる2021年は、節分を夫婦の行事として催してみても楽しいかもしれません。
春の挨拶にもってこいな時期でもある
立春は、暦の上では春の気配が立ち始める日とされています。実際のところ、九州地方では梅が咲き始めたり、大陸性気候の中国内陸部では気温が上がり始めたりするようです。ギフトシーンとして考えてみると、立春の前日である節分に春を感じるギフトを贈って、明日からの春を先取りしてもらうなんて素敵ではありませんか。
特に、新年が明けてからしばらくは主だった贈答イベントが少なく、節分は小さい子供がいる家庭にサプライズギフトを贈ったり、職場の上司や取引先に対する春の挨拶にもってこい。ちなみに、伝統的な季節の挨拶として知られる寒中見舞いは小寒(1月6日頃)から立春まで、立春を過ぎると余寒見舞いと呼ぶそうです。
節分の日には、何をどうするのか
節分といえば、子供の頃に経験した「豆まき」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。ここでは、豆まきに代表される節分の催しをいくつかご紹介します。家族や地域に根付いた節分の厄除け行事を参考に、今年は何をしようか考えてみてくださいね。
豆撒き(まめまき)
前述のように、中国から伝わった追儺が日本独自の節分行事へと移り変わる中、「豆打ち」と呼ばれる鬼に豆を打ちつける催しが主体となっていきます。生命力と魔除けの力があるとされた穀物(豆)を、鬼の目に投げて追い払い無病息災を願う行為は、「豆=魔目=摩滅」という語呂合わせも交じって次第に定番化されたと考えられています。
「豆打ち」から「豆まき」に変わったのは、農作が中心だった庶民の暮らしから、畑に豆をまく行為と似ているためだといいます。豆まきに使われる豆は「福豆」と呼ばれ、生命力の象徴とされる芽が出る寸前の大豆を炒り豆にしたものを用います。炒り豆は枡に入れ、神棚に供えておくことで、さらに効力を増すをいわれています。
豆をまくときには掛け声をかけるのが一般的で、最もポピュラーなものは「鬼は外、福は内」と大声で唱えながら家の外と内に豆をまきます。ただし、鬼を信仰の対象としている神社や名字に鬼が付く家などでは「鬼も内」ということもあるそうです。他にも、丹羽(にわ)氏が藩主だった福島県の一部では「お丹羽、外」となることを避けて「鬼、外」というところもあるといいます。
豆をまいた後には、鬼が家の中に入ってこないようにすぐに戸を閉めることが通例です。その後は、自分の年齢の数だけ豆を食べて今年一年の健康を祈ります。豆の数は、生まれ年を一歳として数える「数え年」とすることが一般的で、つまり満年齢よりもひとつ多く豆を食べることになります。
恵方巻き(えほうまき)
現代の節分で恒例の行事となった「恵方巻き」を食べることは、意外と新しい習慣で、1998年以降にコンビニエンスストアが展開したことで普及したといいます。起源は諸説ありますが、江戸時代以降に大阪の花街で、商売繁盛を祈って太巻き寿司を食べながら遊んだことに由来するそうです。
恵方とは、年神様(歳徳神)のいる方角のことで、陰陽道と呼ばれる思想をベースに、その年の十干(じっかん)によって毎年変わるものです。恵方は、西暦の一の位で東北東(4と9)、西南西(0と5)、南南東(1と3と6と8)、北北西(2と7)の4つから決められます。2021年の今年は南南東で、スマホアプリのコンパスでは 165°となります。
福を巻き込んだ恵方巻きは、福が逃げないように無言でその年の恵方を向きながら食べるという習慣が近年定着しています。豆まきは子供のいる家庭では賑やかで楽しいイベントですが、恵方巻きは大人も気軽に楽しめるイベントとして受け入れられています。
柊鰯(ひいらぎいわし)
節分の伝統的な習慣としては、他にも「柊鰯(ひいらぎいわし)」と呼ばれるイワシを飾る文化があります。柊鰯は、平安時代頃に邪気祓いとして「注連縄(しめなわ)」に柊の枝とボラの頭(なよし)を刺して、正月の門口に飾る習慣から由来するといいます。
これは、柊の葉特有のトゲが鬼の目を刺し、なよしを焼く臭気と立ち込める煙によって、鬼を追い払うと信じられていたためです。江戸時代以降はボラよりも一般的なイワシが使われるようになり、現在の形になったともいわれています。
ちなみに、ひな祭りで定番の「吊るし飾り」を、節分にも応用して飾ることも近年注目されています。「鬼は外、福は内」の福担当としてお面などにも使われる「お多福(おかめ)」、鬼や恵方巻きなどの節分をイメージさせる飾りで、部屋をデコレーションしてみても楽しいかもしれません。
節分の日にギフトを贈る新習慣
これまで節分の行事そのものについて述べてきましたが、ここでは本題となる「節分ギフト」について考えてみましょう。節分と贈り物とは、一見すると関係性がないようにも思えますが、立春の前日である節分に春を感じるギフトを贈って健康を祈ることは、会わずしても相手を思いやる気持ちが伝わります。
春を待ちわびる気持ちを胸に、気分が明るくなるような手土産を持参して、家族や友人を訪ねてみても良いでしょう。そんな「節分ギフト」は、豆まきや恵方巻きの習慣だけにとらわれない、現実的でかつ大切な人との絆を深めることのできる特別な贈り物になります。
節分の贈り物マナー
節分ギフトは日本の伝統的な贈答シーンではないため、品物を包むときには基本的に熨斗(のし)は必要ありません。ただし、イベント感を出したかったり、少しばかり洒落をきかせたいときには、「節分の日」なんて書かれた熨斗を用意してみたり、季節を感じる装飾をしてみても良いかもしれません。
日本橋に本店をかまえる伝統的な和紙の専門店「榛原(はいばら)」では、木ヘンに春という文字を書く「椿」の一筆箋(便箋)などが用意されています。春を象徴する椿とともに季節の挨拶をしたためてみるのも素敵ですよね。
節分ギフトを贈るときには、相手が厄年かどうかについて注意するようにしましょう。日本では、厄年に厄払いの品物を贈る習慣がありますが、最も注意すべき本厄が始まる前にギフトを贈ることがマナーです。古くから立春は1年の始まりと見なされているため、本厄となる年の節分を過ぎないように贈りましょう。
節分ギフトのセレクトポイント
ギフト選びのポイントとして「ストーリー性」があります。なぜこの品物を選んだのか、どういった想いが込められているのかが明確になることで、格段にギフトの特別感が生まれます。節分ギフトとしては、【厄除け】【子供】【旬】といったキーワードが挙げられます。これらについて順番にみていきましょう。
【 厄除け 】は、節分がもともと追儺としての厄払い行事であったことからも大事な要素のひとつです。厄除けを意識するのであれば、お守り代わりに身につけるものが適しています。ジャンルでいうと、健康と長寿の祈りが込められたマフラーやネクタイなどの「長いもの」。
そして、桜吹雪を浴びると厄落としになることから、桜モチーフのハンカチなどがあります。ハンカチーフ専門店として知られる「 CLASSICS the Small Luxury(クラシクス・ザ・スモールラグジュアリ)」では、桜が風で舞っているデザインの「桜嵐」が季節感もあり人気となっています。
【 子供 】は、現代では定番となった節分の行事でもある「豆まき」が、家族や地域で行なわれる子供のイベントとして根付いているため、ギフトシーンとして大事な要素です。幼稚園児には鬼やお多福のお面、福豆や枡などをプレゼントしても喜ばれますが、1歳児くらいであれば絵本ギフトが活躍します。
せっかく絵本を贈るのであれば、一生の友だちになるような本と出会える場所で探したい。そんな想いがある人には、子どものためのセレクト・ブックショップである「ちえの木の実」で、豆まきや鬼に関する絵本を探してみてはいかがでしょうか。
【 旬 】は、立春を基準にした節分で特に大事な要素です。春の始まりである立春をむかえるタイミングで、春が旬の食べ物を贈ってみてはいかがでしょうか。「芽が出る」ことから縁起物として知られる「慈姑(クワイ)」は、ユリ根に似たほろ苦さが人気の野菜です。素揚げにしても旬の味わいが広がるオススメのベジタブルギフトです。
春(特に2月)のフルーツであるイチゴやリンゴ。それらの果実が贅沢にあしらわれたスイーツやドリンクは、目にも舌にも嬉しい一品。生姜のドリンクとジンジャーシロップの専門店「銀座のジンジャー」では、リンゴの甘く軽やかな香りがふわりと漂うジンジャーシロップや、色鮮やかでコクのあるイチゴのコンフィチュールがオススメです。
おわりに
子供から大人まで幅広い年代が楽しむことのできる節分は、まさに国民の行事。豆まきや恵方巻きを食べるために家族や友人と集まるのであれば、是非とも気の利いた手土産を持ち寄ってみてください。その場が華やぐだけでなく、素敵な縁を広げる貴重な機会となるはずです。