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2023年1月22日を以って、日本橋木屋(東急プラザ渋谷店)は閉店しました。コレド室町の本店をはじめ他店舗は営業を継続しています。
再開発が目覚ましい渋谷の中心エリア「東急プラザ」の3階に、心地よく背筋が伸びる緊張感を感じられる生活の道具店があります。こちらが「日本橋木屋(東急プラザ渋谷店)」。包丁や刃物を中心とした調理道具や理美容アイテムを豊富に取り扱っています。
日本橋木屋(東急プラザ渋谷店)日本橋木屋は、大阪で豊臣家の薬種商として仕えた御用商人が始まりだといいます。後に、徳川家康の招きで当主の弟が江戸「日本橋」へと下り、大阪と分かれて店を持つことになったため、姓の林を二つに分け「木屋(きや)」と称したそうです。
寛政四年にはじまる創業ストーリー
日本橋で誕生した木屋は、祖初の名を取って「木屋林九兵衛商店」と銘打たれ、戦前までは塗物・漆器店だったと言います。刃物の木屋(現在の日本橋木屋)は、1792年(寛政四年)の創業。塗物木屋に奉公していた加藤伊助氏が、でっち・若い衆・手代・番頭と勤め上げ、本家木屋から暖簾分けして開業したとされています。
開業から約10年後(文化二年)の木屋本家木屋には「暖簾分けは許すが、本家と同じ商品を扱うことは許されない」という慣例があったため、塗物・漆器の本家とは異なる打刃物を扱うようになったそうです。木枠の中に「木」と書かれた木屋のロゴは、井桁(いづつき:井戸の木枠)を表しています。これも、本家の「丸に木」と違えるために、井桁にしたと言われています。
日本橋木屋のロゴマーク時代の風を読みながら繁栄してきた
打刃物とは、日本刀から受け継がれた伝統製法で作られた刃物のことで、鉄やハガネを炉で熱してハンマーで打ちつけて仕立て上げます。金型によって成型する抜き刃物とは違って大量生産には向かないものの、ひとつひとつ職人仕事で多種多様な包丁を製造できる製法として知られています。
創業当時は打刃物屋として始まった木屋は、「火事と喧嘩は江戸の華」と言われるほど火事が多かった江戸時代には大工工具、戦後に裁縫が流行した時期にはピンキング鋏など、様々な生活の道具を取り扱うようになります。時代の流れに沿い人々から求められていることを取り入れながら、現在に至るまで商いを続けてきました。
大正12年の震災で焼ける前の木屋漆器店と木屋刃物店日本橋木屋で取り扱う商品のこだわり
日本橋木屋に陳列される取り扱い商品で大切にしていることは「手入れをしながら末永く使えること」と、一途な眼差しで語る東急プラザ渋谷店店長の加藤廣也氏。「愛着の湧く道具を長く使ってもらうために、刃物をはじめとした商品の修理修繕も受け付けています」と続けます。
日本橋木屋の包丁また、木屋では製造メーカーや職人とのつながりも大切にしていると言います。近年は職人の高齢化や後継者問題に直面し、廃業に追い込まれた工房も多く、日本橋木屋と密接に関わる鋏職人の中にも「自分の代で廃業」と言い切る人もいるそうです。
長い時代を経て培われた職人の伝統技術が途絶え、未来につながる創造が途切れてしまうことは大変無念に感じます。これからの時代は、受け継いだ道具を丁寧に手入れしながら、ヴィンテージやアンティークのように長く使い続けることがより一層求められるのではないでしょうか。
まるでギャラリーを思わせる渋谷店の雰囲気
日本橋木屋の本店が厳かな雰囲気を醸す一方で、東急プラザ渋谷店は白基調の壁面に包丁が整然と並び、中央に天然石が配されたスタイリッシュな内装が特徴的です。この現代的な店舗内装は、どういったイメージで創り上げたのでしょうか。
自然の風合いを活かした店舗の内装
六本木のミッドタウン店、大阪の大丸心斎橋店に引き続き、自然を活かした内装にしたいというコンセプトの下でデザインされた東急プラザ渋谷店。前述の二店は什器に木材を使った一方で、渋谷店では天然の石(御影石)を使った什器を採用しています。
どんな商品よりもすぐ目に留まるよう、壁一面に包丁をズラリと陳列し、店舗中央部は低い台座にすることで、すべての商品を見渡せるような工夫も施しています。また、敢えて陳列する商品数を絞り込むことで、雑多に見えない細やかな配慮にも遣っていると言います。
男性は眺めているだけで気分が上がりそうですねと、筆者が感想を漏らした場面では、「ご夫婦でいらっしゃって、強いこだわりを見せるのは不思議と男性の方が多いです」と、加藤氏は優しく微笑みながらエピソードを語ってくれました。
高齢のお客様への配慮も行き届いている
日本橋木屋の他店舗にも共通することでは、通路を広く取り、狭いところでも車椅子1台は通れるようにしているそうです。伝統的な道具を重んじる高齢のお客様も多い、日本橋木屋ならではの配慮です。これならば、車椅子や杖をついている祖父母と一緒に買い物を楽しむことができますね。
均整の取れた種々折々の道具を愉しむ
日本橋木屋は、打刃物を中心に敷く生活の道具店。東急プラザ渋谷店だけで130丁もの包丁の取り扱いがありますが、それにとどまらない数々の良品がラインナップされています。ここでは、日本橋木屋の東急プラザ渋谷店で取り扱っている生活の道具を、選りすぐってご紹介します。
日本橋木屋の生活の道具ステンレス刃物鋼を使った洋庖丁シリーズ
並べられた包丁の中で一際目を引く「エーデルワイスステンレス洋庖丁シリーズ」は、日本橋木屋でしか手に入らない逸品。オーストリアから輸入したステンレス刃物鋼を使い、岐阜県関市で打ち作られたものです。
エーデルワイスステンレス洋庖丁シリーズ#180「鋼よりは錆が出にくいが、切れ味は劣る」というイメージを持たれがちなステンレス包丁ですが、高品質のステンレス鋼を使うことで切れ味も申し分ない仕上がりになっているそうです。「木屋で扱うステンレス製の包丁としては最も切れ味がよく、60年以上愛されるロングセラー商品です」と説明する加藤氏。話を伺っていると、どんな切れ味か試してみたくなります。
日本が誇る金物の町、新潟県燕三条の爪切り
私たちの生活で身近な刃物のひとつ「爪切り」も、切れ味の良いと気持ちよく身だしなみを整えることができます。新潟県の燕三条スワダで作られた爪切りは、スッと切れ、切り心地バツグンの一品。足爪用は、切った後が直線的になり、巻き爪になりにくい機能性があります。
爪切クラシック木屋で取り扱う爪切りは、サイズや形状も様々で、人によって贈り分けることができます。ニッパータイプは、先端が鋭利で切れ味が良いことが特徴で、切り口が見やすいことから敬老の日や父の日・母の日のプレゼントに贈ってみても良いかもしれません。
日本橋木屋で取り扱う爪切り美しい光沢とフォルムに魅せられる姫フォーク
繊細で可愛らしいフォルムをした姫フォークは、おやつタイムやおもてなしを格上げする優品。真鍮と銀メッキの二素材で作られていて、まろやかな輝きを放ちます。フルーツや焼き菓子など、甘味をつまむことが楽しみになるフォークは、チーズに添えてワインのお供にしても素敵です。
姫フォーク銀メッキが施されたフォークは、結婚祝いや結婚記念日のギフトにピッタリ。結婚生活の区切りとなる25周年の銀婚式に小さく愛らしいカトラリーをプレゼントしたり、新婚の夫婦に5本セットの姫フォークを贈ったりすると、幸せを運んでくれそうで喜ばれることでしょう。
長寿と夫婦円満の縁起物、鶴亀モチーフの卸金
いかにも縁起の良さそうな亀と鶴の形が施された薬味卸。「鶴は千年、亀は萬年」と言い伝えにあるように、どちらも長寿の縁起物として考えられています。鶴と亀は夫婦円満の象徴ともされるので、仲睦まじい夫婦に長寿祝いを兼ねた幸せの祈りを届けてみてはいかがでしょう。
薬味卸薬味は、年齢を重ねればより味わいを楽しめる料理のアクセント。卸金やすり鉢を使うことで風味が一層引き立ち、穏やかな食卓に幸福感を添えてくれます。そんな “口福” のギフトは、贈られた両親や友人夫婦が仲良くゆったりと過ごしている姿も目に浮かぶようです。
卸金使い心地を継続させる手厚いアフターフォロー
愛着の湧く道具は、少し壊れただけで取り換えるのは憚られるもの。長く使い続けるために必要なメンテナンスも、日本橋木屋にお任せください。木屋で販売している包丁や一部の調理器具・理美容品は、有料で修理・修繕を行なっています。包丁だけでなく、まな板や鍋なども受け付けているので頼りになります。
包丁や道具のメンテナンス加藤さん
汎用的な包丁研ぎでも手入れすることは良いことです。しかしながら、それだけではどうしても切りづらくなってきます。やはり、本格的な道具を使ったメンテナンスを時折施すと、状態が改善して切り心地が戻ってくるはずです。
包丁は、使う人の切り癖によって刃の擦り方が異なり、誰一人として同じ破損具合がないそうです。そんな難事も、刃物のプロである木屋なら安心して任せることができます。商品によって預かり期間や手数料が異なるため、利用の際は店舗にお問い合わせください。ギフトでも贈り相手に忘れず伝えたいですね。
店舗で開催される「作品展」も楽しみのひとつ
日本橋木屋の各店では、定番商品とは分け隔て、日本各地の職人やデザイナーが作るガラス工芸品、木工芸品、焼物、鉄器、水引、アクセサリーなどを展示しています。
東急プラザ渋谷店の作品展東急プラザ渋谷店の取材当時は、和素材とファブリックで作られた「がまぐちバッグ」が店内に彩りを添えていました。年末年始には、博多水引という水引細工を置く予定だと言います。時期によって店舗の表情が変わるため、作品展ごとに訪れる楽しみが生まれます。
がまぐちバッグ「東急プラザ渋谷店は “大人をたのしめる渋谷” をイメージしているので、そのコンセプトに沿うようにゆっくりと時間をかけて商品と作品を見ていただき、直接手に取って楽しんでもらいたい想いです」と話す加藤氏。
日本橋木屋東急プラザ渋谷店から臨む風景木屋では「まるで美術館や博物館のようですね」と、来店客から声を掛けられることも少なくないそう。催事情報は、日本橋木屋の公式ウェブサイト、日本橋木屋東急プラザ渋谷店のInstagram/Twitterアカウントにて確認することができます。
東急プラザ渋谷店長が考える、日本橋木屋の魅力
およそ230年もの長きにわたって人々の生活を支える、刃物と台所道具の専門店「日本橋木屋」。そんな代々受け継がれる老舗店の魅力を、東急プラザ渋谷店の店長である加藤廣也氏に伺いました。
加藤さん
木屋では、親子三代かそれ以上にわたって包丁や調理道具を揃えていただいているお客様も珍しくありません。「母から譲り受けたもので、三・四十年前のものだけど直せるかしら」と、包丁の研ぎや道具の修理に訪れていただくこともあります。
加藤さん
長く使える暮らしの道具だからこそ、道具に込められた想いや思い出を家族や友人に受け継いでもらえているのだと感じます。そして、その道具を長くご愛用いただけているのは、長い歴史を持つ木屋の品質があってこそだと考えています。
渋谷近郊でこれほど多くの包丁を取り揃えている専門店は、他に例を見ません。「大人をたのしめる渋谷」がコンセプトの東急プラザ渋谷店は、渋谷を訪れる若い世代であっても伝統的な調理道具に心打たれる魅力を感じることでしょう。両親や目上の人へのギフト、そして道具の手入れのことなど、気になることがあれば尋ねてみてください。
贈答シーンで役立つ、高品質で端正な道具店
日本橋木屋は、贈答シーンや予算に合わせて大小さまざまな調理道具を選ぶことができる生活の道具店。良いものを長く使い、限りある資源を無駄にしないという観点は、サスティナブルな生活にも通じるものがあり、思いがけず現代的な消費行動を見直すきっかけにもなりました。
今の時代、台所はもはや女性だけの聖域ではありません。共働き世帯や仕事のツールとして調理道具を使う男性、そして何よりギフトを選ぶ贈答シーンにおいて、高品質で端正な道具が並ぶ日本橋木屋に足を運んでみてはいかがでしょう。
ショップの詳しい情報
店名 | 日本橋木屋(東急プラザ渋谷店) |
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住所 | 〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-2-3(渋谷フクラス3階) |
営業時間 | 11:00 ~ 20:00 |
休業日 | 元日を除き休まず営業 |
最寄駅 | JR渋谷駅西口連絡通路「渋谷フクラス歩行者デッキ」直結 |
電話番号 | 03-6712-7785 |
ホームページ | https://www.kiya-hamono.co.jp/ |
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