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「 郵便 – Post – 」にまつわるはなし
まずは郵便の歴史を簡単にご紹介します。日本における郵便の歴史は明治4年に幕が開けます。江戸時代までは身分に関わらず飛脚を利用した書状のやり取りが一般的でしたが、文明開化の波に乗り「郵便の父」と呼ばれる前島密により現在の郵便制度の礎になる官営の郵便事業が開始。 当初郵便役所が設置されたのは京都、大阪、東京の3か所で、翌年には全国に取扱所が設置されていきました。ちなみに郵便のマークに用いる「〒」は、開設当初に郵便業務を担っていた逓信省の頭文字のカタカナ「テ」から来ています。身近ながらよく知られていない豆知識です。① 郵政博物館(旧逓信総合博物館)[押上]
郵便の歴史は、墨田区スカイツリータウンのソラマチ内にある「郵政博物館」でも触れることができます。2014年開館、大手町にあった逓信総合博物館(2013年閉館)の展示品を引き継ぎ、郵便に関する収蔵品約400点を展示しています。 ソラマチの9階にあるこの施設は、館内の中では比較的人の行き交いが少なく静かで落ち着いた雰囲気です。館内はエリアごとにテーマが分けられ、郵政の歴史や郵便局で使用されていた計器や制服などを展示。他では見ることができない郵便にまつわる貴重な資料を見ることができます。 青いポスト、初めてみました。解説によると昭和4年から始まった航空郵便専用のポストだそう。この青色ポストはその後、1950年代から速達郵便専用ポストとして全国に設置され、現在でも都内に数か所残っているようです。次の機会には青いポスト探しの散策をしてみようかしら。 展示品のなかでも33万点にものぼる世界各国の切手のコレクションは圧巻です。入場料も300円と気軽に入れるので、ソラマチへ買い物にお越しの際はぜひこちらの博物館へも足を伸ばしてみてください。 ずらりと並ぶ引き出しを引っ張り出すと、切手たちが丁寧に整理され展示してあります。国ごと、年代ごとに区分けされており、時代や地域によってデザインのテイストが変化するのも見ていて楽しいです。現在では見ることのできない古い時代の貴重な切手もあり、引き出しのすべてを引っ張り出して見るには丸一日かかりそう。ちなみに
1949年の最初の「お年玉つき郵便葉書」は特等が高級ミシン、末等が切手シートでした
「 紙 – Paper – 」にまつわるはなし
どのような「紙」に気持ちをしたためるか。いざ手紙を書こうと思うとレターセットやカード選びは案外難しいものです。相手の年齢や性別、手紙の内容によって最適なデザインは変わります。上手に使用するものを使い分け、相手に喜ばれるものを丁寧に選びたいところ。 筆者は慣れない手紙(カード)選びにいつも即決できず、売り場をウロウロしてしまいます。スマートに選べるよう、いくつかお気に入りのお店を見つけられたらいいな。ということで、今回は気になっていた博物館といくつかの紙の専門店を訪ねました。② 紙の博物館(旧製紙博物館)[王子]
王子駅を出てすぐ、飛鳥山公園内にある「紙の博物館」。渋沢栄一が日本初の洋紙の製紙会社「抄紙会社」を設立したゆかりで王子に博物館が建てられました。飛鳥山公園は桜や紫陽花の時期にたびたび来ていたので博物館があることは知っていました。いつか行ってみたいと思っていたので、紙を巡る散策にはうってつけと満を持しての訪問です。 2020年の創立70周年を機に常設展示がリニューアルされ、「紙の歴史をたどり、現在を知り、未来を考える」をテーマに製紙の歴史や現代の製造過程などを展示。紙の作り方や、SDGsが叫ばれる今日関心度も高いリサイクルの仕組みまで丁寧かつ専門的に解説しています。 小学生向けの体験型展示もあるのでお子様と一緒に普段使用している紙について改めて考える良い機会にもなりそうです。 ちなみに紙の博物館は「北区飛鳥山博物館」「渋沢史料館」が隣接しており、飛鳥山公園内の3博物館共通の入館券も販売されているので、渋沢栄一の人生と郷土史にゆっくり触れる休日を過ごすのも良いかもしれません。 紙の博物館を出た後、飛鳥山博物館内の喫茶店「カフェ・ヴァーチュ」にて一服。名物との謳い文句に誘われておはぎを食べました。程よく甘く、柔らかい苦みが余韻に残るブレンドコーヒーに合います。 洋菓子派にはこちらのお店をご紹介。2021年オープンの「apollon(アポロン)」は、赤羽岩淵にある「AERU COFFEE SHOP」の2号店です。王子駅から徒歩7~8分と少し足を延ばした場所にあります。 落ち着いたおしゃれな内装で、若い女性のお客さんが多いよう。店内ではコーヒー・紅茶と一緒に手作りの焼き菓子を頂けます。お菓子はボリュームがありますが甘すぎず、最後まで美味しくぺろり。オススメの抹茶ケーキはテイクアウトも可能なので自宅でのお茶会にぜひ。ちなみに
事前に予約すれば、一本単位でパウンドケーキを購入することも出来るそうです
③ paper message/Billboard[吉祥寺]
ここからは紙製品を扱うお店をいくつかご紹介します。まずは吉祥寺、中道通りある「paper message(ペーパーメッセージ)」。専属デザイナーのデザインを印刷、製品に仕立てるまでの工程を全て自社でおこない、紙の楽しさを伝え続けるお店です。 眺めているだけで楽しい紙製品が並ぶ店内。封筒や便せんの他にマスキングテープやカレンダーなどを販売しています。どれもカラフルで可愛らしい雰囲気で、女性やお子さんへの贈り物に喜ばれそうです。 便せんと仕事で使用するメモパッドを購入してみました。カラフルなメモ用紙が仕事中のふとした瞬間に目に入るだけで気分も少し上向きます。ちなみに
paper messageでは活版印刷やウェディングなどペーパーアイテムを1枚から作れます
④ 鳩居堂(きゅうきょどう)[銀座]
ご年配の方に向けたお便りやしっかりした書式を取った文章をしたためたい時は、縦書きの落ち着いた雰囲気の封筒と便せんを選び、お相手に失礼の無いようにしたいもの。 そういったとき1663年創業の老舗「鳩居堂」でレターセットを選べば間違いありません。縦書きで和風の品のいい商品が揃っています。銀座という立地良い場所にあるのも利点。急に入用になった時のために、ストックしておく品を選ぶのもオススメです。ちなみに
鳩居堂のロゴマーク「向かい鳩」は源頼朝が熊谷直実の活躍を称えて贈った家紋に由来
⑤ 竹尾 見本帖本店[神保町]
とにかく「紙」そのものにこだわりたい!という方には神保町にある「竹尾見本帖本店」に行くと理想の紙に出会えるかもしれません。明治32年創業の紙専門商社竹尾のショールームで、紙に関連した作品を手掛けるクリエーターやデザイナーも足しげく通う場所です。 洗練されたスタイリッシュな店構えで、中に入ると整然とディスプレイされた数千種類の紙サンプルがお出迎え。サンプルは実物を手に取り確認することが可能なので、贈る相手に思いを馳せて、紙を選ぶ楽しいひと時が過ごせます。紙は規定サイズで一枚から購入可能、指定寸法でのオーダーもできます。 2階は身近な紙の新たな可能性を発見できる展示スペース。竹尾の新商品の発表や紙をメインにしたクリエーターによる作品展示が行われます。奥の壁面には竹尾が企画したオリジナルの紙製品をディスプレイ、販売しています。 便せんと封筒はそれぞればら売りされていて、好きに組み合わせることができます。どれにしよう。こちらでもまた悩んでしまいます。 春らしい綺麗な色味のものを選んでみました。紙の厚み(斤量)もしっかりあるのでシンプルながら高級感があります。ダイヤ張りの封筒も美しいフォルムです。 カード型の便せんには折り目が付けられています。折り目も綺麗に見えるようにという紙専門商社ならではの細やかな気配り。 オリジナル商品は封筒・便せんだけではありません。「文庫本を上製本に。」がコンセプトの美篶堂によって手製本で誂えられたブックカバーは、本の街神保町にちなんだ商品。ハードタイプのカバーで、装着すると文庫本が上製本のようにしっかりとした厚みに。シンプルなデザインは性別や年齢を問わず持ちやすく鞄の中で本が折れたりするのを防いでくれます。 ショッパーもさすがのクオリティ。紙製品へのこだわりが感じられますね。今回紹介した以外にも、都内には紙を取り扱う専門店がたくさんあります。紙専門店を巡り紙の手触りを楽しむ散策も次の機会でできればと思います。ちなみに
ショールームで選びきれなくても、2F展示スペースで仕立て済みの封筒と便箋を購入可
「 切手 – Stamp – 」にまつわるはなし
切手は想像している以上にたくさんの種類が存在します。まず、日常的に使用している切手は1枚単位で購入できる「普通切手」と呼ばれるもの。普通切手は普通はがき用や定形郵便用の切手など一枚で使用できるもの他、貨幣価格が低かった時代の切手を使用する際の差額を補填する1円や2円など少額切手があり、普通切手だけでも19種類存在します。 さらに、「特殊切手」という年賀はがきで当たる「お年玉商品の切手シート」のようなシート状の切手。日本郵政より特定の記念日や歴史的な出来事の節目に発行されるものがあり、いずれも発行枚数が限定されていて時期を逃すと正規には購入できなくなります。ちなみに
今年2022年には節目を迎えた「沖縄復帰50周年」の特殊切手が発行されるそうです
⑥ 目白切手の博物館[目白]
目白駅に到着。山手線30駅の中で3番目に利用客が少ない駅ですが、周辺には学校が多く朝は学生の賑やかな声が響きます。 目白駅前の広場を右手に進むとすぐに学習院大学があります。門前を右に曲がり、線路沿いに池袋方面に2~3分直進した場所に「目白切手の博物館」はあります。(山手線に乗っていると看板が見えます) 楳図かずお先生の「まことちゃんポスト」がぐわしとお出迎え。もちろんこちらのポストからもちゃんと投函できます。 エントランスを入って右手が博物館です。1988年に著名な切手収集家であった水原明窓が私財を投じて設立。企画展の内容に沿って世界中の切手が展示、解説されています。入館料300円。館内はそれほど広くないので予定と予定の間の隙間時間でも気軽に鑑賞することができます。 エントランスを挟んで博物館の反対側は入館料不要でミュージアムショップと切手専門店のテナントが入るエリアです。切手を購入ができ、その種類は海外製の切手や郵便黎明期のプレミア切手など多岐にわたっています。ちなみに
現在日本で発行される中で最も金額が高い切手は500円切手で、最も安いのは1円切手
ちなみに
テイスティングルームではグラウラー(詰め替え容器)での量り売りも行っています
「 ペン – Pen – 」にまつわるはなし
どういった筆記具を使うかで紙の上に落ちる文字の雰囲気も印象も驚くほど変わります。使い勝手の良い手ごろなペンも良いけども、ぜひ一生使うことができるお気に入りの筆記具を見つけてみてください。お手入れすることで愛着が湧き、使うごとに馴染んできます。 また、ビジネスシーンで字を書くときに良い筆記具を使うことで、仕事に対する丁寧な印象を与えることもできますよ。良い筆記具があなたの字の「癖」を小粋な「味」に変えてくれるかもしれません。⑦ 伊東屋(Ginza Ito-ya)[銀座]
実は筆者も良い万年筆をずっと購入したいと考えていました。文章を書くにもパソコン上、タイピング中心ではありますが、物書きの端くれとして自分に合った手が疲れにくい筆記具が欲しいです。決めたのは良いものの、さて、どんなものが良いのやら。インターネットで検索しているだけでは埒が明かないのでさっそく伊東屋を訪れました。 伊東屋は銀座の瀟洒な大通り沿い、大きなクリップの看板が目印です。高級万年筆・ボールペンの売り場は3階。国内外のメーカーを取り扱い、店員さんにアドバイスをもらいながら書き味を試してみることができます。訪れた3月は入学、卒業祝や送別の季節でもあるためかフロアには多くのお客さんで溢れていました。 線の太さやデザインなど希望を伝えると数種類を見繕い書き比べさせてもらえます。試し書きは線を引いてみるだけでなく、漢字やひらがなを書くのがオススメ。同じ字をペンごとに書き比べてみると、線の強弱や雰囲気が少しずつ違うのです。手への馴染み具合もわずかな重さの違いで変わるとしみじみ実感しました。ちなみに
店員さん曰く、万年筆を決めるポイントは「重さやグリップの形状、インクの出具合や太さ、文字を書いた時の雰囲気」とのこと
⑧ カキモリ/inkstand by kakimori[蔵前]
万年筆はインクの入ったカートリッジを装着して使用する他に、自分でインクを選んでコンバーターと呼ばれる吸引器にインクを補充して使用することも出来ます。スタンダードなブラック以外に最近ではカラフルなインクも相次いで発売され、インク選びも併せてこだわりたいポイントになっています。 蔵前にあるオリジナルノートを作れることで有名な「カキモリ」も、オリジナルインクを扱うお店のひとつです。販売されているインクは万年筆の他、同店で扱っているオリジナルボールペンでも使用することができます。万年筆は少し敷居が高いかたにも気軽に使用できます。 お店オリジナルカラーのインク「むくり」。色にはそれぞれ擬音語の名前が付けられています。もったりした丸いフォルム瓶も可愛らしいです。 購入した万年筆で早速インクを使用してみました。書き慣れてない感じがすごいですが、真っ黒ではなく赤みのある濃いグレーといった色合いで、なんだか普段より字がおしゃれに見える気がします。万年筆自体の線は比較的太めのものです。 他のペン先で書いた文字との比較。線の丸みや強弱が違うのが分かりますか? 自分の字と雰囲気と合う筆記具を見つけると、字を書くのが好きになりそうです。カキモリでは万年筆やボールペンとインクをセットでラッピングできるギフトボックスもあるので、普段お世話になっている方への贈り物としてとても喜ばれると思います。 さらに中二階には「inkstand by kakimori(インクスタンド)」があり、自分だけのオリジナルのインクカラーを製作することができます。好きな色を2~3種類選び、それぞれのインク量によって色味を調整して作成します。オリジナルインクを作成してプレゼントするのも素敵ですよね。 カキモリから東にまっすぐ進み新堀通りを渡った場所、ぷらりと歩いて行ける距離にこちらも手紙にまつわるお店があります。2019年にオープンした「自由丁」です。読書をしたり仕事をしたり、考えたりときには悩んだり。訪れた人が自由に過ごすことのできるスペースを提供しています。 1年後の自分に手紙が書ける「TOMOSHIBI LETTER」というちょっと変わったメニューがあります。用意されているレターセットの中から自分好みのものを選び、書いた手紙をお店で大切に保管、1年後に自分の手元に届けてくれます。ちょっと気恥ずかしい気もしますが、忙しい日常で忘れられがちな自分と向き合う貴重な時間です。あれやこれやと悩みながら手紙を書いて過ごしてみませんか。ちなみに
インクスタンドも自由丁も、事前に予約して行くことをオススメします
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