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街歩き No.024 高円寺|芸術とスパイスで猛暑知らず!雨上がり高円寺ウォーク

街歩き No.024 高円寺|芸術とスパイスで猛暑知らず!雨上がり高円寺ウォーク
JR中央本線に揺られて新宿駅から約10分。電車を降りるとホームの目前から商店街が広がり、レトロで下町情緒を感じさせるここは高円寺。かつてより音楽や演劇などのサブカルチャーが栄え、若者が憧れる街として有名です。 高円寺 その発端は、中央線文化が盛んになった70~80年代の時期に、その中心地であった新宿へのアクセスが良い高円寺・吉祥寺・国分寺エリアにミュージシャンや文芸家、役者など多くの文化人が移り住んだことが挙げられます。 高円寺 そんな一大カルチャースポットに交通網として中央線が大きく発達したことで、都市部の大学や仕事場に通う前衛的な若者も多く住み集ったため、現代に至るまで独自の芸術文化を築いていったと言われています。 高円寺 今回の街歩きは、自身も大学時代のバンド活動に打ち込んだ著者が、歴史ある高円寺の芸術文化と触れ合ってみたいと意気込み、小さな旅に繰り出しました。時刻は10時。高まる期待を胸に、高円寺駅南口からスタートします。

① 気象神社(高円寺氷川神社)

高円寺 この日は、駅に着いた頃から雨がシトシトあいにくの空模様。平歩青天を願い、全国で唯一「気象の神様」と言われる八意志兼命が祀られた「気象神社」から高円寺巡りを始めます。気象神社は「高円寺氷川神社」の境内にあり、境内はコンパクトながらも荘厳な雰囲気で心が洗われるように感じます。 高円寺 時はさかのぼること1944年(昭和19年)4月。気象神社は、大日本帝国陸軍の陸軍気象部(杉並区馬橋地区)の構内に造営され、気象予報の的中を祈願するなど、気象観測員の心の拠りどころとされていたそうです。その後、戦後の神道指令で撤去されるはずだった気象神社は調査漏れにより残存し、現在の高円寺氷川神社に移設され現在に至っています。 高円寺 大切な日の好天を祈ってゆくのでしょうか。境内には絶えず参拝客が訪れ、参道にはてるてる坊主を模した「照々みくじ」や「下駄絵馬」が、ところ狭しと絵馬掛所に掛けられています。著者も慣例に倣ってお祈りしてみると、なんと雨が1時間足らずで止むという小さな奇跡が起こったのでした。

② 座・高円寺

高円寺 再び高円寺の駅前へと戻り、東に延びる芸術会館通りを5分ほど歩くと、チョコレート色をした大きな建物が現れます。こちら「座・高円寺」は、舞台芸術の発信、地域の文化活動の拠点となっている憩いの多目的ホール。演劇やワークショップなど様々なイベントが日々催されているので、舞台芸術に触れ合ってみたい方は赴いてみてはいかがでしょう。

③ RAD BROS CAFE(ラッドブロスカフェ)

高円寺 芸術会館通りを突き抜け、環七通りの横断歩道を渡った正面の路地を進んでゆくと、植木のグリーンの奥に白基調のカフェ「RAD BROS CAFE(ラッドブロスカフェ)」が現れます。店内に入ると、2名掛けの小さなテーブルが4席ほどのコンパクトな店内に、ゆったりとした音楽が流れています。 高円寺 カウンターに腰掛け、カフェモカとちょっぴり刺激的なエスプレッソトニックをオーダー。メニューには、ラテ以外にスパイスを効かせたクラフトコーラやアルコール類もラインナップ。ショーケースでケーキを選べるので、ティータイムの利用にもピッタリです。 高円寺 爽やかなモーニングコーヒーで一息ついていると、茶虎の猫ちゃんがひょっこり訪ねてくるサプライズが。聞くと常連さんのようで、日当たりのいいお気に入りのテラス席でくつろぐ姿は、見ているだけでほんわか幸せな気持ちになれました。

④ 高円寺あづま通り商店会

高円寺 カフェを出たら、芸術会館通りを西に戻り「高円寺あづま通り商店街」を歩いてみましょう。ピンク色した石畳はゆる感があって可愛らしく、お洒落なショップやカフェなどが居並んでいるので、目的がなくてもふらりとお散歩するのにぴったりの商店街です。 高円寺 この日は午前中に立ち寄ったため開店準備中でしたが、「Too-ticki(トゥーティッキ)」や「自由帳ギャラリー」など、クリエイターを応援するギャラリーが多いことが特徴的で、高円寺ならではの街並みが垣間見れるのではないでしょうか。

⑤ 高円寺シアターバッカス

高円寺 あづま通り商店街の横道に入り、目指すのはマイクロシアター「バッカス」。ビルのワンフロアでクリエイターの作品を上映しています。1日限定上映やトークショーなども催されているため、興味があれば上映予定をチェックしてみてください。ここから未来の巨匠が誕生するのかもしれないと思うと足しげく通ってしまいそうです。

⑥ 高円寺庚申通り商店街

高円寺 お次は、高円寺を北に突き抜ける「高円寺庚申(こうしん)通り商店街」を歩きます。ここには食料品や日用品、暮らしのサービスなど、高円寺に住む人たちの生活必需品が集結。「庚申」という名の通り、道中には庚申塔(道教に由来する庚申信仰に基づいた石塔)が建てられていて、街の歴史の深さが窺えます。 高円寺 室町時代から始まり、江戸時代で盛んに建立された庚申塔は、本尊が青面金剛で多くは「見ざる・聞かざる・言わざる」の三猿が刻まれています。庚申通り商店街にある庚申塔は、正徳六年(1716年)高円寺村の講中が悪病退散や村民安全祈願のために建立したもので、関東大震災や東京大空襲を経て修復を繰り返しながら、今も地元の人々に厚く信仰されています。

⑦ スパイスカレー青藍(せいらん)

高円寺 庚申通り商店街を北上して、ランチに目星をつけていたスパイスカレーの名店「青藍(せいらん)」に向かいます。カウンターに10席ほどの店内は、開店後すぐに賑わいを見せます。著者は「スパイスチキンカレーZ定食(小)」をオーダー。注文を受けてから炒められる粗挽きスパイスの香りが食欲をそそり、臨場感あるキッチンの様子が待ち時間も楽しませてくれます。 高円寺 スパイスチキンカレーZ定食は、ターメリックライスとスパイスカレーに、キャベツ・ニンジン・大根の3種の副菜付きで、「小」でも大満足のボリューム。スパイスカレーは、噛んだときにプチプチと弾けるスパイスの触感と刺激、口の中で広がる香りによって食べる手が止まりません。途中から副菜を混ぜて味変するのもおすすめ。食べ終わった後はスッキリとした余韻が残り、満足感がありつつお腹に重たい感じがありません。 高円寺 青藍では、店頭販売のお土産も見逃せません。著者も選りすぐって「屋久島 海と森のカレー」を購入。青藍が監修したトビウオのミンチボールと、たんかんが入った爽やかなカレーです。レトルトパウチでもホールスパイスの香りと味わいが封入されているので、自宅でもお店と同じスパイスチキンカレーの雰囲気を味わえるのではないでしょうか。

⑧ ドーナツのフロレスタ

幸せな口福感で満たされた後は、庚申通り商店街を南(駅方面)に向かってテクテクと歩いていきます。2分ほど歩いたところに、魅惑の甘い香りを漂わせる可愛らしい外観のお店を発見。スイーツは別腹とつぶやき、手作りドーナツ専門店「Froresta(フロレスタ)」に立ち寄ります。 高円寺 フロレスタでは、国産・有機材料にこだわり、体にやさしく美味しいドーナツを手作りしているそう。オーソドックスな「ネイチャー」をはじめ、可愛いデコレーションが施された「どうぶつドーナツ」シリーズなど、どれも美味しそうで目移りします。この日は七夕間近だったため、期間限定でサンリオの「キキララ」とコラボしたドーナツもありました。 高円寺 フロレスタにはイートインスペースが数席あるため、ドーナツとドリンク、または夏限定のかき氷などをお供に、高円寺を行き交う人々の賑わいや雰囲気に浸りながら足を休める。そんなツウな楽しみ方をしてみてもいいかもしれません。

⑨ TEA MARKET Gclef(ジークレフ)

高円寺 さらに南へと歩みを進めると、シングルオリジン・ティーの専門店「Gclef(ジークレフ)」が現れます。紅茶を中心に中国茶やフレーバーティーなど多彩なラインナップで、店長が直に買い付けに赴き厳選した茶葉を取り扱っています。よく冷えたウェルカムティーをご馳走していただくと、スッキリとした甘みとフルーティーな香りの世界に一気に引き込まれます。 高円寺 店内では次々とお茶の試飲をさせてもらえ、買い込みたくなるほどにどれも飲みやすく味わい深いと感じました。お茶に合った淹れ方や、茶葉の特徴なども教えてもらえるのがとても面白く、思わず紅茶談義に花が咲きます。店長の趣味だという素敵な器で試飲させてもらえるので、コーディネートの参考にもなります。 高円寺 陳列棚の一角にはスパイスを使ったフルーツジャム。ここでもスパイスが登場するのかと、高円寺での遭遇率に驚きます。ただ、こちらは刺激的なスパイスのイメージとは違い、フルーツの甘みを引き立たせたお茶請けにぴったりのお味。ジャムと紅茶をセットにお茶会が開けたら素敵だなあ、と甘い夢が膨らみます。季節によって店頭に並ぶ茶葉が変わるようなので、茶葉がなくなる都度訪れたくなるお店でした。

⑩ 高円寺中通り商店街

庚申通り商店街をさらに南下すると「高円寺中通り商店街」に突き当たります。周辺には居酒屋や古着屋などが多く集まり、高円寺の中でもディープな商店街と言われています。第二次世界大戦の東京大空襲で焼け野原になった高円寺は、戦後に闇市が立ち並んだそう。そういった背景からか、市場の面影が色濃く残っているように感じられます。 高円寺 この一帯では、古い建物の中に新進のテナントが入ることで、新旧の文化がミックスされた独特な雰囲気がつくり出されています。これまで歩いてきた高円寺の商店街とはまた違う、サブカルチャー色の濃さが体感できてオススメです。

⑪ 古道具 なかの屋

高円寺 高円寺中通り商店街の中腹にある「なかの屋」には、小さな店内に電話機やガラスコップなどが所狭しと並び、ジャンルを問わないレトロな道具が集められています。ひとつひとつが個性に溢れているので、それぞれの魅力に引き込まれながらつい時間を忘れて掘出し物を探してしまいます。売り物のラジオから流れる音もまた心地よく、タイムスリップしたかのような感覚に陥ります。

⑫ 宿鳳山(しゅくほうざん)高円寺

高円寺駅を縦断して、駅名の由来となった「宿鳳山高円寺」を訪れます。このお寺は1555年に創始され、徳川三代将軍・家光が鷹狩りの度に立ち寄って休憩していたそう。それまで高円寺周辺は「小沢村」と呼ばれていましたが、この地を気に入った家光が寺の名前から「高円寺村」に改称し、それが「高円寺」という地名に転じたと言います。 高円寺 高円寺の参道には、もみじが生い茂ったトンネルがあり、四季折々の風情が楽しめるスポットとして親しまれています。風土に深く結びつくこの高円寺で、歴史ロマンに思いを馳せてみるのも趣があって素敵ですね。

⑬ 名入れ雑貨専門店CHARGE(チャージ)

高円寺 高円寺の南エリアでは、名入れプリント専門店「チャージ」に立ち寄ってみましょう。ここではオリジナルTシャツを制作したり、既存のデザインから選んで名前を入れる玄関マットを注文したりと、唯一無二のグッズを作ることができます。他にも多くの名入れグッズが作れるようなので、ギフトシーンでも重宝しそうです。

⑭ 日本の手仕事・暮らしの道具店 cotogoto

高円寺 ビル2階の大きなウィンドウが目を惹く雑貨店「cotogoto(コトゴト)」。国産の素材を使い、職人が丁寧に作った質の良いこだわりの道具が集められています。窓から差し込む日差しで店内は明るく、品物の自然な風合いを引き立たせます。日常使いをイメージしやすい形状や風合いの品物が多いため、あれやこれやと手にとっては物欲しくなってしまいます。 高円寺 コトゴトでは、シーズンごとにテーマをもった道具が日本各地のブランドから集められる企画展が催されていると言います。この日は「薗部産業」の檜の間伐材を使ったリス皿に注目。木目が美しく、手触りがなめらかで木材の温かみを感じます。お手入れが簡単なので気兼ねなく使えるのも嬉しいところです。

⑮ アール座読書館/エセルの中庭

高円寺 高円寺のレトロイメージを象徴するカフェスポットにも寄ってみます。すぐにここだと分かる、手作り感のある入口階段を上ると、2階にはお喋り禁止の「アール座読書館」、3階には小説の音読が流れる「エセルの中庭」があるアール座。この日はフレーズに惹きつけられ「エセルの中庭」で足を休めることにしました。 高円寺 お店は、名前の通り中庭がイメージされていて、エントランスにはお庭の入り口を思わせるアイアンゲート、中央には水槽や草木がレイアウトされています。店内には優しい声の朗読が流れ、まるでファンタジーの世界に入り込んだようです。物語の始まりを予感させるメニューの表紙、そして開けば物語に登場するような名前のドリンクやフードが並びます。ここでしばし非日常を感じ、心が穏やかになる時間を過ごすことができました。

⑯ Days(デイズ)

高円寺 次に訪れた「Days(デイズ)」は、ステーショナリーや机上雑貨を扱う小さなお店。国内外の様々なブランドメーカーからセレクトされた、ナチュラルテイストの道具が揃っています。使い勝手の良い道具だけではなく、見栄えのする道具やインテリア小物も置かれています。一味違ったこだわりの道具を探している方も、きっと気に入る道具が見つけられますよ。

⑰ ハチマクラ

高円寺 映画のワンシーンに出てきそうな、アンティークな雰囲気が魅力的なお店「ハチマクラ」。古い包装紙や古本・切手・ハガキなど、紙製品を数多く取り揃えています。手帳やノートをデコレーションするのが好きな方には、宝箱のような空間でオススメです。

⑱ 大怪店(だいかいてん)

高円寺 日本で唯一と言われる妖怪専門店「大怪店」。妖怪をテーマにしたアート作品やグッズ、コラボメニューなどが用意され、ここにしかない妖怪作品や妖怪アーティストに出会えるお店です。1時間300円という破格の価格で利用できる「怖~キングスペース」も要チェック。背筋から涼しくなりたい方、妖怪に興味がある方は必訪のスポットです。

⑲ 高円寺パル商店街

高円寺 高円寺駅の南口改札から程近くに位置する「パル商店街」。ヴィンテージショップの聖地として名を轟かせるこの商店街は、若者が集うショップも居並び、古着屋やカフェには学校帰りの高校生達の姿もチラホラ。アーケード商店街なので、雨の日も安心して街歩きができます。

⑳ DEALERSHIP(ディーラーシップ)

高円寺 コトゴトの姉妹店で、ファイヤーキングを中心とした1940年~80年代のヴィンテージグラスウェア専門店「DEALERSHIP」。入口の階段部分から既に並び始めているグラスを始めとして、定番からレアモノまで常時5000点が揃っています。スヌーピー・ディズニー・企業コラボなど、ビンテージトイの品揃えも豊富で、探していたアイテムが見つかるかもしれません。

おわりに

高円寺は、一度では回り切れないほどディープで多彩なプロムナードエリア。独自の芸術文化を発展させながらも、街の至るところで趣ある旧跡が見られ、古いものを排除せずして共生し続ける街の姿がありました。 高円寺 今回訪れた以外にも気になるスポットが沢山あるので、何度も通って穴場を探すような楽しみ方もできそうです。新宿から近く交通の便が良いため、ふらりと小旅に繰り出せる気軽さが何より嬉しく、訪れればきっと新しい価値観と出逢えるはずですよ。

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小林 祥子

小林 祥子

システムエンジニアからフリーランスへ転身。趣味はアンティーク集めやギター演奏、お茶(紅茶・中国茶・茶道)、金継ぎ、オイルランプ集めなど多岐にわたる。中国茶エキスパート”シニア”の資格を持ち、インドアライフを追求している。

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