日本を代表する商業エリア「日比谷」は、その大部分の土地を占める日比谷公園や地上35階・地下4階の東京ミッドタウン日比谷をはじめとして、高級ホテルや劇場施設が居並ぶ一大エンターテインメントスポット。今回の東京まち歩きの舞台は、そんな東京エンタメの裾野の広さを感じる「日比谷」です。
かつては江戸城下で大名屋敷のならぶ町並みも、今やビル群がつらなる近代化都市。そんな高層ビルが迫りくるかのようなスケールを感じつつも、四季折々の草花が生い茂る緑豊かな景観もあり、ディープな雰囲気を醸しだす裏路地もあり、見応えのあるスポットが数多く点在します。
日比谷まち歩きマップ
まち歩きのスタート地点は、日比谷エリアからわずかにずらして内幸町駅。中心地から散策をはじめると浮足立ってしまいそうな不安もあり、外側からじっくりと様子を窺がいながら歩を踏み出します。
目次
① 日本の酒情報館
日本の酒情報館
都営三田線・内幸町駅のA4出口からほど近くに『日本の酒情報館』というPR施設があることをご存知でしょうか? 日本の酒と題してあるように、日本酒だけでなく焼酎や泡盛など様々な “Sake” 文化を学ぶことができ、お酒の購入や有料試飲もできる隠れ呑兵衛スポットです。
館内ではお酒に関する映像コンテンツが放映され、お酒の原材料や酒造りの道具なども展示。英語対応もしっかりされているため、外国の方にもおすすめです。珍しいお酒やギフト向きな見栄え感のあるお酒も豊富に取り揃えられています。
四の五の言っても呑まねば分かりませんよね。有料試飲は時期によって様々なセットが用意され、1杯からでも試飲できるのが嬉しいポイント。椅子とテーブルも並べられているので、ゆったりとお酒を堪能する時間を愉しむことができます。
「館長の気まぐれセット」は流石と思わせる至高のセレクト。このまま今日は一旦帰ろうかと思ってしまうほど充実した時間を過ごせました。自分が日本酒好きというだけでなく、酒ギフトを探すときに知っていると頼りになるスポットです。
② 日比谷公園
日比谷公園
開始からいい気分に浸ったところで、日比谷散策で外すことのできない『日比谷公園』を訪れます。東京の中心地にありながら大規模でかつバラエティーに富んだ公園内には、思い思いに憩いの時間を過ごす人々で常に賑わいます。
専らイベントスペースのイメージが強い日比谷公園の敷地内には、日比谷公会堂・野外音楽堂・日比谷図書文化館など様々な文化施設が同居します。公会堂は2028年末まで改修工事を予定し、野外音楽堂も2024年10月から再整備に入りますが、更にパワーアップした姿が今から楽しみでなりません。
公会堂と図書文化館に挟まれたスペースには、”映えるカレー” で有名な「Curry Labo Tokyo」があります。古民家カフェのようなレトロなオシャレ感の建物には、店内席だけでなくテイクアウト窓口やテラス席もあり、それぞれ過ごしたいスタイルでカレーを味わうことができます。
四季折々の草花を観賞したり、ソーラー時計や大噴水を横目におしゃべりをしたり、日比谷公園を歩いていると楽しみ方のバリエーションが多いことに驚かされます。時折、アート作品が設置されている場所にも遭遇するので、様々な感性が刺激されるでしょう。
日比谷公園の森の中に構える「日比谷松本楼」には、1階の洋食レストラン「グリル&ガーデンテラス」と3階の仏蘭西料理レストラン「ボア・ド・ブローニュ」が入ります。120周年を迎えた老舗の洋食を木漏れ日のなかで堪能できます。どちらも予約可能なので、事前に確認して訪れることをおすすめします。
意外と知られていませんが、日比谷公園の敷地内には遊具が設置された広場があり、家族連れにもやさしい一面を覗かせます。また、広場の横には人工芝のテニスコートが5面もありました(東京都スポーツ施設の利用登録後に利用申し込みが可能)。
日比谷公園の端(皇居側)では「伊達政宗 終焉の地」という看板を発見。伊達政宗は東北地方の武将大名ですが、徳川幕府下では野心家として警戒され、伊達政宗を祖とする仙台藩に江戸城下の外桜田を拝領させたそうです。そして生涯を終えた地が江戸参勤で訪れたこの地だったということです。
日比谷公園の北東端「日比谷門跡」には、土手の名残りと石垣塀が今もなおその形をとどめています。この門を構築したのもやはり仙台藩当主・伊達政宗。石垣には階段を使って登ることもでき、高層ビル群をバックに政宗も見たであろう美しい庭園風景をのぞむことができます。
③ ザ・ペニンシュラ東京
ザ・ペニンシュラ東京
皇居外苑と日比谷公園に面したエリアには、香港に本社を置く香港&上海ホテルズが運営する『ザ・ペニンシュラ東京』があります。ハイグレードな客室やサービスだけでなく、スパ施設も高い評価を受ける5っ星ラグジュアリーホテルです。
地下1階には、人気のペストリーショップ「ザ・ペニンシュラ ブティック&カフェ」があるので立ち寄ってみましょう。美しい姿形のスイーツや高級感が漂うアイテムが並び、ギフトセレクトと同時に目の保養ができてしまいます。バレンタインシーズンには限定ギフトが登場するのでチェック必至です。
地下1階の通路からはパティシエによる制作風景を垣間見ることができ、これもペニンシュラを訪れるひとつの醍醐味です。あのスイーツはそうやって作っているのか、とプロの腕前を実感する体験になりそうです。
④ b8ta(ベータ)
b8ta
最新ガジェットの体験型ストア『b8ta(ベータ)』は、ザ・ペニンシュラのほど近くに店を構えます。「売らない店」というビジネスモデルを展開し、常に前衛的な商品を陳列するエンタメ性を備えています。
次世代型XRグラス「VITURE ONE」は、サングラス型のプライベートシアター。有機ELレンズと空間オーディオシステムを搭載し、120インチ相当の大画面でシネマ級の臨場感を味わうことができます。
「自動運転で動く家具。」はその名の通り、ロボットと家具が一体化したアイデア商品。人の声やアプリの指示で動き、タイマー機能で毎日同じ時間に本や薬を運ぶなど便利な機能が搭載されます(サブスクリプションで月額料金が設定)。
⑤ かごしま遊楽館
かごしま遊楽館
西郷どんの看板に惹かれ訪れたのが、鹿児島県アンテナショップ『かごしま遊楽館』。1階では食品販売(さつまいもの館)、2階はレストラン(遊食豚彩いちにいさん)、3階は工芸品などの展示・販売(鹿児島ブランドショップ)となっています。
さつまいもの館では美味しそうな薩摩揚げがズラリと並びます。自宅用のお土産にチーズ入りのさつまあげと、奄美大島のソウルフード・鶏飯(フリーズドライ)を購入。夫と子供が喜びそうなグルメを早々にゲットしました。
⑥ 日比谷ゴジラスクエア
日比谷ゴジラスクエア
日比谷シャンテのリニューアルに合わせて登場した『日比谷ゴジラスクエア』。日比谷は映画と演劇の街として知られていたことから、日本版ブロードウェイを構想して命名したそうです。周辺にはベンチも多く、足休めの場としても親しまれています。
東京ミッドタウン日比谷をバックにしたゴジラ像。映画「シン・ゴジラ」のゴジラをベースにつくられた約3mの像が出迎えてくれます。ちなみにシン・ゴジラの身長は118.5mで、東京ミッドタウン日比谷は191mなのでゴジラもタジタジです。
ゴジラスクエア内にあるスイーツ&ダイニング「THE BLUE」。有名ホテル出身のパティシエチームがつくる絶品ケーキを優雅な空間で味わえ、贅沢なひと時を過ごすことができます。卵型のエッグチェアは人気があるので予約することをおすすめします。
⑦ 東京ミッドタウン日比谷
東京ミッドタウン日比谷
六本木に次ぐ東京ミッドタウンとして2018年にオープンした『東京ミッドタウン日比谷』。三井不動産が手掛ける大規模複合施設で、地下4階・地上35階建て(地下1階~地上7階が商業フロア)の高層ビルは、今や日比谷の新しいランドマークとして存在感を放っています。
東京ミッドタウン日比谷の1階にある「LEXUS MEETS…」は、車両展示や試乗、ブティック、カフェが一体となったレクサスのブランド体験型施設です(2023年8月31日から改装休業)。デイリーユースカフェ「THE SPINDLE」では、LEXUSを眺めながらカフェメニューやアルコールなどをいただくことができます。
2階には、スキンケアブランドの「THREE」が展開するコンセプトショップとダイニング&デリが入っています。地産地消・身土不二をコンセプトに植物由来の素材を中心としたメニューは、ヘルシーでありながら満足感バッチリ。希望に応じてヴィーガン対応もしてくれます。
3階の「HIBIYA CENTRAL MARKET」内には、ひときわ目を惹く床屋のサインポールが置かれた理容室「理容ヒビヤ」があります。日本最高レベルと評される衛生管理体制はもちろんのこと、廃業した昭和の理容室から引き継いだ什器に安心感を覚えます。
地下1階にお店を構える「鈴懸(すずかけ)」は、”現代の名工” に章された初代中岡三郎の教えを受け継ぎながら、博多で90年余り和菓子づくり一筋に歩んできた和菓子店です。他とは一線を画す洗練された和菓子は、季節感のあるラインナップが月ごとに更新され何度訪れても飽きさせないと評判です。
⑧ 日比谷シャンテ
日比谷シャンテ
2018年に東京ミッドタウン日比谷の開業と合わせてリニューアルされた『日比谷シャンテ』は、東宝本社ビルの一部を占めるショッピングモール。ミニシアター系の「TOHOシネマズ シャンテ」は日比谷シャンテの向かい側にあり、「TOHOシネマズ 日比谷」は東京ミッドタウン日比谷と東京宝塚ビルにそれぞれ入居しています。
日比谷シャンテと東京ミッドタウン日比谷は地下通路で接続されていて、その壁面には「合歓の広場(現ゴジラスクエア)」に設置されていた映画スターたちの手形がズラリと飾られます。日本人俳優だけでなく、海外スターやアニメキャラクターまで77個の手形が並びます。
地下1階にある「日比谷しまね館」は、日本酒発祥の地として知られる島根県のアンテナショップ。島根県の郷土品や名物グルメなどが豊富に取り揃えられ、地酒の試飲カウンターまで設えられています。ここでは有名な製麺所「出雲たかはし」の冷やし中華を購入。ちなみに島根県など西日本では “冷やし中華” のことを “冷麺” と呼ぶそうです。
⑨ 東京宝塚劇場
東京宝塚劇場
東京ミッドタウン日比谷の裏手には、日本エンタメ界の一大巨塔『東京宝塚劇場』が拠をかまえます。1934年に開業した由緒あるミュージカル劇場は、老朽化から2001年に建替えられ現在も多彩な演目が上映されています。”宝塚友の会” に入会しても人気公演は予約困難と言われ、その人気の高さが窺えます。
宝塚劇場に入ってすぐのエントランスには赤い絨毯が敷かれ、煌びやかなシャンデリアが出迎えてくれます。このエレガントな演出が足を踏み入れた人々を夢の世界に誘ってくれるのでしょう。一生に一度は経験してみたいと思いながら宝塚劇場を後にします。
⑩ 日生劇場
日生劇場
東京宝塚劇場に隣接する『日生劇場』は、開業60周年を迎えたオペラ・ミュージカル・演劇など様々な舞台芸術を上演する劇場。実は過去にミュージカル「プリシラ」を鑑賞しに訪れたことがある著者。その壮大なスケール感と芸術性の高い内装に心惹かれ、待ち時間すら楽しめた記憶が今も残ります。
日生劇場の大きな見所はその建築。”階段の魔術師” の異名を持つ著名建築家・村野藤吾氏の設計で1963年に改修されました。洞窟のように角がない館内、見る角度によって印象が変わる南部鉄の支柱、そして天井には色付きの石膏に約2万枚のアコヤ貝が貼られ幻想的な雰囲気を生み出しています。
日生劇場が入るビル1階にある「CAFE A LA TI ENNE(カフェ・ア・ラ・ティエンヌ)」は、足休めにおすすめしたいスポット。この周辺では比較的入りやすく、外のテラス席からは日比谷公園を臨む景観を楽しみながらゆったりと時間を過ごすことができます。
⑪ 日比谷 シアタークリエ
シアタークリエ
日比谷シャンテに隣接する『シアタークリエ』は、知る人ぞ知る演劇の劇場。元々は1957年に開場し森繫久彌氏の主演演劇で杮落しの幕が上がった「芸術座」で、それに代わり2007年にオープンしました。現在ではターゲット層を20代~40代までの女性に絞り、支配人やプロデューサーはすべて女性が起用されているそうです。
⑫ 帝国ホテル 東京
帝国ホテル 東京
日本初の西洋式ホテルとして名を馳せる『帝国ホテル 東京』。旧来は仮装舞踏会など諸外国との社交場として使用された鹿鳴館とともに日本の近代化を象徴する建築として知られました(鹿鳴館跡の碑は再開発のため撤去)。帝国ホテル本館は数度の建て替えが行なわれ、2036年には4代目となる新本館が完成予定です。
帝国ホテルプラザ
帝国ホテルのタワー館竣工とともに誕生した「帝国ホテルプラザ」は、帝国ホテルに隣接するショッピングプラザです。高級ブティックやアンティーク店が居並び、格式あるラグジュアリーなショッピングを楽しむことができます。
帝国ホテルプラザ1階には2021年のリニューアルで売場が3つのエリアに分けられたホテルショップ「ガルガンチュワ」があります。その中のパティスリーでは煌びやかなマカロンやショコラが並び、金融の礎を築いたことで知られる帝国ホテル初代会長・渋沢栄一氏にちなんで創られたフィナンシェが金塊のような見た目で人気を博しています。
⑬ 日比谷OKUROJI
日比谷OKUROJI
帝国ホテルから有楽町駅と新橋駅間の高架下に向かうと、煉瓦アーチ高架橋を活かした商業施設『日比谷OKUROJI(オクロジ)』があります。全長300mのエリアに飲食店やショップなど30店が並び、日比谷の回遊性を効率よく高めています。
ソックス専門メーカー「GLEN CLYDE(グレンクライド)」は、存在感・丈夫・履きやすいをモットーにすべて日本製で仕立てられた上質な靴下を取り扱います。1993年に日本で初めてアンクルソックス(くるぶしソックス)を制作したと言われ、現在も日本初の永久交換保証サービスなど新たな試みを打ち出しています。
和とフレンチの要素を融合したスイーツを提供する「パティスリーパロラ」では、店内カウンターでデセールコース(デザートとドリンクのコース)を堪能することができます。カヌレやフィナンシェなどテイクアウトスイーツも、ワンランク上の手土産として人気を集めています。
新潟県のアンテナショップ「NIIGATA1〇〇(ニイガタイチマルマル)」は、新潟県が誇る逸品を味わえる体験型ショップです。広い店内に所狭しと並べられた地酒やセレクトアイテムは自宅用だけでなくギフトにもお誂え向き。角打ちには飲み放題プランやおつまみメニューもあり、様々な用途で使い勝手がききます。
⑭ 内幸町ホール
内幸町ホール
日比谷OKUROJI の新橋側出口をでるとすぐ現れる『内幸町ホール』は、客席数183席でコンパクトながらも本格的なシューボックス型の劇場があり、ライブ・コンサート・落語会など多目的な用途で幅広く利用されます。
内幸町ホール前の植え込みには「樋口一葉 生誕地」の史跡が建てられていました。樋口一葉は言わずと知れた小説家で「たけくらべ」など代表作を残しています。この地は当時、東京府構内の武家長屋であり、父は東京府警視の役人だったそうです。ちなみに、樋口一葉は五千円札の肖像画になっていますが、2024年度を目途に女性教育の先駆者「津田梅子」が新しい肖像画となります。
⑮ URACOR(銀座裏コリドー)
URACOR(銀座裏コリドー)
内幸町ホールから程近く、有楽町駅と新橋駅間の高架下には『URACORI(銀座裏コリドー)』という商業施設があります。出会いのメッカとして賑わう「銀座コリドー街」の裏にあることから名付けられ、おしゃれで新しい高架下の異空間を形成しています。
銀座裏コリドーには、大衆酒場やおでん屋など飲食店だけでなくディスコクラブもあり、通路内もネオンライトで彩られるディープ感を醸しだしています。新橋のガード下と言えば年季の入ったイメージがありましたが、若い世代も楽しめるハイブリッドな雰囲気のお店が軒を連ねます。
⑯ 第一ホテル東京
第一ホテル東京
銀座裏コリドーの新橋側出口をでると、1993年に開業した高級ホテル『第一ホテル東京』が佇みます(前身となる第一ホテルは1938年に開業)。エレガンス&エクセレンスをテーマとし、華やかさと気品をそなえたヨーロピアンスタイルが特徴的です。
第一ホテル東京には、鉄板焼きや寿司店などの名店が軒を連ねます。これらでは、奈良県・愛媛県・岡山県・香川県・鳥取県のアンテナショップとコラボレーションした地酒の提供がひそかに人気を集めています。日比谷まち歩きの締めくくりにおすすめしたいスポットです。
- おわりに
日比谷は、東京の中心エリアとあって流石の貫禄を漂わせるプロムナードエリア。インドア・アウトドアや日中・夜間など、思い思いの過ごし方を計画して訪れてみてください。今回はランチ休憩なしで臨みましたが、日比谷シャンテの地下街や⽇⽐⾕国際ビルの地下街(ヒビコクチカシタ)には多くの飲食店が集結しているのでおすすめです。