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勤めていた会社を辞めることは人生にとっての大きな転機。今後の期待に胸を膨らませる一方で、不安が入り交じる複雑な心境をむかえます。そんな第二、第三の人生とも言うべき新しいスタートラインに立つ人へ、はなむけの言葉とともに退職祝いのギフトや転職の餞別を贈ってみてはいかがでしょうか。
盛大に送別会を開いて花道を飾ったり、サプライズでお祝いの品物を贈ったりする機会には、どういった渡し方でどんなギフトを贈るべきか悩んだりもしますよね。本記事では、退職祝いや転職祝いの餞別をおくる上で気になる、基本的な贈答マナーをご紹介します。
退職祝いの金額相場は、平均でいくらくらい?
退職祝いや転職祝いにおける品物の相場(値段)は、相手との関係性や、個人もしくは複数人で贈るかでいくらになるか変わってきます。複数人で贈るケースでは、会社の上司・同僚・部下や学校の先生(恩師)が退職する際に、部署や有志一同で「一口千円」などとカンパを募って集まった金額を予算にすることが多いようです。
複数人でお金を出し合って退職祝いを贈る場合、人数にもよりますが一般的に「3万円~5万円」くらいの予算が適正相場だといいます。ギフトを選んで尚お金が余る場合は、余剰金を商品券にしたり、現金をそのまま封筒に入れるなどして本人に直接渡しても良いかもしれません。
個人で退職祝いや転職祝いを贈るケースは、部署は違えど親交の深かった同期への餞別、取引先など違う会社でお世話になった人へのお礼、父親・母親・祖父母・兄弟姉妹など家族内でのねぎらい、プライベートでも仲の良い友達・先輩・後輩への激励などが代表的なシチュエーションです。
個人的にギフトを贈るのであれば、相手との関係性によって品物の予算をいくらにするか決めましょう。同期・同僚など立場の近い人に贈る退職祝いの相場は、「3千円~5千円」といわれています。また、取引先や上司・先輩など目上の人に対しては「5千円~1万円」が相場であり、両親や家族など関係性の深い身内であれば「1万円~3万円」を予算にすることが多いようです。
いずれにしても、退職祝いや転職祝いの餞別は、今後も相手と変わらぬ親交を続けたかったり、お世話になったお礼を最大級に伝えたかったりすると、相場感を超えて予算を高く見積もることがあります。平均的な金額相場は意識しつつも、相手にとって相応しいギフトを選ぶことを大切にしてみてください。
退職祝いに適した品物とタブー(NGなもの)
退職祝いや転職祝いの餞別をおくるとき、何を意図して品物を選ぶかで、相手の喜びようも変わってきます。ここでは、退職祝いや転職祝いに適したプレゼントとその根拠、一般的にNGと考えられているタブーのプレゼントをご紹介します。
男性と女性で違う、退職祝いを選ぶポイント
例外はあれど、一般的に男性と女性とでは好みの質が異なります。退職祝いや転職祝いをおくるとき、出来るだけ相手の趣味趣向に合わせたパーソナルギフトを選びたいもの。しかし、それがわからない場合は、男女の好みの傾向を念頭に入れた上でギフトをセレクトすることが大切です。
男性は、普段から身につけるアイテムにこだわりを持つ人が多い傾向にありますが、ショッピング自体は面倒と感じるため、あらゆるショップを巡っていいものを探すことが少ないはずです。したがって、退職祝いを贈る相手がいつも身につけているアイテムを想像し、そのジャンルでの一級品を贈ることが男性のプレゼント選びのコツとなります。
男性に好かれるギフトの具体例として、「ボールペン・万年筆・ペンケース」などのこだわり文房具、プライベートでも身につける「腕時計・財布・バッグ」、フォーマルな場でも着用できるような「ポロシャツ・ジャケット・ベルト」、デスクでも自宅でも使える「マグカップ・タンブラー・シェービングセット」などが挙げられます。相手の趣味が明白な場合、ゴルフ好きに「ゴルフボール・グローブ」、お酒好きに「ウイスキー・日本酒・ワイン」、釣り好きに「釣り竿・リール」を贈ってみても良いでしょう。
女性は美意識が高く、現実主義ともいえる実用的なアイテムを好む傾向にあります。また、ウィンドウショッピングが好きだったり、ファッション雑誌を日頃呼んでいるため、流行やトレンドをよく知っていることが多いでしょう。そこで、女性特有の美容グッズや食べたり使ったりして無くなる消えモノで、流行を重視しつつ普段は手の届かない高級品を贈ることが、女性のプレゼント選びのコツとなります。
女性に喜ばれるギフトの具体例として、日々のメイクを手助けする「化粧品・コスメ」、自宅内のボディケアで活躍する「ボディクリーム・入浴剤・バスソルト」、非日常感を味わえる「マッサージ券・エステ券」などが挙げられます。甘いものに目がない人には「高級チョコレート・焼き菓子」、冷え症の人には「ストール・スカーフ」、アクセサリー好きには「ネックレス・ブレスレット・ヘアアクセサリー」を贈ってみても良いでしょう。
退職祝いのプレゼントには、定番の花束を添えて
退職祝いや転職祝いを贈るときは、花束などのフラワーギフトを一緒に添えることでその場がより華やかとなります。引退は花道とも称されるように、退職や転職などの送別シーンでは、ボリューム感があって見ためにも美しいお花が欠かせない存在となっています。
退職祝いに適した花束(ミニブーケ)は、季節感があったり相手の雰囲気に合わせたフラワーアレンジメントが打ってつけですが、送別の場に相応しい花言葉を込めたフラワーギフトにしてみても素敵です。「感謝」の意味を持つダリア(白)・ばら(ピンク)・カンパニュラ、「希望」が花言葉のトルコギキョウ、「栄光」のグロリオサなどが定番の種類となっています。
花の香りにアレルギーがあったり、当日の帰宅手段が人の混みあう電車やバスだったりする場合、生花ではなくドライフラワーやプリザーブドフラワーなど造花にする心遣いも必要となります。近年では、一般的なフラワーショップでも造花のフラワーボックスを取り扱うお店が増えているため、贈るシチュエーションに合わせて使い分けてみてください。
相手との関係性に応じた、選び方のポイント
退職祝いや転職祝いのギフトでは、相手との関係性(距離感)によって品物を選び分けることも考慮しなければなりません。特にビジネスシーンなど公的な場では、プライベートに深く切り込まれることを嫌がる人もいるため注意が必要です。
両親や兄弟姉妹・祖父母・親戚・義父や義母などの身内や、親交の深い友達に退職祝いを贈る場合は、より生活に寄り添ったギフトを選ぶことがポイントになります。例えば、自宅内で使用できる「パジャマ・ルームウェア・扇子・健康グッズ」、居住空間を彩る「観葉植物・ハーバリウム」、名入れを施した「夫婦箸・ペアウォッチ」や好みの分かれる「テーブルウェア・食器類」を贈っても良いでしょう。
会社の同僚や上司・先輩後輩・取引先・学校の先生(恩師)など、会社や職場での関係が中心で、プライベートの付き合いが浅い場合は、当たり障りがなく相手が自由に選べるギフトが無難です。例えば、「カタログギフト・ギフト券」などの商品券、「食事券・クオカード・図書カード」などの金券は定番中の定番。「紅茶・コーヒー」、「バスタオル・ハンドタオル」なども生活に欠かせない必需品として喜ばれます。
退職祝いのタブー(注意すべきもの)
退職祝いや転職祝いに関わらず、贈り物をするときには選ぶことを避けるべきタブー(NGなもの)や、注意した方が良いとされる品物があります。ただし、これらは絶対に贈ってはいけないという訳ではなく、相手によっては不快にさせる可能性があったり、一般的に縁起が悪いといわれているだけであるため、頭の片隅に置いておいて場面に応じた取捨選択を心掛けるようにしましょう。
どんなシーンであっても言えることではありますが、ギフトの品物にはそれぞれ意味を持つことが多く、忌み言葉(不吉な意味の語)を連想させるようなものを避けるべきといわれています。ここでは、贈り物全般でタブー(NG)とされるプレゼントの一例をご紹介します。
- 刃物(包丁・はさみ・ナイフ):縁が切れる、という意味を持つ。
- 櫛(くし):「苦(9)」「死(4)」を連想させるため、贈り物には不向き。
- ハンカチ:ハンカチは漢字で手巾(てぎれ)と書くため、手切れを連想させる。
- ネクタイ:女性から男性に贈ると、あなたに首ったけ、という意味を持つため、恋人以外には注意が必要。
- 日本茶:日本茶は、香典返しなどの弔事に用いられることが多いため、お祝いには不適切といわれている。
- 割れ物(鏡・陶器・ガラス):割れたり壊れたりするため、縁や仲が壊れるという意味を連想させる。
- 棘のある植物:棘(とげ)が縁を傷付けるといわれる。
定年退職など一度きりしかないお祝いを贈るシーンでは、相手が上司や先生だったり両親だったり、目上の人であることがほとんどです。目上の人に対して贈り物をするときは、特に注意を払うべきとされていて、相手に尊敬の念を欠いたり選ぶ手間を省いたような印象を持たれないよう、品物のセレクトに注意しましょう。
- 現金:見下したイメージがあり、プレゼントを選ぶことを放棄した、と捉われる可能性がある。
- かばん・時計:勤勉に励んで欲しい、という意味を持つため、目上の人には失礼にあたる。
- ベルト:もっと気を引き締めて、腹をくくって、という意味を持つ。
- 筆記用具・文房具・万年筆:もっと精進して、という意味を持つ。
- くつ・靴下・下着:仕事上の関係だと、靴・スリッパなどの履き物や絨毯・玄関マットなどの敷き物は、踏みつけて出世すると捉えられる可能性がある。また、靴下や下着などの「下」が付くものも控えるべき。
- 印鑑:今後の自立を促す、という意味を持つため、目上の人には失礼にあたる。
- 老眼鏡・ルーペ・杖:お年寄を連想させ、不快に思う人もいるため避けるべき。
退職祝いや転職祝いをおくる場面では、ギフトと一緒に花束を贈ることが通例となっています。お花の種類にはそれぞれ花言葉という意味があり、国や地域によって解釈は違えど、可能であれば注意しておくべきでしょう。ここでは、場面によっては避けるべきお花の代表例をご紹介します。
- シクラメン:「櫛」と同様に、「死(4)」「苦(9)」を連想させるため。
- ジャスミン:夜に花を咲かせることから、花言葉が「愛の通夜」。
- ライラック:婚約者に贈ることは結婚破棄を意味する。
- チューリップ:ドイツなどでは「絶交」を意味する。
- 白百合・菊:死者をおくったり死者に手向ける花。
熨斗(のし)や包み方など、ラッピングのマナー
退職祝いや転職祝いのお祝いに付ける熨斗(のし)は、一般的には何度でも繰り返して良いという意味合いの「蝶結び(花結び)」の水引きを選びます。ただし、寿退社など人生で一度きりで良いお祝いには「結びきり」の水引きを用いることがマナーです。水引きの色は一般慶事用の「紅白(金銀)」、水引きの本数は一般的に「五本一組」となっています。
現代では、熨斗と水引きが印刷された「のし紙」を用いることが一般化されましたが、略式の贈答形式となりますので、改まった贈り物の場合は失礼に当たることもあります。退職祝いを手渡しする際は、包装紙で品物を包んでから「外のし」を付けます。郵送の際は、品物の箱に「内のし」を付けて、その上から包装紙で包むようにしましょう。また、近年では「簡易のし」と呼ばれる短冊タイプの無地のしを利用することも多くなってきています。
のし紙の上段には「表書き」と呼ばれる贈り物の意味を記載します。退職祝いや転職祝いの表書きは、退職理由に関わらず「御礼」を用いることが一般的です。定年退職の場合は「御祝」や「御餞別」、寿退社や転職など自己都合退職の場合は「御餞別」や「おはなむけ」でも問題ありません。
のし紙の下段には「名入れ」と呼ばれる贈り主の名前を記載します。個人で贈る場合には、氏名をフルネームで表書きよりもやや小さい文字で書きます。組織や団体など複数人で連名にする場合は、3人までは並びで氏名を書き連ね、4人以上になると「○○一同」や「○○有志一同」と一行で書くか、代表者の氏名の左隣に「外一同」や「○○一同」と二行で書きます(全員の氏名は別途紙を用意して内封)。
退職祝いはいつ渡す?タイミングと渡し方のマナー
退職祝いや転職祝いを渡すタイミングは、事前に退職の情報をつかんでいたとしても、正式に発表されてから1週間~2週間後が一般的です。送別会などが設けられているのであればその場で渡すのが望ましく、直前まで公示されないケースでは退職の1週間前~前日に渡すのが妥当といわれています。
渡し方のマナーとしては、職場で渡す場合、お昼休みや夕方・夜などの業務が落ち着いている時間帯が望ましく、部署などでまとめて渡すのであれば終業時間の少し前に人を集めて贈る方法が一般的です。可能であれば、業務外出の少ない日に、全員が揃うタイミングで渡すようにしましょう。
送別会やお祝いの席で渡す場合は、お酒のペースが速まる前や、食事が一旦落ち着いた中座のときに渡すようにします。送別会について、3月~4月は社会的に歓送迎会が多い季節でもあるため、幹事になった人はお店の予約を早めに済ませておくと安心です。
退職祝いにお返しは必要?返礼品やお礼状のマナー
退職祝いや転職祝いのお祝いをもらった際は、返礼品などのお返しをすることがマナーとされています。お返しの金額は、「半返し」ともいわれるように、もらった品物の「半分~3分の1」が相場とされています。ただし、もらった金額が大きい場合、返礼品が高額になりすぎると逆に失礼となるため注意が必要です。
部署や団体からまとまって退職祝いをもらった場合、各人の拠出額がわかるのであれば、額に応じてお返しの金額に差をつけます。一般的には、コーヒーや紅茶などの僅かばかりの品を贈ることが多く、拠出額が大きい人にはセットや若干高級なものを選ぶと良いでしょう。
また、ビジネスシーンでは特に、贈り物をいただいた方に対して謝意を述べることが大切です。感謝の気持ちを伝え、今後の付き合いを円滑にするためにも、最低限メールや電話などでお礼を述べるようにしましょう。正式には「お礼状」と呼ばれる手紙を送ることがマナーとされますので、以下のリンクを参考にしてみてください。
退職や転職は、その人の人生にとって重要なターニングポイントです。不安と期待が入り交じる心境を察して、気持ちよく送り出してあげることはもちろん、相手を不快にさせない贈答マナーを守り、今後の生活にも役立つようなお祝いのギフトを選んであげましょう。