スマイルレーベル

TOKYO街歩き

街歩き No.031 駒込|まちを歩けば歴史に当たる?往時を偲ばせる「史跡沼」スポット探訪

街歩き No.031 駒込|まちを歩けば歴史に当たる?往時を偲ばせる「史跡沼」スポット探訪

風は冷たくとも陽射しは暖かく、お出掛けしたくなる清々しい日が増えてきました。「どこかに行きたいけれど、どこへ行こう…」。今回は、そんなときにオススメしたいスポットをご紹介。豊島区の最東端に位置し、JR山手線・東京メトロ南北線が乗り入れる『駒込』にやってきました。大型の商業施設こそないものの、駅を中心に古くからの商店街がいくつも点在する下町情緒を残しつつ、歴史的な偉人にまつわるスポットも数多い駒込には見所が満載です。

駒込まち歩き

もともと、駒込エリアは古くから農村開発が盛んな土地柄。しかしながら、江戸時代に入ると江戸城に近い立地を基因として、将軍が日光社参の儀式などで利用する「日光御成道」が開かれ、交通の利便性が高まったことで町場を形成するようになりました。駒込周辺に歴史的なスポットが多いのはその名残なのでしょう。

ソメイヨシノ

また、日光御成道に沿うようにして寺院・武家屋敷が所狭しと設けられたことで当時は緑地に乏しく、上流階級の嗜みであった園芸は緑を求める庶民の間でも盛んになります。そのころ、駒込の「染井」という地で生業を営んでいた植木屋が品種改良した「吉野桜(ヤマザクラのこと)」を売り出したと言います。それが瞬く間に全国に広まり、改めて地名を冠し「ソメイヨシノ」と呼ばれるようになったそうです。このことから、駒込はソメイヨシノ誕生の地とも称され、いまも桜の名所が多く存在しています。

上中里駅

今日は少しばかり範囲を広げて散策するため、「駒込駅」に徒歩でアクセスしやすいJR京浜東北線の「上中里駅」から駒込方面へと歩いてみることにします。時刻は午前10時、駒込探訪のスタートです。

駒込まち歩きマップ

① 旧古河庭園/旧古河邸 大谷美術館

旧古河庭園

上中里駅から案内標識に従って「蝉坂」を上ること5分。「本郷通り」に突き当たり道路を渡った先に、遠くまで続く石垣と白壁の塀が見えてきます。信号を渡って塀伝いにさらに2分ほど歩くと『旧古河庭園』の正門があります。駒込駅からアクセスする場合は、最寄りに「染井門」がありますが、通常時は閉鎖されているようなので正門を目指しましょう。

旧古河庭園

個別で購入するよりちょっぴりお得な、旧古河庭園と六義園の共通入園券「園結びチケット」で入場します。このチケットは使用期限がなく、それぞれの庭園をお花の咲く季節や都合によって別々の日に訪ねることもできるのでお勧めです。旧古河庭園内にある『旧古河邸(大谷美術館)』の入館は10時半からなのでまずは庭園を散策することに。

旧古河庭園

大正初期の庭園の原形をとどめるこの庭園は、武蔵野台地の斜面と低地を活かすように設計されていて、丘の上に石造りの洋館(旧古河邸)が建ち、その洋館から見下ろすように斜面に洋風庭園、そして低地には日本庭園が設置してあります。そして、洋館と洋風庭園の設計を「日本近代建築の父」ジョサイア・コンドル、日本庭園の作庭を小川治兵衛が手掛けるという名匠尽くし。というのも、こちらは明治期の政治家である「陸奥宗光」の次男・潤吉が、古河財閥創業者「古河市兵衛」の養子になった際に、この地を陸奥家から古河家へ所有を移し、古河財閥3代目当主「古河虎之助」の住まいの場、また賓客接待の場として建てたもの。

ひいては、都立文化財に指定され、浜離宮恩賜庭園や清澄庭園を含む9つの庭園と共に、江戸、明治、大正から続く歴史・文化・自然を残す貴重な存在として「都立文化財9庭園」に指定されています。また、「国指定名勝」にも選ばれ、その景観は芸術上、鑑賞上でも高い評価を受けています。

旧古河庭園

洋館のある丘の上から見る景観は、洋風庭園から日本庭園まで全体が見渡せる眺望と、何といっても春と秋に咲き誇る洋風庭園のバラが見どころ。この日はバラの季節には早かったため見ることは叶いませんでしたが、洋館の佇まいと庭園の放つ異国情緒はとても優美で、気分はまるで英国貴族。

旧古河庭園

洋風庭園を抜けてさらに丘を下ると、今度は風光明媚な日本庭園が現れます。「心字池」の周囲をぐるりと散策できるようになっており、塀の外からは想像もつかないほどの広い庭園に驚かされます。所々に梅や牡丹の花が咲き、これから庭園に訪れる春の予感を知らせていました。春と夏の限定で茶屋ではお抹茶がいただけます。

旧古河邸

庭園は見ごたえたっぷりで、あっという間に旧古河邸の開館時間に。旧古河邸の玄関で入館料を支払って入館します。館内は1階が賓客を迎えるための洋風建築となっていて、色使いや緻密かつ美しいデザインの装飾・彫刻に見惚れてしまいます。各部屋は用途に合わせて雰囲気が変わり、ホワイト基調の明るい応接室や、ボルドー基調の落ち着いた大食堂など、いつまでも飽きることがありません。

また、部屋の窓から見える庭園はガラスを通して優美さを増し、時代を超えて人々を魅了してきたことが伺えます。また、応接室や大食堂は12時から喫茶として利用ができます。バラが咲き誇る季節に改めて訪れ、ゆったりとお茶をする楽しみができました。

2階へ上がると落ち着いた和風建築に。生活の場として日本人の親しみやすい様式を採用したそうで、生活する人々への設計者による深い配慮が込められていました。一部の部屋を大谷美術館の企画展示室として開放しており、残りの部屋はガイドツアーに参加した人のみ観覧することができます。

② 霜降(しもふり)銀座商店街

霜降銀座商店街

旧古河庭園の正門から駒込駅に向かって歩きます。江戸時代の岩槻街道であった「大炊介坂(おおいのすけざか)」を下った先に『霜降銀座商店街』があります。広い通りにある商店街かな?と思いきや、商店街は一本横に走る道幅3メートルあるかどうかの細い路地。もとは水路だった場所の上に商店が集まって商店街になったそう。入口にはマスコットキャラクター「しーちゃん」の描かれた素朴で可愛らしいアーチが掲げられています。

1956年に誕生したこの商店街は誕生から現在まで地域の人々の生活と憩いの場。ノスタルジックでありながら活気があり、長く親しまれ続けるお店と、新たに加わるお店が調和し、寄り道が捗る商店街です。それでは、中でも筆者が気になったお店をピックアップしてご紹介します。

③ 金魚亭(きんぎょてい)

金魚亭

もともと「瀧乃寿し」というお寿司屋さんが閉店後、レンタルスペース『金魚亭』として蘇らせたもので、商店街の中でもひときわ風情を放ち、目を引く建物です。金魚亭ではマルシェやワークショップ、コーヒーショップなど多種多様なイベントが行われていますが、どのイベントも注目度が高く、人の列ができます。この日もお菓子の移動販売店が訪れ、たくさんの人で賑わっていました。SNSでイベント情報が発信されているので要チェックです。

④ 89’s flower(エクズフラワー)

エクズフラワー

商店街を突き進むと商店街の道幅が広い道へと続きます。二股に分かれた路地が一本道になるところに『89’s flower』はあります。ドライフラワーを束ねた華やかなブーケや、時期を迎えつつある球根植物、店内に所狭しに並ぶ生花など、こじんまりしたお店に多種の植物が並びます。季節に合わせたレッスンも開催しているそうで、気軽に楽しみたい人、もっと深く知りたい人、それぞれに合わせた形でお花とお付き合いをさせてくれます。

エクズフラワー

昨今流行りの球根植物の水耕栽培。筆者も興味を持っていたのですが、思いのほか球根植物を扱うお店は見当たらないもの。そんなときに巡り合ってしまったからには購入の機会を逃がすわけにはいきません。ヒヤシンスや水仙、クロッカスなどが並ぶなか、筆者はクロッカスに惹かれ手に取ります。

店員さん曰く「もうお花の時期を終えてしまったもの」とのことでしたが、球根植物は毎年楽しめるそうなので次の年をの開花を待つ楽しみを持って帰ることに。「これから葉も落ちて球根だけになるけれど、土に埋めてお花の時期まで栄養を蓄えさせてあげるとより多くお花が咲くようになりますよ」と丁寧にアドバイスも頂けて、素敵な球根ライフが送れそうです。

⑤ 雑貨屋 coma(コマ)

コマ

商店街の広い通りを歩くと、象牙店の看板と共に『coma』があります。可愛らしい外観と開放感のある店舗のため気軽に立ち寄りやすい雰囲気。comaは象牙の加工品を中心に、和食器やアンティーク調の雑貨、子供向けおもちゃなどジャンルは様々に、おしゃれで可愛らしい雑貨を扱うお店です。

コマ

象牙はワシントン条約で輸入が禁止されたことにより、国内の象牙商も加工職人も減少しているため取り扱っている店も限られてきているなかでの豊富な品揃え。また、comaでは象牙と聞いてイメージするような仰々しいインテリアではなく、普段使いしやすいイヤリングやネクタイピンなどのアクセサリーが中心です。独特な乳白色と艶が美しく、その希少性からもプレゼントにも喜ばれそう。

コマ

筆者は店内で見つけたアンティーク調のカットガラスの小皿と、レトロなマッチを自宅にお迎え。自宅のカフェテーブルをレトロな喫茶店のイメージにしたいと思っていたところに、イメージ以上にピッタリで大満足。オイルランプにマッチで火を灯すと気分も上がり、ディープな雰囲気が増してより一層空間を演出できます。幼い頃は飲食店や、旅行先のホテルの灰皿によく添えられていたマッチ。今ではなかなか見れなくなった風景にノスタルジーを巡らせつつ、自宅での再会を喜びました。

⑥ 骨董カフェ 陽(ひなた)

ひなた

時刻は12時に差しかかった頃。お腹が空いたのでカフェへ向かいます。霜降銀座商店街を来た方面へ戻り、正面に見える谷田川通りをまっすぐ進んで、さつき通りへ。東口の高架をくぐり道中にあるベビーカステラ専門店「かすてらやさん」の甘い誘惑を潜り抜け、「御菓子 司中里」の角を曲がって路地を進むと、入り口に招き猫が待っています。

ひなた

『骨董カフェ 陽』は、江戸時代や明治時代など骨董の食器で食事を提供してくれるお店。お店に入ると店主さんが「おかえり」と声をかけ、優しい気持ちに包まれます。落ち着いたウッディな店内のいたる所に、時代を経て独特な風合いを帯びた絵付けの陶器やガラスの食器が飾られています。いただいたお水のグラスは大正時代のもの。触っていいのでしょうか!? そーっと口へ運び、そーっとテーブルに置きます。

メニューはコーヒーを中心に、和風パスタやデザート、そして黒板メニューの「お友達の料理上手さん」が作ってくれるという数量限定フード。筆者は陽ブレンドコーヒーと、黒板メニューの「肉団子のトマト煮込み」、「カレー風味のおからサラダ」を注文。

ひなた

食事を待ってる間も店内の骨董品を見て楽しむことができ、さながら博物館のよう。きちんとした骨董がこんなに間近で見れる場所はなかなかありません。お店のBGMは骨董好きの常連さんと店主さんの歓談。骨董好きさん達の貴重な交流の場であり、情報交換の場となっているのがわかります。

ひなた

順番に運ばれてくるお料理はどれも骨董品の器に盛られてやってきて、骨董が大好きな人には感動の連続です。鑑賞用途だと思っていた骨董の器はお料理を引き立て、また、こんな使い方をしてもいいんだと気づかせてくれます。お料理は優しい味ながらも深みがあってとても美味しくいただけました。

食べ終わった器をじっくりと鑑賞するのはお店を味わい尽くすのには大切な要素。「お父さんが60年以上趣味で集めていたものを眠らせているのではなく、生活骨董として多くの人に使って楽しんでもらいたい」と店主さんは言います。私も骨董の器を自宅にお迎えしたら、使うことで器の歩んできた歴史や暮らしを身近に感じてみようと思ったのでした。

⑦ hono bono(仄仄/ホノボノ)

ホノボノ

お腹と心を満たしてエネルギーチャージができたので再び歩き始めます。本郷通りに向かって駅と並行して7分ほど歩きます。駒込橋の大きな交差点に出ると六義園の「染井門」が見えてくるので、ここまでこればナビがなくても安心。本郷通りに沿ってしばらく歩きましょう。

ホノボノ

ほんの1分ほどで可愛らしい雑貨がたくさん並んでいる『hono bono(仄仄)』が現れます。コットンや麻など優しい天然素材のウェアやハンカチ、可愛らしいプリントが施されたバッグ、おうち時間を豊かにするお香など、衣料品を中心とした雑貨店で、落ち着いた可愛らしさが特徴的なお店です。地球や体のために素材にこだわりたい方は訪れてみてはいかがでしょうか。

⑧ 珈琲専門店 東城(とうじょう)

東城

サイフォンで淹れる珈琲が看板メニューの、シックな雰囲気を醸し出す純喫茶店が『東城』です。喫茶店らしいトースト系の軽食があるのが嬉しいところ。また、レンガ張りの入り口が雰囲気をぐっと高めています。駒込駅から六義園への道のりにあるので、旅の途中で足を休めたいときにうってつけのロケーションです。駒込駅周辺には純喫茶が点在しているので、純喫茶巡りをしてみるのもよさそうですよ。

⑨ 六義園(りくぎえん)

六義園

案内看板に従って小道に入ると重厚なレンガ立ち、イメージしていた庭園と離れた印象を持ちます。ですが、これは間違いなくこれから向かう『六義園』のもの。では、江戸時代に作庭された庭園なのに、なぜその時代にはなかった技術が使われているのでしょうか? 散策しながら解明していきましょう。

六義園

六義園には、「旧古河庭園」で購入した園結びチケットで入園します。六義園は園路を歩きながら移り変わる景色が楽しめる「回遊式築山泉水」の形式を用いて設計されていて、遡ること江戸時代中期1702年、徳川綱吉の信任が厚かった川越藩主・柳沢吉保が和歌の教養をもっていたためこだわって7年の歳月をかけて造園したといわれています。

六義園

庭園の中心までは背の高い樹木や植え込みが続き、次の景色への転換に期待が高まっていきます。「内庭大門」をくぐれば樹齢70年ほどの大きなしだれ桜が待ち構えていて、3月下旬の見ごろには圧巻の風景を魅せるこの桜を見に、毎年多くの人が訪れます。

六義園

さらに中心へ向かうと池畔「出汐湊(でしおのみなと)」へ続きます。薄暗かった道中から一転、広がる池畔の景色の優美さが際立ちます。出汐湊は、多くの和歌に詠われた紀州(和歌山県)和歌の「和歌の浦」の景色を表現していて、ここからは六義園の主景観となる池(大泉水)と島(妹山・背山)が一望できます。また、木々が冬枯れている季節だからこそ、島の形や石組み、木々の幹の形一つ一つこだわって作られているのがわかります。視界にビルがない庭園が楽しめることから近くには休憩所が設けられ、景色を楽しみながら足を休めることができます。

六義園

ふと振り返ると、また江戸時代にはないであろう白い蔵がありました。レンガ塀といい、なぜ比較的新しい技術のものが混在しているのでしょうか?それは、この庭園の歴史的な変遷にあったといいます。六義園は、明治期1878年に柳沢家から三菱の創業者である「岩崎彌太郎」へ所有者が移り替わりました。その後、昭和期1938年には岩崎家から東京都に寄付された際に円の全体が国の特別名勝となり、旧古河庭園と同じく、都立文化財9庭園に指定されました。

そのため、かつて岩崎家の別邸があったとされる出汐湊の付近には蔵が残り、東京都に寄付される前後には国指定文化財として管理するためのレンガ塀が建てられたのだそう。長い歴史の中で変化するものを受け入れて今の形になった庭園の姿は、深みを増して人々に癒しや嗜好を与えていました。

⑩ 東洋文庫ミュージアム

東洋文庫ミュージアム

六義園を出て本郷通りへ戻ります。駒込駅とは反対方向に進み、不忍通りに入ると日本最大級の本の博物館『東洋文庫ミュージアム』へ。東洋学の研究図書館である東洋文庫は、1924年に三菱の第三代当主「岩崎久彌」によって設立された、東洋分野での日本最古・最大の研究図書館です。2011年にはミュージアムが開館し「多くの方に東洋学の面白さを広めたい」という思いで、これまで公開してこなかった貴重書などの展示を企画・開催しています。

東洋文庫ミュージアム

ミュージアムは高い天井と高級感のある洗練された雰囲気。入場料を支払ってまずは1階「オリエントホール」を観覧します。ここでは東洋文庫の誕生から今日までの歩みと、100万冊に及ぶ東洋文庫の蔵書の全容を映像で紹介しています。また、世界中の言語で記された貴重な古書や「広開土王碑文拓本」、「江戸大絵図」の巨大な原寸大レプリカが展示されています。

2階に上がると誰もが一度は憧れたことのあるであろう壁面、天井までぎっしりと並べられた書籍棚が。まるで映画の世界に入り込んだような景色が広がります。この「モリソン書庫」は1917年に「岩崎久彌」が、北京駐在のオーストラリア人「モリソン・ジョージ・アーネスト博士」から東アジアに関する書籍・絵画・冊子など約2万4千点をまとめて購入した時のものが陳列されています。その貴重さに加え、魅せる貯蔵はため息が漏れる美しさ。本の閲覧はできませんが、その内容を展示で垣間見ることを楽しみに何度でも通いたいと思える場所です。

東洋文庫ミュージアム

岩崎文庫、回顧の路など見逃せないエリアを経て、ディスカバリールームへ行きつきます。ここでは企画展示が行われています。この日は<フローラとファウナ 動植物誌の東西交流>と題された展示が行われていました。長崎のオランダ商館に勤めた「シーボルト」の来日から200年の節目となった2023年に企画されたこの展示は、シーボルトが日本で収集した動植物の標本や書物などをオランダに持ち帰って執筆した著作をはじめ、東洋文庫に貯蔵される美しい動植物の図鑑・図譜のコレクションを展示しています。

まだカメラが普及していなかった時代、その姿を記録に残すすべは絵しかありませんでした。そんな中で展示に並ぶ図は、どれもカメラで写すように精巧で、かつ、絵ならではの美しさをもっていて芸術的です。また、身近に存在する動植物たちを、現代を生きる私たちが今も昔も変わらない姿で愛でていることに親しみと喜びを感じます。また、同じ姿で留まってくれない動物をここまで精巧に写した先人たちの技術や苦労を思うと脱帽です。展示は2023年5月中旬まで行われています。

⑪ Orient Cafe(オリエント・カフェ)

オリエントカフェ

東洋文庫ミュージアムをでて裏手にある「知恵の小径」を行くと『オリエント・カフェ』があります。シーボルトゆかりの植物が植えられた「シーボルト・ガーデン」を窓の外に楽しみながらランチやカフェ、ディナーなど様々なシーンで利用することができます。岩崎家のゆかりの地を訪ねた後は余韻に浸りながらゆっくりと流れる時間を過ごしませんか。

⑫ 駒込富士神社(こまごめふじじんじゃ)

駒込富士神社

「一富士二鷹三茄子」の発祥の地とされる神社です。江戸時代から初夢に見ると縁起が良いとされる3点がこの地には揃っていたために発祥の地とされ、江戸庶民に好まれたといいます。そのうちの「富士」がこの『駒込富士神社』で、大きな塚が特徴的なことから「駒込のお富士」と呼ばれていたそうです。「鷹」は神社近くにあった鷹匠屋敷、「茄子」は駒込の特産物であった駒込茄子を指しているようです。

駒込富士神社

江戸中期には富士山信仰(富士講)が流行り、駒込富士神社もその信仰対象の一つとされ祭りを行っていました。今でも7月1日の大祭には多くの人が訪れます。富士山に見立てられるだけある高い塚は階段が急で、登りはよくても降りはヒヤヒヤ。訪れる際は安定した靴を履いていくことをお勧めします。

⑬ 駒込天祖神社(こまごめてんそじんじゃ)

駒込天祖神社

『駒込天祖神社』は住宅地の中にあり、駒込の総鎮守として信仰を集めた神社。1189年に「源頼朝」が奥州「藤原泰衡」追討の際、悪夢のお告げがあった源頼朝は家臣の「安達藤九郎盛長」に周囲を探させたところ、老松に大麻がかかっており、これを見て神霊の効果を喜んでその松のあたりに建立したのが神社の起源と言われています。老松は枯れてなくなり、源頼朝が築いた社も残っていませんが、再興してなお地元の人に親しまれています。参道が長く、ここで歳の市や七夕祭りなどの祭事・年中行事も行われて活気のある神社です。また、御朱印の授与も行っているようなので、集めている方は御朱印帳をお忘れなく。

⑭ 焼きドーナツ Le Retour(ル トゥール)

ルトゥール

駒込天祖神社からき北に向かい「稲荷坂」を下ります。不忍通りに出ると、右手の信号を渡った先にあるのが『焼きドーナツ Le Retour』。一軒家の軒先を店舗に、土日限定でオープンするレアなお店です。店名の「Le Retour」とはフランス語で「帰り路」という意味だそうで、子供の帰りを待つお母さんの手作りお菓子のような優しい味のドーナツを提供しています。こんなお店が帰り路にあったらつい買って帰ってしまいますよね。味はプレーン、ゴマ、アールグレイ、イチゴなどその数11種類。その時々で提供する味は変わり、何度も通って楽しめます。筆者はプレーンとアールグレイをお土産に持ち帰ります。

ルトゥール

持ち歩いているときにも優しい甘い香りが漂い、幸せな気持ちに包まれます。いざいただいてみると、しっとり、ふんわりとした柔らかい生地と、焼きドーナツだからこそ油っこくないあっさり感でお腹に溜まりません。プレーンは優しい素朴な甘さで、「ぐりとぐら」の絵本に出てくるのカステラを連想させるようなお味。対してアールグレイは華やかな茶葉の薫りがプラスされていますが決してきつくなく、ほのかに大人のドーナツ。テーブルを囲んでゆったりとお喋りをして過ごすティータイムのお供に、友人宅への手土産に、色々なシーンに寄り添ってくれるドーナツでした。

⑮ パンケーキのカフェ さおとめ

さおとめ

不忍通りを駒込駅とは反対方面に5分ほど歩くと『パンケーキのカフェ さおとめ』があります。パティスリーと純喫茶を掛け合わせたような老舗のカフェで、お店の入り口付近はパティスリー、奥はアンティーク調の喫茶スペースになっています。甘いものやこだわりの珈琲に限らず、純喫茶らしいトーストをはじめ、カレーやパスタなど気分に合わせて選べるほどのフードメニューが豊富にあります。

さおとめ

たくさん歩いたので少し休憩していくことに。ダークブラウンを基調とした店内は優しい明かりに灯され、落ち着いた気持ちにさせてくれます。レモンスカッシュの酸味で疲れを潤し、店内の雰囲気を楽しみます。キッチンに並べられる美しいティーカップや食器、見上げれば立派な梁、と、長い年月の中で集まったもの、変わらないものが混在して色気を放っています。何時間でも居たくなる純喫茶の魅力にどっぷりとハマっていきそうなティータイムになりました。

おわりに

駒込には行く先々に歴史にまつわる施設があり、深掘りすればするほど深みにハマってゆくまち歩きになりました。今回ご紹介したスポットには筆者が堪能しきれていない魅力と見所が満載のため、ぜひ足を運んで実際に確かめてみてください。ご紹介できなかった歴史的かつユニークなスポットがまだまだあり、何度訪れてもそのたびに新しい発見を楽しめる駒込エリアは筆者イチオシの「史跡沼スポット」に認定です。

他におすすめしたい街歩きスポット

小林 祥子

小林 祥子

システムエンジニアからフリーランスへ転身。趣味はアンティーク集めやギター演奏、お茶(紅茶・中国茶・茶道)、金継ぎ、オイルランプ集めなど多岐にわたる。中国茶エキスパート”シニア”の資格を持ち、インドアライフを追求している。

GO TOP