ギフトシーンでよく耳にする「内祝い」という贈答習慣。本来の意味と現代での使われ方は多少違っていて、どういったシチュエーションで何をすれば良いのか、思いの外わからなくなっていたりしますよね。ここでは、そんな日本特有の贈りもの文化ともいわれる、内祝いのマナーについて詳しくご紹介していくこととします。
社会に出ると特に、ギフトを贈ったり贈られたりするシーンは稀なことではありません。贈りものは気持ちが込められていることが何より大切とは言うものの、それを伝える手段としての通例的なマナーやしきたりを知っておくことで、コミュニケーションを円滑にするとともに、常識的で誠実な人柄を表現することができるでしょう。
目次
内祝いという用語の意味について
現代における一般的な解釈として、「内祝い」という用語の意味は「お祝いに対するお返し」と捉えて問題ありません。後述する “本来の意味” では、お祝い事のあった当人たちが主体的(先制的)に贈るものですが、”現代的な使われ方” としては、お祝い事の当事者がいただいたものに対して返礼的(後発的)に贈るものと認知されています。
今となっては主に、利用シーンが多い「お返しのギフト」を内祝いといいますが、伝統的な本来の意味が使われることも稀にありますので、併せて覚えておくと良いでしょう。どちらにせよ、内祝いとは慶事(お祝い事)で喜びを分かち合うための贈答品であるため、弔事(お悔み事)や定例的なプレゼント(誕生日やお中元・お歳暮)には使われません。
内祝いの本来の意味合いとは
そもそも内祝いという言葉の「内」とは、身内のことを指しています。すなわち、本来の意味合いとしては、自分自身におめでたいことがあったときに、家族や親戚、近所の人などお世話になった方々に対して、感謝と記念の意を込め “幸せのお裾分け” として贈りものをする習慣のことです。
したがって、内祝いは相手から金品などの贈りものをいただいたか否かは関係せず、内々で喜びを分かち合うために当事者が先んじて贈るものでした。そういった内祝いは伝統的な日本の文化として根付いていましたが、お返しを催促しているような先制的な贈りものは失礼だと感じたり、結婚や出産など出費がかさむイベントでの負担を軽減するため、徐々に内祝いの使われ方が変わってきたと考えられます。
ただし、本来の意味である「お裾分け」の内祝いは、現代でも形式ばらないスタイルで様々なシチュエーションに使われているといえます。例えば、新居や引っ越し先の住居に身近な人を招いておもてなしをしたり、開店・開業を記念してお酒や料理を振る舞ったりするなど、その名残は随所に垣間見えます。
これらは内祝いの本来の意味に準じた事柄といえますが、やはり現代ではいただいたお祝いに対するお返しを内祝いということが多く、品物に内祝いの熨斗を掛けるシチュエーションは主にお返しのギフトになります。ただし、地域によっては本来的な内祝いの習慣が残っているため、これと混同しないように注意しましょう。
返礼品として内祝いを贈るシチュエーション
ここでは、返礼品として内祝いを贈る代表的なシチュエーションについてご紹介します。単なるお返しとして捉えると、相手に気を遣わせてしまうのではないかと感じますが、幸せのお裾分けであることを念頭に、お祝い行事の一環としてささやかな品物を贈るようにしましょう。
▢ 結婚祝いのお返し(結婚内祝い)
一般的には結婚が決まったら結婚式を開き、ご祝儀という形でお祝いをもらいます。そういったシーンでは、招待したゲストに対して「引き出物」と呼ばれる一種の内祝いを贈ります。ただし、結婚式には招待していない人から結婚祝いをもらったり、ご祝儀とは別に結婚祝いをもらったりしたら、「結婚内祝い」という形で返礼品を贈ることがマナーです。
▢ 出産祝いのお返し(出産内祝い)
赤ちゃんが生まれたときに出産祝いをもらったら、「出産内祝い」として返礼品を贈ることがマナーといわれています。他の内祝いと違うポイントとしては、赤ちゃんの名前を披露する意味も込めて、のし紙に書く名入れ(贈り主の名前)を「赤ちゃんの名前(振り仮名付き)」にすることです。
▢ 新築祝いのお返し(新築内祝い)
新築の住居をかまえたら、お披露目も兼ねて家族や友人を招き、おもてなしをすることが一般通例的な新築内祝いとなります。基本的には、品物を用意して贈る必要はありませんが、いただいた新築祝いが高額だった場合は、新築内祝いとして返礼品を贈ることがマナーといわれています。
▢ お見舞いのお返し(快気内祝い)
病気やケガで入院していた時にお見舞いをいただいたら、退院後に快気内祝いを贈ります。快気内祝いはしばしば快気祝いともいい、微妙なニュアンスの違いがあることに注意しましょう。一般的には、全快で退院したのなら「快気祝い」、退院後も通院や療養が続くのであれば「快気内祝い」といいます。
▢ 開店・開業祝いのお返し(開店・開業内祝い)
開店や開業などのシーンでは、婚礼イベントと同様に、オープニングセレモニーやお披露目パーティを開いておもてなしをすることが内祝いとなります。ただし、いただいた開店・開業祝いが高額な場合や、特にお世話になった人に対して謝意を示したい場合は、開店・開業内祝いとして品物を贈るようにしましょう。
▢ その他の内祝い
上記のシーン以外でも、お返しという言葉を避けて内祝いを贈ることがあります。たとえば、初節句や七五三などのお祝い事や、入学祝い、成人祝い、就職祝いなど、特に自分の子供に対してお祝いをしてもらったら、内祝いとして返礼品を贈ることがあります。ただし、贈られた子供はまだ経済力がなく、お返しは難しいことから、これらのシーンでも内祝いを贈らないという考え方もあります。
知っておきたい内祝いのマナー
内祝いは返礼品という特性上、礼儀的なマナーについて心配りをする必要があります。知っておくだけで常識性のある人柄を表現できるとともに、相手を困らせない心遣いの気持ちが伝わるはずです。身近な人とのコミュニケーションを円滑にするために、是非とも実践してみてください。
内祝いの金額相場はどのくらい?
一般的に内祝いは「半返し」と呼ばれ、いただいた品物の金額の2分の1程度が相場といわれています。ただし、いただいた品物の金額が3万円以上で高額な場合は、半返しの内祝いがかえって失礼にあたることもあるため、3分の1もしくは1万円程度の返礼品を用意しましょう。
お祝いの品物がさらに高額であれば、これらの金額相場に沿う必要はありません。特に謝意を示したい場合は、お祝いをいただいてからすぐに電話でお礼を伝えたり、お礼状を送って丁寧に感謝を伝える方法があります。
内祝いの品物は、相手に気を遣わせないことが最も重要なポイントです。経済的な支援も兼ねて心のこもったお祝いをしたにも関わらず、高額な返礼品が届いてしまうと、せっかくの心遣いを踏みにじってしまうこともあるため気を付けましょう。
内祝いを贈るタイミングと渡し方
内祝いを贈る時期やタイミングとしては、お祝いの品物をいただいてから1カ月以内に贈ることがマナーといわれています。出産内祝いであれば、生後1カ月頃に行なう「お宮参り」までに贈るようにしましょう。もし遅くなってしまったとしても、2ヵ月以内には贈るようにして、遅くなった旨を電話や手紙などで相手に伝えることがマナーです。
注意したいポイントとしては、内祝いを贈るタイミングが早過ぎること。お祝いをした直後に内祝いが届いてしまうと、お祝いを期待して事前に返礼品を準備していたと捉えられてしまう恐れがあるからです。お祝いをいただいてから1~2週間程度経ってから内祝いを贈るようにして、前以って「送り状」を送るとより丁寧です。
内祝いは、お祝いをしてくれた家族や友人など複数人に対して贈ることが一般的なため、基本的には郵送での渡し方となります。ちょうど会う機会があったり、特別お礼を伝えたいのであれば手渡しでも問題ありませんが、品物は紙袋に入れて持参するようにしましょう。
内祝いの品物に掛ける熨斗
儀礼的な贈答シーンである内祝いの品物には、伝統的な熨斗を掛けることが通例ですが、シチュエーションによって熨斗の種類に多少違いがあります。まず、水引きと呼ばれる、のし紙の中央を飾る帯紐について。基本的に一般慶事である内祝いでは、何度も繰り返して良いという意味を込めて、紅白の「蝶結び(花結び)」の水引きとします。
ただし、結婚内祝いや快気内祝いは、一度きりで良いという意味を込めた「結び切り」や、慶事と弔事の両方で使われる「あわじ(あわび)結び」にすることがマナーです。また、結婚内祝いや新築内祝いなどで格式の高いことを表わす場合は、水引きの色を金銀としたり、白い水引きがのし紙の色と同じになって印刷できない場合は赤銀や関西地方で使われる赤金とします。
水引きの本数は多いほど丁寧な意味になるとされますが、五本一組が主流となっています。水引きは割り切れない奇数の本数とし、品物のグレードに合わせて三本・五本・七本から選ぶこともありますが、一般的に内祝いでは五本一組の水引きを選ぶようにしましょう。
のし紙に記載する表書き(贈答品の名目)は、「内祝」とすることが一般的です。また、それぞれの贈答シーンに合わせて、「結婚内祝」、「出産内祝」、「新築内祝」、「快気内祝」、「開店(業)内祝」などとすることもあり、簡素的な品物であれば単に「御礼」とすることもあります。
のし紙に記載する名入れ(贈り主の名前)は、お祝いをいただいた本人の氏名を書くことがマナーとされます。新婚夫婦に贈られる結婚祝いの返礼であれば夫婦連名とし、出産祝いや初節句祝いなどの返礼であれば赤ちゃんの名前を書きます。また、新築祝いなど一家に対して贈られるお祝いの返礼は、家長の氏名もしくは苗字だけを書くこともあります。
返礼品にはメッセージや手紙を添える
内祝いは、いただいたお祝いに対する返礼品であるため、品物を送り付けるだけでは事務的に感じてしまうことがあります。そういったときは、内祝いに便箋やメッセージカードを同封して、感謝の気持ちを言葉で伝えるようにしましょう。
また、より丁寧に謝意を伝えたいのであれば、「お礼状」と呼ばれる手紙を送ってみましょう。厳密にいうと手紙は「信書」に該当し、郵便法で信書は宅配便に同封できないため、丁寧な手紙を送るのであれば内祝いの品物と分けて送る必要があります。
その他の内祝いマナーについて
内祝いを贈るタイミングで、相手の身内に不幸があった場合、つまり「喪中」のときには内祝いを贈ることは控えましょう。一般的に喪が明けるのは、四十九日の法要が終わった「忌明け」とされますが、相手の気持ちに配慮して十分に時間が経ってから「御礼」という形で心ばかりの品物を贈るようにします。
また、内祝いを贈る当人が喪中になってしまった場合も、無理に内祝いの品物を贈る必要はありません。遠縁の親戚の不幸であれば、通常通り内祝いを贈ることもありますが、喪中の家庭から贈られることを快く思わない人もいるため注意しましょう。
地域性が出る内祝いとしては、北海道地方の「短冊のし」が有名です。もともとは熨斗紙を掛けられない品物だったり、ささやかな品物を表現するときに使われる短冊のしは、北海道では内祝いにもよく使われます。全国的には、品物の箱の右上に付けますが、北海道では中央右に掛けることも特徴的です。
品物を選ぶときのセレクトポイント
内祝いの品物を選ぶ上で注意したいポイントとして、避けるべき品物を念頭に置きましょう。伝統的には弔事(香典返しなど)に使われる日本茶、別れを連想させるハンカチや刃物などは控えることがマナーです。また、両親や兄弟姉妹では関係性によって問題ありませんが、現金や金券なども失礼にあたる場合があるので注意しましょう。
一般的には、食べものや消耗品などの「消えもの」が内祝いでよく選ばれています。食べものではお菓子やスイーツ、消耗品では洗剤やタオルなどが代表的です。もし、相手の好みが分からず悩むようであれば、カタログギフトや商品券を贈っても良いかもしれません。
内祝いのセレクトポイントとしては、相手に気を遣わせないささやかな品物であること、好き嫌いが分かれづらい品物であることが挙げられます。インテリアなど形に残るものだと、恒久的に相手の居住スペースを狭めてしまうとともに、処分にも困るため避けることが無難です。
< おわりに >
内祝いに関するマナーについて知ってみると、特別難しいことはないものの、通例上気をつけるべきことがいくつかありました。他のギフトシーンでも同様ですが、内祝いを贈る相手の状況や関係性をひとつひとつ考慮して、事務的にならず丁寧に品物を贈ることで、大事なイベントを快く締めくくることができるはずですよ。